キ:やりたい事は別の事
遅くなりました。
ちょっと短めです。
「「わぁー……」」
ログインまだです。
今の僕らは、夕食を取りながら公式ムービーを視聴していた所。
「新生ヤーンボールシープ愛好会って、プレイヤーが場所提供して復活してたんだねぇ……」
「人数多いな……普通に村になってる……」
「牢屋で会ったドワーフってこの子?」
「ああ、うん」
「あ、雄夜も映った! カッコいいー!」
「だろ?」
「うん! 世界一のイケメン! あー、直接見たかったなー」
不死鳥のように蘇ってたヤーンボールシープ愛好会にビックリ。
開拓地提供して一緒にヤーンボールシープ牧場作ってたプレイヤーさんは、フリルがいっぱいついてるブラウスっぽい装備にショートパンツとニーソックスを組み合わせて着ているゆるふわサイドテールの女性で。斜めがけしているホルスターみたいなベルトに、小さなぬいぐるみがいっぱい着けてあった。
ぬいぐるみ、鈴なりだよ。学生がああいう状態のカバン持ってるよね。ウサボールとかシマエナガとか羊とかのかわいいぬいぐるみがワッサワッサしてる。すごい装備だ!
武器?もなんかフラフープくらいの大きさの輪にぬいぐるみがくっついてる。
あれはリアルの自宅もぬいぐるみまみれな人かもしれない。
「討伐で協力って事はヤーンボールシープ愛好会の人も現地に来るのかな?」
「さぁ? ……少なくともあのドワーフはまだ中にいるから参加するだろうけど」
まぁその辺は参加してみないと分からないね。
「……で、僕らはどうする? ヴァンパイア退治、参加したい?」
「いや別に……真紀奈は?」
「僕も別に」
ヴァンパイア関係は特に思い入れが無いんだよねぇ。種族的にも興味無いし。うちに来たチビっ子ちゃん達が捕まってた所とは別だろうから関係無いし。
ヘルプを受けた被害者はカッコよく救助済みで、ドワーフさんはたくましく潜入してたからあんまり心配いらなさそう。
「そもそも俺達、【光属性】使えないしな」
「それなー!」
ムービーに出てたヴァンパイアの弱点は【光属性】だから、ピンポイントで僕らの不得意分野。
それなら参加者でいっぱいになりそうな所にわざわざ突撃しなくてもいいかなって。聖職者系のプレイヤーとか嬉々としていっぱい来るだろうしね。
「被害者の救助で俺の役目は終了でいいや。前日譚みたいなムービー出たから、終わったら戦闘の様子もムービー出るだろ」
「うんうん、それ見られればいいかな」
と、いうわけで……僕らはヴァンパイア討伐は不参加。
今日はログインしたら別の事をしよう。
「死霊魔法使いのアジトのアイテム確認はするとして……後はどうするか」
「じゃあさ、その後はグミちゃんのレベル上げしに行きたいな」
「あー……夾竹桃さんに聞いた、海の開拓地の低レベル育成スポット?」
「そうそう」
海の中の開拓地って行ったことないから、デートにもちょうどよさそうだし。
「まぁいいんじゃない。それならさっさと食べて場所調べないと」
「だね」
今日の夕食は挽き肉乗せバゲットとカプレーゼです。
んー、トマト味で炒めた挽き肉がパンと合いますねぇ!
カプレーゼはミニトマトと、そのミニトマトより小さくてコロコロしたチーズを使っててすごくかわいい。
「うめぇ」
「そりゃよかった」
雄夜のご飯は最高だぜ!
* * *
で、調べてみたところ、まだその開拓地は低レベル育成スポットの提供をやっていた。
「何処から行くのが1番近いかな?」
「んーと……初心者は港でNPCに頼んで船で近くまで行くのがお勧め。脱初心者は、ウサボール島から自力で出られるなら、そこから行くのが1番早いって」
「へぇー!」
「ウサボール島から南に向かうと、ゲーム内で半日かからないくらいで着く、らしい」
「ほうほう」
じゃあネモに頼んで向かえばいいかな。
「水中呼吸の薬は夏のイベントで一応取っておいたのがまだあるから……他に準備するものは無い?」
「あー……特に無いな。手ぶらでも大丈夫って書いてある」
「じゃあすぐ出発できるね……開拓地ってなんて所?」
「……『ビーナスのエビ籠』」
「『ビーナスのエビ籠』!?」
美形のエビが名産なのかな?