ユ:素材チェックと海の旅。
ログインしました。
ゲーム内時間は早朝。
まずはのんびりと朝食を食べてから、キーナが死霊魔法使いのアジトでせしめた戦利品を確認した。
「これなんか相棒の装備に良いかもって」
「どれ?」
【告死獣の毛皮】…品質★★★★
死を告げる闇色の獣の毛皮。
死に関わる事柄と親和性が高い。
【音無し鳥の鳴管】…品質★★★★
聞こえない声で鼓膜を破る鳥の、声を発する器官。
「へぇ、有りだな。俺が使っていいの?」
「もちろん」
「ありがとう」
毛皮はシイタケさんに持ち込んで装備にしてもらうか。
鳴管は……なんか軟骨みたいな素材なんだが……弓職人の兄弟に相談してみるか……?
「そっちが使えそうな物はあった?」
「うん。コレ」
【燐火ランタン】…☆
どんなロウソクを入れても青い炎が灯るランタン。
死霊を落ち着かせる効果がある。
「お、レア星アイテムじゃん。いいね」
「でしょー」
……死霊魔法使いに隷属させられてたオバケは、これで落ち着けていたんだろうか? オバケが青い火のランタンを囲んで「やってらんねー」とかボヤいてるようなのしか想像出来なかった。
「後はなんか変わった紙とかペンとか? その辺は量が少ないからここぞって時まで取っておこうかなって。骨系は全部遺骨としてお城に提出したから無いよ」
「なるほど」
まぁ実入りがあったなら良かった。
アイテムの確認を済ませて、インベントリの整頓をした俺達は、予定通り出かける事にする。
変装をして、拠点の面子に声をかけて留守を頼む。
キーナは籠にオバケ達を入れて連れて行く。
俺は……ネビュラはとりあえず置いていくか。行き先が海の中だしな。何かあったら呼べばいい。
グミは海が近くなってから呼ぶ事にして、後で呼ぶ事だけ伝えておいた。
準備完了。
転移オーブに触れる。
「あ、1番上に『回数限定:ブラッドレッド・カルト前直通』がある」
「あるな」
これがヴァンパイア組織退治用の特殊転移だろう。
不参加の俺達はそこへは行かない。
『初心者向け』と書かれている『ウサボール島』を選んで転移した。
* * *
転移した先はウサボール島……前に俺達が依頼を受けて転移オーブを設置した場所に飛んだわけだが……
そこには、程々に立派な家庭菜園が出来上がっていて、すぐそばのログハウスは以前見た状態から更に増築されていた。
「三階建てになってる!」
「マジか」
あのヒトはたぶん自分で増築したんだろうなっていう謎の信頼があるんだよな……サバイバル力が高すぎる。
「どうする? 顔見ていく?」
「……いや、いいよ」
どう見ても元気でやってそうだからな……
俺達は方角を確認して、ログハウスを後にした。
「……この辺から行くか」
「オッケー」
初心者がウサボールを追い回しているのをチラホラ見ながら辿り着いた海岸で、海に入る準備をする。
「【サモンマター:グミ】」
相棒がグミを呼んで、水中呼吸の妙薬を飲ませる。
海の中で呼び出して、即死したら意味が無いからな……続けて俺とキーナも飲んでおく。薬に余裕があるから、わざわざ霊体化して目立つ事も無い。
そしてネモに足場になってもらい、その上を通って沖へ向かう。グミは足が遅いからキーナが抱きかかえた。
海流がヤバいエリアを抜けたら、準備は完了だ。
近場で【感知】に反応は無し。今なら潜っても大丈夫だろう。
「はい」
「自然と手を差し出してくれるの何度でもときめくよね、大好き」
手を繋いで、ネモを解除。
重力に従って、俺達は海へと飛び込んだ。
ドボンと上がる水飛沫。
エフォは海水の中で目を開けても特に痛みや違和感はない仕様だ。
細かな気泡が水面へ消えれば、幻想的な海中の景色がお目見えする。
「おおー、水の透明度が高ーい。水色というか緑というか……これは南の海の水ですねぇ」
「北の海は暗いからな」
まだ浅い事もあるだろうが、差し込む光で海中はとても明るかった。
ゆっくりと底の方まで潜ってもそれは変わらない。
やっぱり死の海とは違うな……死の海はこれくらい潜ればそこそこ暗くなっていた。
「【アクアクリエイト】」
海底を覆う海藻や珊瑚が見え始めたあたりで、【水魔法】を使って水流を起こし、目的の方向へ泳ぎ始める。
「バンに頼もうか、小さければMPもそんな消費しないでしょ」
「ああ、いいね」
杖から出たイルカサイズのバンは、久しぶりの海にテンションが上がっているのか、体に巻き付いている白い海藻をヒラヒラなびかせながらグルリと周るように泳いだ。
「やっぱ海だな海! オラ、姐さん方、背びれに掴まれよ。グミは口ん中にでも入っとけ」
「プニッ」
「……大丈夫? モグモグしないでね?」
「ほんあへははひへーお」
「グミくわえてたら何言ってるかわからん」
ちょっとシュールな見た目になったが……間違いなく速度は上がった。
それほど遠くないはずだから、そうかからずに目的地にはつけるだろう。
※星の記号が環境で色が反転するとの事なので、とりあえず台詞の『白星』を『レア星』に変更。