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ユ:ダンジョンのもうひとつの顔


 そこそこの高さまで登ってきた俺達は、一番大きな浮き岩に目を付けて足を止めた。


「うむ! これなど掘りがいがありそうだ!」

「んじゃこれにすっかー」

「足場広げるねー」

「助かるー」


 せっかく同盟で来たから踏破はもちろんするつもりだが、それはそれとして目的の素材集めはしないとな。

 セイレーンさんの拠点用。浮かぶ素材。


 エフォ(EFO)のダンジョンは宝箱こそ無いが、ダンジョンで取れる素材はダンジョンの奥で取れる物の方が質が良い傾向にある。

 だから俺達も、ある程度登った所で採掘をすると決めていた。


【採掘】スキルが一番高いド根性さんが確保を担当するようだ。


「……敵は来ると思うんで、見ときます」

「助かるッス!」

「あ、ありがとうございます」


 俺は【感知】を使いながら周りを警戒する。

 キーナは引き続き足場担当。

 他の面々は思い思いにひと息ついていた。

 ……アルネブさんはダディに抱き着いたまま「ウフフフフフフ……」って笑って現実逃避しているけどな。そっとしておこう。


「では行くのである!!」

「うわ、クソデカツルハシ」

「ゴーレム用ッスか!?」

「うむ! ゴーレムは採掘が楽なのである!」


 ド根性さんはゴーレムに乗ったままツルハシを構えて、ズンズンと浮かぶ岩に近付いた。

 俺はそれを視界の端に置きながら周りを警戒する。


「一応離れておくのである!」

「だよねー、派手に飛び散りそうだよねー」

「ここで死に戻りは勘弁ッス……」


 他のメンバーがある程度下がったのを確認して……ド根性さんは岩に向かってツルハシを大きく振りかぶった。


「チェストォオオオオッ!!!!」


「気合が強すぎる」

「声がデカい方が良い物掘れたりするッスか?」

「ねーよ」


 ゴギャッ! と岩が砕ける鈍い音──と、同時に俺の【感知】に引っかかるエネミー反応。


「……は!?」


 振り向く。


 ツルハシで砕けた岩の隙間。

 夜空と同じ色の岩肌の隙間から、ギラリと光る白い宝石のような物が見えた。



 ラージグラビティコア Lv80



「その岩、敵だ!」

「ぬぅ!?」


【隠蔽】が高いモンスターなんだろう。【感知】で見破れない擬態をしていたから分からなかった。


 驚いて下がったド根性さん。

 震えるように動き出した大岩。

 慌てて戦闘態勢に入る同盟メンバー。


 グラビティコアは、夜色の岩を剥がして盾のように周囲に浮かせた。

 姿を現したのは、ミョウバンの結晶のような形をした、ぼんやりと白く光る輝石。

 目や口は見えないが、一応生き物ではあるんだろう。

 グラビティコアは浮かせた岩をぐるりと回転させ、耳鳴りのような不愉快な音で吠えた。


 ……すると、同時に周囲の岩が同じように動き出す。


「……うわ」

「おいマジか」

「え、浮いてるの全部コイツだったッスか!?」

「つ、つまり……手出ししなければただの足場ですが……っ」

「素材として欲しかったら、自前で足場を作った上で戦えないとダメってことー!?」

「【星魔法】で飛べるのが前提の相手やもしれぬ!」

「……ウフフ」

「当の【星魔法】持ちはこの状態なんだよなぁー!」



 グラビティコア Lv60



「デカいのはデカいのにしか入ってないのかな?」

「……ぽいな」


 何にせよ、戦うしかない。

 高品質素材を求めてかなりの高さまで登って来たから、周りを囲まれている。


「そんじゃやるかー」

「し、死に戻ったら復帰は難しそうです」

「その時は潔く諦めるッス!」



 * * *



「固そうだからやっとくねー、【トリック・オア・トリート】!!」


 初手はキーナのデバフ。

 動き出したグラビティコア全体に届くように大きく叫ぶと……直後にキーナの周りに大量の夜色の岩が散らばった。


「うわわわわっ!? あー、岩を押し付けてデバフキャンセルされたー」

「それそんな仕様だったのー!?」

お菓子(アイテム)を寄越せばイタズラは無しでしょ」

「ハロウィンルールであるな!」

「あ、で、でも……ま、周りの岩少し欠けてませんか?」

「結局防御低下してるじゃん、ウケるー」


 なお、押し付けられた岩は普通の岩だった。


(これに無重力効果があったら話は簡単だったのにー)

(そんな上手い話は無いって事だな)


 そんなやりとりをしている内に、様子見をするように浮かんでいたグラビティコア達が動き出す。


 小さなグラビティコアが、盾岩をグルグルと回転させたかと思うと、自身も回転しながら俺達へ向かって突っ込んできた。


「うおっとぉ!!」

「この環境で体当たりは地味に怖い!」

「ウフフフフフ……」


 そしてそれを避けている間に……ラージグラビティコアが強く光り始めた。


「あ、なんかヤバそう!」

「避けろ避けろー!!」


 チャージ……からの、光線。


 照準でも調整しているのか、前兆となる細い光の線を描いてから、そこをなぞるように太いビームが射出された。


「うわっとぉ!!」

「あっぶねー! 前触れ無かったらヤバかったッス!!」


 線の段階で回避すればなんとかいけるな。


 ラージグラビティコアは再びチャージに入る。

 その間に、小さめの奴らがガンガン飛んでくる。


 ……うん、同盟全員で来てて良かったな。

 これはレベル負けしている今だと、ある程度の人数がいないと厳しすぎる。


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― 新着の感想 ―
ああ、なるほど。上に行けば行くほど敵が強くなって、素材の質も高いのか。 ウフフしか言えなくなってるアルネブさん可愛いわぁ。 人嫌いになる一因に“他人に弱点を嘲笑される事”があると思ってて、チームのみん…
>「チェストォオオオオッ!!!!」 ド根性ほんと好き。これに冷静に突っ込みいれるメンバーたちも好き。 アルネブはやいとこ正気に戻れ~ww
 光線とくれば鏡ですよね!キーナさんの鏡魔法炸裂かな。  どうせメテオに狙いなんて無いんだから、目隠ししてメテオ乱発してれば良いんじゃー。フレンドリファイア無い仕様ですし。
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