ユ:夜空のダンジョンと幻獣
ちょっと短めです。
「ァイタッ! この星屑、結構くらいますけどー!?」
「オレっち当たったら即死では!?」
「だーいじょーぶ、こっちで肩代わりしてるからー。HPいくつ?」
「19ッスね」
「じゃあ即死でも余裕ー」
「俺も紙装甲フェアリーだから当たったら割とヤバい」
「アンタ高レベルアリストフェアリーなんじゃないの!?」
「MP型フェアリー舐めんな、HP28だぞ」
「少なっ!」
「……とりあえず夾竹桃さんはネビュラ乗って下さい」
賑やかに言葉を交わしながら、夜闇の中を駆け抜ける。
このフィールドは常に夜空だ。
見上げれば一面星の海で、地面も夜色の岩にチラホラと落ちた星屑が輝いているから、時々空と地面の境目が分からなくなりそうになる。
そんなフィールドに出没するモンスターは、星が降るのを避けるためか地面の下で待ち構えるタイプばかりだ。
地面から飛び出したモンスターが、先頭を行くド根性さんのゴーレムに掴みかかり、そのまま蹴り飛ばされて遠くへ吹き飛んでいく。
「フハハハハハッ!! その程度の組み付きでゴーレムを止められると思うでないぞぉ!!」
「生き生きしてるッスねぇ……」
「ド根性さんはアレが通常運転だから」
露払いをしてくれるド根性さんの後に続き、まばらに降ってくる星屑の下を駆け抜けて……俺達はダンジョンの入り口へと辿り着いた。
「着いたわ、ここよ」
「おおー」
辿り着いたのは、緩やかな窪地にある大きなストーンヘンジのような物だった。
周りと同じ夜色の巨石を積んだ石のアーチは、リアルの物よりもたぶんかなり大きく、アーチで囲んだ円が広い。
そしてストーンヘンジの上空には、いくつもの巨石が浮かんでいた。
アレを登って行くって事か……高所恐怖症でよく挑戦したな?
とりあえず隕石が危ないから全員でアーチを潜る。
……するとアーチの陰から、半透明の小鳥が一羽飛んできた。
黒い体だがほんのりと光っているような、不思議な小鳥だ。
「おっ、精霊ー?」
「いいえ、幻獣よ」
アルネブさんの言葉を受けて、メンバーはそれぞれトマト結晶のアクセサリーを装備した。
フリマの時にやりとりしておいてよかったな。セイレーンさんにはひとまずこの場用にトマトと、トマト結晶を渡しておいた。
慌ててトマトを早食いするセイレーンさんを尻目に、アルネブさんが微笑んで小鳥の前に出て手を差し出した。
小鳥は当然のようにその指先に止まる。
「……ヒトの子、また、来た。たくさんで、来た」
「ええ、今回はここを登るのに協力してくれる人達と一緒に来たわ」
「キョルッ……なら、話、する……」
そして小鳥は俺達に向き直った。
「キョルルッ……ヒトの子。コレ、『星のクロツグミ幻獣』。キョルッ」
……かなりたどたどしいというか、喋るのに慣れていなさそうな幻獣だな。
「星。それは、光。生けるモノ、命の、欠片。飛沫。闇の、灯り。夜空の、道標。それだけ、だった……キョルルッ」
必死に話そうとしているのを、静かに見守る同盟の面々。
「けれど、ヒトの子、違った。星に、意味、求めた。星に、在り方、求めた。星は、飛沫、欠片、反照。ヒトの子、来て、星、変わる……星が、変わる……コレ、それ、見る。キョルッ……だから、共に、天蓋、登る」
言いたいことを言い終えたのか、満足気に「キョルルッ」と鳴くクロツグミ幻獣。
片言でかなり分かりにくかったが……まぁ、希望している事はわかった。
「ようは、ここを登るならついてくるって事か」
「ええ、そうみたい」
「クエストじゃないんスね?」
「『登って欲しい』じゃなくて、『登るならついていく』ってスタンスみたいなの。登らないなら別にいい、って感じね」
「まぁでもこの感じ、登れば間違いなく何かあるよねー」
「は、はい。そう思います」
頷き合う俺達。
ただついてくるだけなら、別に反対する理由も無い。
そして何らかのイベントが待っているにしても、それを見越して変装してきたからムービー案件でも大丈夫だ。
「登った先は、小鳥が言うには天蓋?」
「お、おそらくは……でも、天界とはまた違うようで……」
「まぁ場所が場所だし、星関係の場所だろうな」
「星に関わる種族の情報等があるやもしれぬぞ!」
「フフ、そうだと嬉しいわ」
未知の行き先へ、期待が膨らむ一同。
それはクロツグミ幻獣も同じなのか、アルネブさんの肩に止まって嬉しそうに鳴いている。
(何があるかなー、楽しみだねぇ)
(……まぁ、うっかり100超えの群れとかいなきゃ全員で登れるだろ)