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キ:ダンジョンのショートカット


 御祝儀を採りにやって来ました『輝石坑道ダンジョン』。


 ダンジョンだから、洞窟に一歩踏み込めばパーティ別のマップが生成される。

 振り返っても、入り口近くでダラダラしていた冒険者達の姿は見えない。身内だけでのんびりしたい僕らには本当に助かるこの仕様。


 入ってすぐモンスターがドーンとはならなかったから、入ってすぐの場所で僕らは狩りの準備をした。


「ネビュラ」

「うむ」


 相棒の呼びかけで合流したネビュラ。

 今回は洞窟内だからベロニカちゃんはお留守番。


 僕は籠にコダマ爺ちゃんとネモを入れてきた。

 オバケの数が少なめなのは、先に進んで難易度が上がってきたあたりで良い感じに噛み合いそうな子を呼ぶつもりでいるから。


「オッケー?」

「オッケー!」

「じゃあ行こう」


 洞窟の中は暗いから、星屑のランタンを出して照らしながら進む。


 すると、早速モンスターが現れた。



 水晶甲虫 Lv32



 おおー、甲殻が水晶で出来てるっぽいクワガタみたいな虫だ。

 モゾゾゾッと地面から出てきて、なんか上下にワキワキ動いてこっちを威嚇している。


「……よいしょ」


 ゆっくりめの動きをする虫に、相棒がサクッと短剣を甲殻の継ぎ目に差し込むと、水晶甲虫はあっさり倒れて消えていった。


「うーん、ワンパン」

「そりゃレベル差あるから」


 入り口付近ならこんなもんかぁ。


「じゃあ、ある程度奥まで駆け抜けたほうがいい?」

「だな。ドロップした水晶も小粒だ」


 いちいち殲滅してたらキリ無いもんね。


 ネビュラに二人乗りして、僕らはダンジョンの奥を目指した。



 * * *



 ダンジョンは奥へ進むにつれて、どんどん岩壁が結晶まみれになっていく。

 ほんのりと光るそれは、採取すると『微光結晶』って名前のアイテムになった。

 拠点でランプ代わりに使うには、ちょっと光が弱いかな。

 でも洞窟の壁にたくさんあると真っ暗じゃなくて助かるし、むしろ幻想的な景色になって良い感じ。


 そんな結晶の隙間には、時々違う物が挟まるようにして混ざっている。


 それはアメジストだったり、トルコ石だったり、銀だったり。

 特に地層の成分とか気にしてないんだろうなーって感じのランダム加減で、色んな宝石や貴金属の粒があった。


「地上の植物素材みたいなノリで宝石あるじゃん」

「まぁ闇雲に掘らないといけないよりはいい」


 とはいえ、階層が浅いから小粒すぎて手間に見合わない。

 大きいのが欲しかったら、もっと奥に行かないとね。


 そんなファンタジー空間を堪能しながら、階層をひとつふたつと降りていく。



 黒玉甲虫 Lv41

 碧玉甲虫 Lv43



「モンスターは基本的に虫系なのかな?」

「確か? レア枠は違ったはずだけど」


 僕らのレベルだと、これくらいの密度なら50を超えてても大丈夫。

 まだまだ先へ駆け抜けて……


「……ん? ストップ」

「む」


 相棒が何かを見つけてネビュラにストップをかけた。


「何かあった?」

「……なんかガン見されてる」


【感知】に何か引っかかったのか、相棒が広めの空間の一点を見据えて警戒している。

 でも珍しい事に、ネビュラは同じ方を向いていても、時に威嚇の構えにはなっていなかった。


「ふむ……あやつは精霊ぞ」

「え、精霊?」

「……精霊か」

「うむ、大地の精霊だな」


「ダンジョンの中に精霊がいる事もあるんだ?」

「割とあるよ」


 へぇ~!

 相棒が言うには、ダンジョン内に精霊郷があるのは割とあるあるなんだって。僕が知らなかっただけだね!


 僕らの会話が聞こえたのか、暗がりの奥から何かがコロコロとこっちへ転がってくる音が聞こえてきた。


 微光結晶の仄かな光の中へ転がり出てきたのは……バレーボールくらいの大きさをした、半透明のダンゴムシ。


「「わぁ……」」

「おうおう、半分精霊で半分ヒトの子とは変わったニーちゃんだな? オレは『大地のダンゴムシ精霊』だぁ!」


 あ、本当に名前もそのまんまダンゴムシなんだね。

 これは苦手なヒトは苦手な見た目かもしれない。僕もちょっとギリギリのライン。


「余は『死の狼精霊』の分け身ぞ。半分精霊のヒトの子を主としておる」

「……どーも、ユーレイです」

「妻のキーナです」

「こりゃご丁寧にドーモ」


 深々とお辞儀をしてくれたダンゴムシ精霊。

 んん~、たくさんの足がピロピロしているのを見ないようにすればかわいい。


「で、死の精霊御一行サマはオレの縄張りに何の御用?」

「いや、特におぬしに用があるわけではないな……」

「大きな宝石を取りに来ました」

「……贈り物にしようと思って」

「ああ、なーんだ。いつものヒトの子達と同じ用事か」


 若干チンピラっぽい喋り方のダンゴムシ精霊は、ウンウンと納得したように頷いてから、触覚をピョンと動かした。


「そうだな。大きい結晶が欲しいなら、うちの結晶幻獣の住処に送ってやろうか?」

「え、結晶幻獣いるんだ?」

「いるいる。うちのはちょっと血の気多いから多分喧嘩売ってくるけど。その代わりに住処の結晶のデカさと綺麗さはピカイチだぜ!」

「……それ乗り込んで採取したら嫌がられません?」

「いーのいーの。アイツ凝り性のくせして、作り終わった途端に興味無くすから。むしろ減ったら結晶の置き場所が増えたって喜ぶだろ」


 ボス部屋へのショートカットかな?


 そんなに結晶まみれならちょっと見てみたい。

 採取は結晶幻獣本人に貰っていいか訊けばいいし。


「……じゃあ行ってみるか」

「うん!」

「んじゃオレの精霊郷通って行きな。繋げるから」


 そう言うと、ダンゴムシ精霊はコロンと丸まって転がり、僕らのまわりを一周した。

 それで描かれた円が精霊郷の入り口になったのかな?

 ふわんと円が光って……


 ……僕らは真っ逆さまに縦穴を落下し始めた。


「ちょっ!?」

「ええええええー!? なんでぇええええええ!?」

「落ち着け、精霊郷ならば精霊の管轄内。問題あるまい」


 ネビュラの言葉を信じてそこそこの距離を落ちると……落下先に流砂のような物が現れて、落ちる僕らの体を包み込み減速。

 ……かなり肝が冷えたけど、僕らは無事に底の地面へと到着した。


「焦ったー!」

「……精霊ってたまに雑だよな」

「何を言う、ヒトの子も大概であろう」


 ネビュラも段々『ヒトの子よくわからん』って言わなくなってきたねぇ。


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― 新着の感想 ―
クリスタルなクワガタは内臓見えたらグロいかも……でも外骨格だけの標本はロマンだと思う。
微光結晶、道の端に一定感覚で埋め込みたいな
ダイオウグソクムシな精霊を我は所望する
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