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キ:いつもとちょっと違った情報提供


 さて、街で用事を終えて、一度拠点に帰って変装してから城へやってきた僕達は……珍しい顔ぶれでひとつのテーブルを囲む事になった。


「パピルス・スワド・カミィ。しがない男爵ですが、よろしくお願いします」


 いつの間にか貴族になってたパピルスさんと。


「ヴィクトリア・ファラ・シュタール。シュタール子爵家の長女にして、ククロスオーブ王国騎士団所属であり、『勝利の女神』の聖女を務めさせていただいている」


 教会に寄付した時に出会った勝利の女神の聖女、ヴィクトリアさん。


「えっと、森女です」

「……森男です」


 お城でいつも通り魔術師団長さんに面会して、気になった夢の事を話す事は出来たんだけど……やっぱり僕らが心配だった通り、人相書きも無しの名前オンリーだから指名手配とかも難しかった。


 でも、魔術師団長さんは『錬金術士か……』って呟いて、そしてこの面子での会議に僕らは放り込まれたのだった。


「それで……敵対組織に繋がる可能性のある情報を得られたとの事ですが?」

「あ、うん。えっと……」


 聖女さんに促されて、僕は『たまたま入り込んだ誰かの夢で、錬金術士テオドラシスを名乗る人物が、世の中への不満を垂流しながら何か企んでいた』っていう話をした。

 ……こうやって改めて確認すると、本当にヒント程度っていうか……本格的に動くにはちょっと足りない情報だったね。


 でも、それを聞いたパピルスさんは、意外にも真剣な顔で何か考え込んでしまった。


「なるほど……錬金術士ですか。だから私をご指名されたのですね」

「……敵対してるのが錬金術士だと何かあるんです?」


 つい気になってそう訊くと、パピルスさんは苦笑いしながら説明してくれた。


「錬金術士というのはですね……パーティメンバーが使う薬を作るだけならそうでもないのですが……本腰を入れて研究しようとすると、それはもう色んな種類の素材が必要になるんですよ」


 パピルスさんは錬金術士として本を出している論丼ブリッジさんと一緒に遊んでいるから、それがよくわかるらしい。


「それを全部自分で採取なり狩るなりしようとすると……まぁ戦闘ガチ勢に匹敵する実力とフットワークが必要になりますので。それは研究の時間が減って本末転倒……というわけで、研究に熱心な錬金術士は、素材を買ったり、依頼を出して持ってきてもらったりするわけです」


 うんうん、それはわかるよ。

 どこぞの錬金術工房を1人で切り盛りする系のゲームも、素材採取しに何処までも冒険しに行くもんね。

 それをしないで素材の組み合わせの探求だけしたいと思ったら、お金を出して手に入れないと。


「なるほど……その夢で見た錬金術士とやらも、素材をどこかで購入しようとする可能性が高いのですね?」

「ええ、サフィーラ魔術師団長もそれを考えたのでしょう。だから、市場を注視している私を指名した」


 おおー、なるほど。

 魔術師団長さんの采配が、そのまま僕らとパピルスさんに対するヒントだったのかー。


「実際、現時点で従業員から『怪しい客が希少な品を探している』と報告を受けています。もしかしたら、件の錬金術士なのかもしれません」

「ふむ、それならば話は早そうですね」


 そうなると、その怪しいお客が何を探しているのが気になる所。

 そんな雰囲気を察したのか、パピルスさんはインベントリから手帳を取り出して確認を始めた。


「問い合わせがあったのは……まず『不死鳥の骨』、そして『呪われている物品』、それから……『微睡(まどろみ)の森の木』」


 ……おや?


(めっちゃ身近な物出てきた!)

(……俺ら以外には確かに希少品か)


 驚く僕らに、パピルスさんは笑顔で頷いた。


「いつも買い取りセンターの御利用ありがとうございます。……とはいえこうなると、今まで通りに流通させるのは少し考えものかもしれません」


 だね。

 もしもあの木が集まる事で敵対組織の目的達成が早まったら困る。

 ……と、思っていると、隣の相棒がポツリと呟いた。


「……でも、囮には出来そうですね」

「……ああ、なるほど」


 囮?

 あー……前に相棒が自分を餌にキャトナちゃんの襲撃を誘発したような事が出来るかもって事か!


 部屋の全員がそれに気付いて、そして同時に頷いた。


「良いかもしれません」

「ええ、外の敷地に短時間の間木材を広げて反応を見るだけならいつでも出来ます」

「やるなら問い合わせがあった所の近くでやった方がいいかも?」

「……だな、怪しい客がいる可能性が高い所の方がいいと思います」


 話し合いの結果、僕らが木材の提供をして、パピルスさんのお店の敷地で試してみる事になった。

 ちょっと見せびらかすだけならタダだからね!


「では、当日は私と森女さんが木材の取引をしている体で……」

「相棒が隠れて周りをチェックだね」

「……了解」

「ただ、ひとつ問題が」

「問題?」


 パピルスさんは、苦笑いしながら手帳の内容を再度確認した。


「場所が『ゲコリン沼の船村』なんですが……オーブ登録をした事はおありですか?」

「「……ないです」」


 手広すぎるよパピルスさん、どこにそんな面白そうな村あるの?


ちょっと夫婦が思いがけずゲコリン村に行くことになったので、明日の投稿はお休みしてゲコリン村見てきます。

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― 新着の感想 ―
そうたゲコリン村に取材の日だッた
 なんか僻地かつ移動や破棄が可能な家かぁ。怪しい何かをやるにはベストですな。
凄い騒がしそうな村だ…!現地取材お気をつけて―
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