キ:和風の街を観光デート
復活しました。再開します。
感想にて温かいお言葉ありがとうございました。
いつものモモンガ幻獣に癒されながら、キツネとタヌキが有料なのに吹き出しました。
ログインしました。
今日の僕らは、さっそく第二の公式初期地点となった和風の街、『日ノ出桜の都』へ観光に行く予定。
公式ムービーの直後だから混んでるかもしれないけど、それならそれで登録と様子見だけして戻るつもり。
今日は変装も無し。
のんびりデートしようね。
チビっ子達と拠点の様子を見て、準備をして、転移オーブに手を触れる。
「おー、1番上にあるよ『日ノ出桜の都』。『未登録転移は期間限定!』って注意書きがバリバリ光ってる」
「期間内に行って登録しろよって事だな」
『ちゃんと注意したからな! 忘れんなよ!』の圧が強い。
苦笑いしながら、二人で目的地へと飛んだ。
* * *
転移して最初に見えたのは、晴れた冬空に映える、うっすらと雪の積もった松の葉の緑色。
転移オーブがあるのは、夏祭りで盆踊りの会場になりそうな広場。
広場の周りは椿の花が雪の中に垣間見える灌木が植えられて、その向こうに高台の城と江戸時代のような街並みが見えた。
「おおー! 和風だ!」
「うん、和風だ」
あのお城も建てたのかぁー、ゲームとはいえすごいねぇ!
遠目に眺めて……ふと気付く。
「あれ、思ったよりプレイヤーいない?」
「……そういえば?」
この出来で不人気って事は無いと思うんだけど。
なんて思っていたら、僕らの呟きが聞こえたらしい近くにいた着物姿の女性が苦笑いしながら教えてくれた。
「ちょっと前にここから近いダンジョンの最寄りの開拓地が襲撃だって援軍募集してて、冒険者さん達は一斉にそっちへ行きましたよ」
「あ、なるほど」
和風の狩場近くの街を転移登録するチャンスだから、釣られてかなりの人数が移動したのかな?
もちろんプレイヤーがゼロになってるわけじゃないけど、このくらいの混み具合なら許容範囲ってくらいのヒトの多さだった。
丁度空いてて僕らはラッキー。
すると僕らの服装をチェックするように眺めた女性が、ニンマリと笑って手振りを交えて話し始めた。
「お二人共、見た所ここへ来たばかりでしょう? 近くに親戚のやっている呉服屋があるんです。流行りの着物姿で、都の雰囲気を堪能してみませんか? 街人向けの着物なら、戦うのには物足りないでしょうけど、その分お安く御用意出来ますから、御案内いたしましょうか?」
ほほーう。
なるほど、着物かぁ。
確かにせっかく和風の街を歩くなら和風の格好したいねぇ。
(どうする? 着物買いに行ってもいい?)
(いいよ。確かに今の格好だと浮くから)
「じゃあお願いします」
「はいどうぞ」
転移オーブの登録を済ませてから、先導する女性の後についていくと、辿り着いたのは品の良いそこそこ大きなお店。
「八恵ちゃーん、お客さんよー」
「はいはい」
呼ばれて奥から出てきた女性店員に僕らを引き継いで、ここまで案内してくれた女性は去っていった。
さてさて、それじゃあデート衣装を選びましょうかね。
「どんなのにしようかなー、相棒はどうする? 忍者?」
「え、なんで忍者?」
「え、俊敏高いから?」
「ああ……いや忍者じゃなくていい、見せなくていい、てか忍者装束あるのかよ……普通に紺っぽい着流しでいい」
相棒は最終的に、濃紺の股旅風の姿になっていた。三度笠を被ってる和風旅行スタイルだね。外套も紺一色。似合うー!
僕はどうしようかなー、着物歩きにくいから袴がいいかなー。
巫女さんっぽいのだけじゃなく、色んな模様や色の袴の御用意もあった。
どうせだから相棒と色がお揃いになる濃紺の生地に、控えめな色で蝶の模様が入っている物を選ぶ。アバターの髪が銀色だからバランスが取れて良い感じ。
防寒用の肩掛けを羽織って、せっかくだから髪もポニーテールにして紺色のリボンを結んでもらった。
「いいね!」
「うん、かわいい」
「相棒もカッコいいよ!」
さっきまで着ていたいつもの装備はインベントリにイン。
満足気な店員さんに代金を支払って、店を後にした。
「あー、いいねぇ。雰囲気出るねぇ」
「うん、和風の街で和風の格好は落ち着くな」
さっきまではNPCっぽいヒト達に『あー、観光客かなー』みたいな目線をチラチラ向けられていたんだけど、今は全然そんな事は無い。
やはり郷に入っては郷に従え。馴染む格好をすれば馴染むのだ。
のんびりてくてくとうっすら雪化粧をした街を眺めながら歩いて、呉服屋さんが勧めてくれた買い物に便利な店が多い区画へやってきた。
八百屋さんとか魚屋さんとか、食料品が売られている店の近くには出店もちょくちょく出ている。
「あ、三色団子だ。ゲームで和風のオヤツといえばコレだよね」
「うん、あるあるだな」
「拠点へのお土産は食べ物とか雑貨とかでいいかな?」
「いいんじゃない。あと俺は買いたい物がある」
「何?」
「米と味噌と醤油」
「あ! そうだったそうだった」
それならヒトが多くなる前に確保しておいた方がいいかな。
まずは調味料の店を見つけて、味噌と醤油、それとみりんがあったから合わせて購入。
「これで煮物が作れる」
「煮物ー!」
コクのある煮物はチビっ子達も喜ぶこと請け合いだよ!
そのまま店をまわって、食材やお土産を選んで買う。
あ、お米屋さんあったよ。お米はいっぱい買っておこうね。
あとお魚も欲しい。せっかく煮物の準備ができたんだし。
八百屋さんは和食ならではの野菜がいっぱいだし……あ、綺麗な飴玉売ってる。これは買い。
あと個人的にお団子はマストだから、三色団子とみたらし団子と餡団子をたっぷり買っておいた。
「そんなにいる?」
「いるかもしれないじゃんすか! 帰り道で突然犬と猿と雉のアニマルトリオがカツアゲしてくるかもしれないじゃんすか!」
「きび団子買ってないが?」
まぁ余ったらピリオのNPCにお土産にしてもいいしね。
ひと通り食べ物のお店をまわったら、次は雑貨屋さんのあたりをまわろうか。




