キ:やりたい放題やってみた
「オラァッ! 長年よくもやってくれたなコノヤロウ!!」
「いてまえいてまえー!」
「積年の恨みじゃー!!」
はい、こちら死霊魔法使いのアジトで好き放題しています、キーナです。
もうね、解き放ったオバケ達が荒ぶる荒ぶる。
新しい通路とか部屋に出る度に【ダブルクリエイト】してオバケ解放したら、後はもう僕が何もしなくてもオバケ反乱軍が数の暴力で敵をボコボコにしてくれるから、僕それ以外は何にも戦闘してない。
まぁ代わりに経験値は入らないけどね。
やはり戦争は数だよ。
ボコボコにした死霊魔法使い達は、最初に儀式場でボコボコにした組織の奴らと同じように、【木魔法】でグルグル巻きにして【鏡魔法】で姿見に放り込んでる。
それも僕が『すぐに殺して楽にさせないで、生き地獄を味わってもらおうねー』って言いながら最初にやって見せたら、後は【木魔法】持ちを筆頭にしたオバケ達が自主的にやってくれるようになったから、マジで何もしなくてよくなった。
まぁ、鬱憤が晴らせるならいいよね。
おかげで僕は、ありがたく制圧後の部屋で物品をじっくり漁っておりますことよ。
目当ては面白いものと、組織壊滅に繋がるような手がかり。
組織トップの名前がズラッと並ぶ血判状とかあれば分かりやすいんだけどなー。
「魔女様、こちらの書類入れは手紙が束になっておりますので、持ち帰るのがよろしいかと」
「おー、ありがとー」
ヒトのオバケは当然ヒトの文化が分かるから、非戦闘員のヒト型オバケは積極的に僕のアジト漁りを手伝ってくれている。
掃除洗濯とかをやらされてたオバケ達だね。めっちゃ生き生きしながら漁ってる。オバケなのに。
「魔女様、こちらは遺骨回収完了しました」
「はーい、じゃあ次行こうかー」
死霊魔法使い達が使ってた遺骨は、墓荒らしに使われてたヒト型オバケ達が集めて、部屋にあった棺桶に詰めてくれている。
生前は葬儀屋さんや墓守さんだったらしいよ。
せめてもの罪滅ぼしって言って手伝ってくれてる。完全な被害者なんだから気にしなくていいのにね。
やってる事は完全に家宅捜索だし、見た目は完全に葬列&百鬼夜行。
そんな愉快な一行で進んでるんだけど……どこの部屋も窓が無くて、石壁が延々と続く。
たまに土壁が出てくるから……たぶん地下なのかな?
灯りはぼんやり青い炎が灯るロウソクがちらほら。オバケ達がフレンドリーじゃなかったらちょっと怖かったかもしれない。
そんな環境で、制圧と探索を進めている。
「魔女様、こちらは素材として良い物ですよ」
「わーい、ありがとー」
「魔女様、また宝箱が」
「あ、はーい」
そう、ここはヒト族のアジトだから、宝箱があるんですねー。
でもね、油断しちゃいけない。
かなりの頻度でミミックが置かれてるのだ。
「【ツリークリエイト】」
「ちょっ!? 初手で締め付けとか反則……モガモガ……」
ミミックはね、開けないで【木魔法】でギュッと締め付けると慌てて正体現して喋りだすから、ちょっと面白くなってきた。
これで三体目。
脅しが得意なオバケちゃん達にちょっと圧をかけてもらって、暴れないように説得している。
「魔女よ、大人しくなりましたぞ」
「はーい、ありがとー」
あ、こっちの素材とか相棒の装備に使えそう。持って帰ろっと。
そんな感じで制圧しながら進んでいくと……見るからに高級そうな両開きの扉がついている部屋に辿り着いた。
「後はここだけですな」
「じゃあ親玉は脱出してなければここにいるのかなぁ」
いよいよボス戦かな?
突入前に相棒に念話飛ばしておこう。
(たぶんボス戦入りまーす)
(ん、了解。行けたら行くわ)
よし……それでは、行動に移ります!
