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ユ:いまさら初体験


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 俺は拠点のキッチンで朝食作り。

 相棒のキーナはサラダ代わりの林檎を採りに行っている。


 フリーマーケットも終わって、エフォは通常運転……と見せかけて、運営からは公式イベントの告知が入った。

 イベントが続いているような感覚がするが、そういえばフリマはプレイヤーが主催だったな。


 二人で食卓を囲みつつ、新聞代わりに告知を読み始める。


「『大型イベント:大街道敷設任務発令!』だって。デデンとトップ飾ってる青いロンゲは魔術師団長さんだっけ……あ、名前あった。魔術師団長サフィーラ・ロズ」

「騎士団長が戦闘関係で、こっちは文官なんだろうな」


 イベントは二週間後に開始、そこから15日間が開催期間。


「ピリオノートを中心に、東西南北の門からそれぞれ街道を伸ばして……えっ、プレイヤーの開拓地がゴールなの!?」

「ほー」


 公式曰く、適正範囲内にあり数日前の時点で最も開発が進んでいて、且つ他プレイヤーの出入りを禁止していない拠点に打診し、OKを貰ったところが街道のゴールになっているらしい。

『街の街道付近は運営の管轄になる』とか『住人以外のNPCが大量に行き来するようになる』とか、色んな条件を全部了承した所だそうだ。


「へぇ~……対象拠点のプレイヤーは『新天地開拓権限チケット』が貰えて、もう一ヵ所別に拠点を作れるんだって!」

「複数開拓を続けるも良し、街を完全に運営に託して権限放棄の上で新天地で頑張るも良し、か……ご褒美ではあるんだな」

「近くで街作りしてる人は交易とかを目指してたんでしょ? じゃあめっちゃ嬉しいんじゃない?」

「かもね」


 イベントミッションは防衛部門・敷設部門・資材部門・支援部門の四つに分かれてクエストが大量に出るから、好きな所で貢献すればいいらしい。

 クエストを達成するとイベント専用のポイントがもらえて、それで好きなイベント報酬と交換ができる仕様。まぁよくあるやつだ。


「面白そう! どんなクエスト出るんだろうね?」

「さぁ? そもそも俺達、このゲームで普通のクエスト受けた事ないから」

「…………あるぇ!? 本当だ!?」


 その点に関しては、俺達初心者以下だから。


「今日行ってみる? 冒険者ギルド」

「そんな定番施設あるんだ!?」

「あるよ」


 開拓に籠って掛かりきりになるとまったく関わる機会が無いってだけで。



 * * *



 準備を終えて、二人で街に繰り出した。

 今日は変装する必要はないから普段通りの装備だ。頭の上にネビュラもいる。


 冒険者ギルドは転移広場を挟んで露店広場の反対側。

 こっちも建物前はそこそこの広さが確保されてて、臨時のパーティー募集をしている面々がそこかしこにいる。


「……木の看板に募集内容書いて持ってるけど、あれってもしかして露店でよく売ってる看板かな?」

「じゃない?」

「使い終わったらどうするんだろ?」

「……焚き火?」


 まぁ俺達が使う事はないだろ。

 どこかに参加する気はないから、スルーして建物に入る。


 冒険者ギルドはかなり立派な石造りの建物で城と雰囲気が似ている。ほぼ国営みたいなものだからかね。

 入って左の壁が一面全部クエストが張り出される掲示板だ。


「手前が簡単なクエストで、奥に行くほど難易度が上がるらしい」

「へぇー」


 wikiに書いてあった情報を思い出しながら掲示板を眺める。


 手前はピリオ周辺での採取クエストが多い。常設クエストなのか、張り紙に小さな紙が別に付いていて、それを使って納品するようだ。

 それ以外だとウサボール肉の納品とかもあるな。

 戦闘メインの初心者向けで実入りが良さそうなのは狼の討伐あたりか。


 眺めながら奥へズレて行くと、石材の納品とか知らないアイテムの納品も増えだした。

 モンスターの討伐も強力そうな名前が並んでいる。

 ああ、ダンジョンモンスターの討伐もあるな。いつかのモスキートモルフォの名前もあった。


 さらに奥に行くと、どこに行けば達成されるのか見当もつかない依頼が出現する。

『海の綺麗な貝殻が欲しいです』ってもな……まだピリオから徒歩で海に行った奴はいないはずだから、海のある場所に住んでる奴しかクリア出来ないんじゃないか?


「色々あるねぇ」

「だね」


 クエストは、ドロップを売る以外にリリーを得る手段なのと、ピリオへの貢献度を上げるのが目的らしい。

 貢献度を上げると、寮住まいの戦闘メインプレイヤーは少し良い部屋に移れたり、NPCへの知名度が上がって特殊なクエストが増えたりする。


 その辺を説明しつつ、相棒に訊いてみる。


「どれかやってみる?」

「そうだね、せっかくだし。どんな感じか試してみたい」


 それなら……どれがいいかな。

 推奨レベルなんてもの書いてないんだ、このゲームは。

 結局、プレイスタイルによって得意な事が違いすぎるから、レベルがあてにならないらしい。

 とりあえず、モスキートモルフォ討伐依頼の周りから選ぶか。


「……これとかどう? 『リーフボア20匹の討伐』」

「猪肉?」

「出るかもしれない」

「じゃあそれで!」


 張り紙を剥がして相棒に渡し、受付に向かう。


 ギルドへの登録はゲームを始めた時点でされている設定だ。そもそも初期職業が冒険者だからな。


「はい、承りました。リーフボアはピリオから北へ徒歩で一日と少し進んだ山の麓にいます。期限に注意してくださいね」

「わかりました」


 北か。そして結構遠いな?

 ……そういえば、冒険者ギルドには地図があるって話だったな。


 受付を終えてから探してみると、クエスト掲示板と反対の壁に地図があった。

 ピリオノートを中心に、小さな地図がビッシリ貼られてひとつの大きな地図を作ろうとしている感じだ。

 相棒がそれを見て目を輝かせた。


「何これ面白い!」


 地図のすぐ前に小さなボードがあって、そこに専用クエストが張り出されている。


『全体協力クエスト:世界地図作成』


 どうやら、全プレイヤーが好きに参加できる常設クエストのひとつらしい。

 魔道具屋で売っている魔法の地図。それを使うと、使用者を中心にした一定範囲が地図に書き込まれる。

 書き込まれた地図をここの係員に提出すると、増えた情報量に応じて報酬が入るシステムのようだ。


「そんなアイテムあるんだ。後で買ってみようよ」

「いいよ」


 とりあえず今は、相棒がピリオ北側の地形を適当な紙に簡単に書き写した。


「開拓地っぽいのも名前付きで書かれてて助かるね。北に大きめの街あるよ」


 えーっと……ああ、他プレイヤーが入れない開拓地はそもそも名前が地図に載らないのか。

 ってことはまずその名前がわかる街を目指せばよさそうだな。


「街の名前は『☆フェアリータウン☆』……え、すごいメルヘンな街が待っているのでは?」

「もしくは家が全部小さいか」

「ああー、妖精のプレイヤーいるもんね!」


 何にしても、他プレイヤーが入れるって事は、転移登録ができるってことだ。

 それなら平日夜の今から行っても、登録しておいて後日に行き来ができる。

 クエストの期日まで余裕はあるしな。


 冒険者ギルドを出た俺達は、ひとまず地図を見に魔道具屋へ足を向けた。

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実況妖精達の町だな絶対
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