ユ:死霊魔法のご相談
ログインしました。
前回は、拠点に戻ってから団子や玩具なんかのお土産を渡して終了。
団子は美味しいと好評だったし、和風の物は珍しさもあって興味津々で喜んでもらえた。
そしてリアル1日開けて今日のログイン。
今日は夾竹桃さんが相談があるとかで、変装姿で拠点にやって来た。
「やっほー、身長がだいぶ縮んだ呪術士さんでーす」
「「なんで??」」
夾竹桃さんは、背格好がキャトナくらいの大きさになっていた。『幼児』ってほどじゃないが、パッと見で『子供』の認識になる体格だ。もともと中性的で性別不明だったのが、もっとわからなくなった。
「ちょっと半妖になってみたー」
「ああ、半妖。夾竹桃さんなったんだ?」
「あれー、もう知ってたー? まぁ掲示板には昨日書き込んだけど」
「……リアル一昨日に日ノ出桜の都に観光に行って、その時に」
「もしかしてお二人さんも裏側行ったー?」
「行ったよー、神社でお参りしたら帰りに入っちゃった」
「アヤカシに案内されたわけでもなく入ったの? ウケるー」
アヒャヒャと笑う夾竹桃さんは、座敷わらしの半妖になったらしい。
座敷わらしは【呪術】にボーナスが入る種族なんだそうだ。
「で、今日の相談なんだけどさー。『陰陽師』って職業があるんだけど、必要スキルが【呪術】と【アヤカシ使役】と【死霊魔法】なんだよね」
「へぇー」
「だから【死霊魔法】を覚えようと思うんだけど……使用感?とかちょっと聞いてみたいなーって。弟子のツチノコに聞いても『不死鳥が強い!』って事しかわかんなくてさー」
「「……弟子のツチノコ?」」
トゥティノコゥじゃなくてか?
いやトゥティノコゥが弟子ってのも意味がわからないが。
……ゲラゲラ笑う夾竹桃さんからざっくり聞いた分には、プレイヤーらしい。
呪術士需要が高すぎて供給が追いつかない可能性が出てきた所で丁度良く遭遇した陰陽師志望のプレイヤーをそのまま弟子にした、という流れ。
夾竹桃さんは掲示板で名前を出しているから、フレンド登録するのも特に抵抗は無かったようだ。
「今は『適性を見る』って名目で奈落にぶち込んできたー」
「わぁスパルタ」
「そうでもないんだなー。レベルが普通に上げてあるから、悲鳴は上げててもなんだかんだオバケ使って立ち回ってるっぽい。つまんないよねー」
つまんないと言いつつも夾竹桃さんは楽しそうだ。
同盟に誘う気も無く、ただただ【呪術】スキルを伝授しつつ遊ぶ相手らしいが、まぁ気ままにパーティを組める相手が増えて嬉しいのかもしれない。
とりあえず、うちのヤバいニンジンから作った奈落行きの秘薬をそっと差し入れると、夾竹桃さんはゲラ笑いしながら受け取った。
定期的に作って渡すか。俺の【調合】スキルのレベル上げにもなるし。
「弟子はひとりだけなの?」
「とりあえずツチノコで様子見かなー。上手くいったら奈落の感想とかも聞きつつまた考えるー」
「そっか」
弟子のツチノコについての話はそれで終わり。
その後は、キーナに【死霊魔法】について聞く流れになった。
「最初はあの足場とかにしてた名無しのオバケ? アレとかいいかなーって思ったんだけどさー。あれめっちゃ便利じゃーん?」
「うん、そうだね」
「陰陽師への第一歩で低級のアヤカシ数体と契約したからさー、あんまり便利すぎるとそっち使わなくなりそうだなーって」
低級のアヤカシって最初はあんまり強くないしー、と夾竹桃さんは言う。
確かにネモは、想像力や発想力が伴えば、この上なく便利だ。
アヤカシのイタズラの代わりなら余裕で出来るだろう。
「それもつまんないからさー、なんか弱いアヤカシと一緒に弱いオバケから始めてみようかなーって思って。弱いオバケの使用感ってどんなもんなのかなー?ってさ」
「なるほど」
夾竹桃さんの問いに、キーナは仲間にしたばかりの頃のジャックとデューの話をした。
「まぁすぐ体用意しちゃったから、そのまま育ててはいないんだけど」
「なるほどねー、でも育てる事はできる感じかぁ……ただ籠で呼ぶと、どんな仕様のが来るかはランダムなのがなぁー」
「性格は合うのが来るとは思うけども」
「契約したアヤカシと被らないのが欲しいからねー、夜のダンジョンとかまわった方がいいかなぁー」
腕組みをして悩む夾竹桃さんを見ていたキーナが、「あ」と声を上げて人差し指を立てた。
「見るだけなら一応方法はあるよ」
「え、マジー?」
* * *
「こちら、イタコスライムのグミちゃんです」
「待って何それ、めっちゃウケるんだけど」
ゲラゲラと笑い転げる夾竹桃さん。
そうだな、実にちょうどいいのがうちにはいたな。
「今まで出てきたのがミジンコとかドングリとかミミズとかのオバケだったから……契約したい子が出てくるとは限らないけど」
「いやむしろその方が面白そうだから見せて見せてー!」
実にノリノリな夾竹桃さんのリクエストにより、イタコスライムのグミによる突発降霊会が始まった。




