ユ:虹色の滝の悪夢
ちょっと短めです。
無事にキーナは『夢のミミズク幻獣』ミミーと契約する事が出来た。
「じゃあ拠点に戻ろっか?」
「……その前に、せっかくだからあの滝の水少し採って行きたい」
「ああ、あのゲーミングな滝ね」
そう、謎に色彩鮮やかなあの滝だ。
「なんか、変わった効果のある素材になるかもしれない」
そう思ったのだが、俺のその発言を聞いたミミーは首を傾げ、モモンはフルフルと首を横に振った。
「採ったり飲んだりは無理だと思うモン」
「そうなの?」
「……それは何故?」
「ホー……アレ、ユメ」
「モモンの島で、揺り籠の中で寝てる意識を見たモン? あの滝はそれと同じだモン」
……何?
「えっと……じゃあ、あの滝は水じゃないんだ?」
「ホー……チガウ」
「水みたいにすくい取ったり出来ないモン。触ったらその夢に入って、一緒に落ちる夢見ながら死の海に落っこちるだけだモン」
へぇ……島によって夢を見てる意識の在り方が違っていたが、ここは随分変わった状態になってるんだな。
「落下する夢だったよね……たぶん悪夢かな?」
「かもしれない」
「キノコ島でキノコの根っこに取り込まれてるみたいなヒト達の夢は大体悪夢だったよ」
「へぇ」
アーチになって入りやすくなってるパヤヤの島とかもあったな……ここの滝も、ある意味夢に入りやすいと言えば入りやすいのか。
「……試しに1回入ってみるかな」
「え、マジで?」
「うん」
俺がそう言うと、キーナはものすごく驚いた顔で確認して……ものすごく爽やかな笑顔になった。
「いってらっしゃい」
「……一緒に行かないの?」
「ジェットコースター苦手だから、無理」
「どっちかと言うとバンジージャンプだな」
「無ー理無理無理、背骨が飛んでっちゃうから」
「飛ばねーよ」
まぁ無理にとは言わない。
とりあえず登るのが面倒そうな山頂まで箒の二人乗りで送ってもらった。
キーナがヒラヒラと手を振りながら見送ってくる。
「じゃあ気をつけてねー」
「……何をどうやって?」
紐無しバンジーで死に戻りが確定しているんだが?
「先に戻ってて良いから」
「うん。そっちがどのくらいで死に戻るのか分かんないけど、拠点で待ってるね」
「うん」
幻獣達の『物好きだなぁ』って感じの視線に見送られながら。
俺は相棒にヒラリと手を振り返して、山頂から滝へと飛び込んだ。
迫る虹色の激流。
着水と同時に弾けるシャボン玉のような極彩色。
意識して目を開いていると──水飛沫が塗り替えたように景色が変わる。
「……おおー」
落ちていた。
高い高い空の上。
雲と同じ高さから、支えるものは何も無いまま、頭を下にして落ちていた。
なるほど、落下する夢だな。
ただ、この場合……夢の主はどこになるんだ?
パヤヤの島のアーチは親切にも出入口がご用意されていたが、このゲーミング滝にそんなサービスは無いだろう。死ぬだけだって言ってたしな。
きょろりと落ちながら周りを見て……俺は、すぐ後ろで一緒に落ちている存在を見つけた。
それは……ちょっと変わった形状のアザラシだった。
ちょっと変わった形状のアザラシが、必死に飛ぼうとヒレをバタバタと動かして……『無理だな』と悟って無の表情で落ちていくところだった。
大きさも、タプンタプンの体も、まさに水族館とかで見るアザラシそのままだったんだが……
頭が……垂れ耳の犬の形をしていた。
シードッグ(夢) Lv27
「いやシードッグってそういうのじゃねーだろ!?」
思わず叫んだと同時。
衝撃、そして暗転。
俺は拠点へと死に戻ったのだった……
* * *
「あ、ちょうど戻って来た。おかえりー、どうだった?」
「……」
俺は無言で首と手を左右に振るしかなかった。
何を言えっていうんだ……あの夢で……