まず、非戦闘員のオバケ達は離れた所に隠れててもらう。集めたお骨や、敵を捕まえてある姿見も、僕のインベントリへ収納。
そして、即席オバケ軍団は、フレンドリーファイアの防止に一応パーティを組んでおいて……扉の前でいつでも飛びかかれる状態で静かにしててもらう。
この状態で……ネモに扉を開けずに、隙間から中をうかがってもらいます。さっきUIやってもらって気付いたんだよね、こういう使い方も出来るって。
ひゅる〜んと細長く伸びて隙間から入り込むネモの1部。
そして繋がったままこっち側に残ってるコウモリ姿のネモの1部。
「どう? いる?」
「いる」
「いるヨ」
「あのハゲ」
「ツルツル」
「まぶしい」
「うん……髪の毛については触れないであげようか」
では、作戦を開始します。
内容は簡単、ネモにこのまま、中に声が届くメガホンになってもらうだけ。
「【だーれだ?】!!」
MP減少を確認!
対象に効果が出ました!
「突撃ぃー!!」
「「「「「ウオオオー!!」」」」」
扉オープン!!
怒り狂ったオバケとご一緒に! 部屋へ向かってなだれ込めぇー!!
あ、オバケに目隠しされてワタワタしてるよ。ダッセェなぁ!
「【ダブルクリエイト】!! 【トリック・オア・トリート】!!」
隷属オバケ解放! からのデバフ!
そして殴りかかるオバケ達!
それっ! やっておしまい!
殴れ殴れ!
もしかしてこのまま決着できるかなーと思ったけど……さすがにアジトの親玉はそんなに甘くなかった。
「ぬぁあっ!!」
「わっ」
「ぬおっ」
「ぴゃー!」
気合一喝。
目隠しオバケを払い落とした禿頭の男が吠えると、ブワッと巨大な猛禽のようなオバケが風を起こして、即席オバケ軍団を後退させる。
「小賢しい! このような小細工ごとき」
「【サモンネクロマンス:ポルターガイスト】!」
なんか言ってるのを無視して次の召喚!
呼び出したポルターガイストちゃん達が親玉に向かってぶん投げるのは……道中で確保したミミック達だぁー!!
「オラァッ! 死にたくなかったら死ぬ気で噛み付いてこーい!」
「アギャー!?」
「うそぉー!?」
「鬼ー!!」
ケラケラと響くポルターガイストの笑い声。
ミミックの悲鳴と、激しい落下音。
その中に、台詞を中断された男のどもり声がうっすら聞こえて……全部がドガシャーン!!と弾け飛んだ。
爆発した闇。
吹っ飛んで倒れるミミック達。
その真ん中にいるのは……怒り心頭に血管の浮かんだ顔をした親玉と猛禽オバケ。
「ヒトの話は聞かんかぁあ!!」
「チッ」
流石にちょっと不意打ち気味程度のタコ殴りフィーバーじゃ終わんないかぁー。
「てか猛禽オバケちゃんは隷属解放してもそっちに着くんだねぇ」
「ふん、当然よ。不死の王を目指す身として、忠実なる配下は得ておるわ」
「そっかー、お友達がいてよかったねー」
「忠臣と言っておろうが!」
沸点の低い男は、顔を真っ赤にしながら、ダン!!と力強く一歩踏み出した。
「我は『永劫の不死王冠』が1人、『不死爵・サルバストゥーラ』!! 貴様のような若輩者に膝を付くほど、落ちぶれてはおらぬわぁ!!」
渦巻く闇が、男と猛禽の姿を覆い隠す。
窓のない石壁の部屋に強風が吹き荒れて……そして、闇が晴れた。
そこにいたのは……半透明になって、体の左半分が猛禽オバケと融合した男の姿。
不死爵・サルバストゥーラ Lv78
「貴様ら……全員必ず奴隷に堕として、死よりも辛い目にあわせてくれる!」
ボス戦入りまーす!
※追記
明日の投稿お休みします




