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キ:魔道具屋の魔法の地図


 冒険者ギルドを出た僕らは、ギルドの裏手にあるNPCの魔道具屋へ向かった。


 そもそもファンタジーだから見るアイテム全部魔法の代物に見えてたんだけど。魔道具っていうのは戦闘に関わりがなくて、薬以外で使用する、魔法が込められたアイテムを指す物って事だった。

 ……ううん、細かい区別は自信が無いや。身も蓋もないこと言えば、プレイヤーがなんと言おうとゲーマスAIが魔道具に分類したら魔道具なんだと思う。


 入った魔道具屋は、思ったよりもスッキリしたお店だった。

 もっとこう……うず高く積み上がった怪しいものがみちみちになってるかと思ったんだけど。品物は暗い色のテーブルクロスの上に綺麗に並べられて、間に輝石で飾り付けがされてオシャレな雑貨屋さんの様相。

 でも天井の梁から色んな物が吊り下げられているから、魔法の店っていう雰囲気はちゃんと出てる。


「いらっしゃいませ」


 無愛想な眼鏡の男が、大きな本から目を離さずに投げやりな接客をした。


「魔法の地図ください」

「……そこだ」


 眼鏡の男が視線も向けずに指した所には、丸めた白紙の地図が何本も木箱に刺さっていて……横に『支払い』って書かれた箱が置いてあった。


 ……えっ、まさか野菜の直売所スタイル?


 泥棒行為ができないようになってるゲームだからか、それともこの箱も魔道具なのか、地図を箱から抜き取ると勝手にチャリーン☆って料金が支払われた。


 なんて怠惰な店!!


 ……まぁいいや。

 服屋とかで話しかけられるの苦手なタイプだから、むしろ相性がいい店かもしれない。


 相棒と一緒に、品物をのんびり眺めていると、何冊かの本を見つけた。

 本!

 こっちにあるって事は商品だよね?

 ラインナップは……


『初めての魔道具』

『刻印と魔道具との組み合わせ』

『刻印について』


 え、普通に面白そう。

 半分埋まって埃被ってるけど、それぞれ複数冊あるから商品で間違いない。

 これは買いだわ。


「ちょっと高いけど本買っていい?」

「いいよ」

「これくださーい」


 眼鏡は実にめんどくさそうに売買手続きをした。

 ……うん、一番売れる頻度の高い地図を自販機状態にしてこれ幸いと趣味に走ってるんだろうなって予想は間違ってなさそうだね。

 次に来たときには品物全部自販機状態になってたりして。


 でもそっか、本屋は無くても専門店に専門書がある可能性はあるのか。

 うん、良いこと知った。


 重い本はさっさとインベントリに収納して、僕と相棒は店を後にした。



 * * *



「とりあえず白地図適当に十本くらい買ったけど、相棒どこで使いたい?」

「……まずは自拠点で一枚」

「じゃあ僕ピリオで一枚使っていい?」

「好きにしなー」


 相棒の放流にも似たお許しが出たから、早速一枚取り出した。

 くるんと丸められた地図を開くと、クリップみたいな物でそこそこ大きなキャッツアイっぽい石がくっついている。

 小さく『上に放る』って書かれているから、その通りにぽいっと真上に放った。


 ……投げた石は、そうはならんやろって勢いで真上に飛んだ。


 わぁ、お手玉投げるくらいの力しか入れてなかったのに城の塔より高く飛んだ。

 思わず二人で目を丸くして見上げる。

 高すぎて何がどうなってるのかよく見えない。


 そう長くかからない内に、石は真っ直ぐ広げた地図に向かって落ちてきた。


 そのままだと地図をぶち破っちゃうんだけど、石は地図の直前で急停止して、空中で砕け散った。

 砕けた破片が地図に降り注いで、プリンターみたいに地図が書き出される。


「……おおー! 魔法っぽい!」

「飛び上がって見たのを書いてるのか」


 地図には、周辺を含めたピリオノートが綺麗に書かれてる。


「面白いね」

「面白いけど……地図の端を綺麗に合わせる事はできなさそうだな……」


 相棒がちょっと渋い顔してる。

 マス目のあるゲームだとキッチリ合わせないと気になるタイプだもんね。

 まぁ、諦めて。


「……で、それどうするの?」

「え? ピリオ歩く時に使うの。それなりに広いから脇道入ったら迷子になりそうなんだもん」


 あとね、気になる物はメモしておきたいから。

 さっきの魔道具屋みたいに、本とか面白い物売ってる店もあるかもしれないし。


 とりあえずまたクルクル丸めて、インベントリに入れておく。


「それじゃ出発しよっか? 食料とか大丈夫だよね?」

「前にダンジョン行った時のがまだ残ってる。……相棒、杖は?」

「インベントリに入ってるよ」


 籠付きも箒も両方ね。


「北門から出てゲーム内で一日。まぁ最悪フィールドログアウトすればいいだろ。どうせ一緒に落ちて一緒にインするんだし」

「そだね」


 夫婦で一緒に遊んでるとその辺楽だよね。

 いつもの面子がなかなか来ないーって事が無いから。


 じゃあ行こっか、って歩き出した時。

 相棒の頭に乗ってるネビュラが、僕らにしか聞こえない程度の声でボソッと呟いた。


「……余が乗せて走るが? 変装とやら、すればよかろうに」

「「あっ」」


 そーだわ。

 別に謎のNPCスタイルはイベント限定じゃなくていいんだわ。


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