キ:ダンジョン行き、同盟集合!
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今日は同盟の皆でアルネブさんが入植しているフィールドのダンジョン攻略。
僕の蛇ちゃん武器は間に合わなかったけど、まぁ箒の杖は新しいのがあるし【死霊魔法】も強化されるから、とりあえず問題無いかな。
装備は、一応変装して行く事になった。
アルネブさん曰く、ヒトじゃないけどNPCがいて、ダンジョン突破したら重要な場所か新しいフィールドかどっちかに辿り着きそうな事を言ってたんだって。
唐突にムービー案件が始まるかもしれないらしいから、念の為ね。
そんな感じに準備をして、待ち合わせ場所というか現地でもあるアルネブさんの拠点……『星降り平原』の『蝕の台地』へ転移。
転移先の景色は……薄暗い洞窟の中。
夜の空と同じ色の岩肌をある程度平らに整えて、頑丈な扉をつけてある空間。
「こんにちはー」
「……こんにちは」
「いらっしゃい」
「こ、こんにちは」
「どもッス!」
そこには、開拓主のアルネブさん、それとラウラさんとセイレーンさんが既にいた。
「いやぁ……アルネブ先輩の拠点もヤベーッスね。初手で放り込まれる所じゃ無いっしょ」
「そうなのよねぇ」
「今日も降ってるの?」
「毎日降ってるわよー」
許可を貰って、扉を少し開けて洞窟の外を見に出てみた。
扉をある程度隠している岩の向こうを覗くと……そこは前に登録しに来た時と変わらない景色が広がっていた。
地面はどこまでも広がる夜色の岩。
ゲーム内時間が何時だろうと決して明けない夜空。
雲ひとつない空には、数え切れない程の星々が煌めいて……
そして時々、空からテニスボールくらいの大きさをした星屑が降ってきて、鈍い音を立てて地面を軽く抉る。
草木は1本も無い、不毛の地。
……うん、前と特に変わりないね。
僕はそっと洞窟の中へと戻った。
「うん……星は綺麗だけど、相変わらず危ない」
「わ、私達の中での、住みやすさという点では……カステラソムリエさんの所が、い、一番だと思います……」
「次点でラウラの所と夫婦の所かしら」
「……ですね」
「あー、そんな感じッスね」
ここは外で建築や栽培をしても、降ってくる星屑でボロボロになっちゃうから、アルネブさんは洞窟を掘り進めて地下に住んでいる。
ゲーム開始直後はかなり危なくて、見つけた洞窟に慌てて駆け込んだんだって。死ななくて良かったね……
そんな感じでのんびり話していると、ド根性さんと夾竹桃さん、そしてカステラさんもやってきた。
「全員揃ったわね、パーティー配るわよ」
僕と相棒も一度パーティーを解除して、アルネブさんから飛んできたパーティー勧誘に承諾。
パーティーメンバーに全員の名前が並んだのを確認して、頷いたカステラさんが色違いのお揃い変装衣装を着た面々を見渡した。
「先に確認しとくか。全員、レベルいくつ? 俺は61」
「私は68よ」
「わ、私は66です……」
「自分は40になったばかりである!」
「すんません、オレっちまだ15ッス!」
「バラけるねぇ〜、こっちは43」
「僕は46」
「……52です」
うぅ~ん、見事にバラバラ。
相棒が言うには、アルネブさんとラウラさんは現時点での戦闘勢のトップに近いんだって。狩りメインで遊んでるんだねぇ。
「……まぁなんとかなるだろ」
「セイレーン殿は攻撃が通用せんかもしれんな!」
「そう思って今日は歌唱でバフをバラ撒く役に徹するつもりッス! バードなんで!」
「まぁそれが無難っぽいよね〜」
エフォはレベル差があっても出来る事はあるからね。
セイレーンさんはちょっと死にかけるかもしれないけど……なんとかなるなる。
役割も前とだいたい一緒で
ド根性さんとラウラさんが前衛。
僕とアルネブさんと夾竹桃さんとセイレーンさんが後衛。
カステラさんと相棒は臨機応変に遠近を切り替えて対応。
「そして今回のダンジョンは高い所という話であったか!?」
「ええ、小さな足場をどんどん上へ上へと登っていくタイプよ」
「はい、自力で飛べる人、挙手ー」
はーい、飛べまーす。
手を挙げたのは、僕とラウラさんとカステラさん。
「キーナさん飛べるの?」
「オバケモードになったら飛べるよ。日光当たったら死ぬけど」
「幽霊じゃん……」
「あれ? 旦那さんが幽霊じゃありませんでしたっけ?」
「……俺は名前がユーレイなだけです」
「そんなことあるッスか?」
「てかトビウオは飛べないんだー?」
「トビウオの人魚は【跳躍】と俊敏ステに補正かかるッス。流石に鳥みたいな飛行は出来ないッスねー」
「ハイジャンプが得意なのね」
そして……アルネブさんが、「ウフフ……」と儚げな笑い声を上げた。
「……ところで、誰かジャンプ出来る従魔がいたら、貸してもらえないかしら?」
「あー、【跳躍】低いのか?」
「……ウフフ」
「……アルネブさん?」
「あ、えっと……アルちゃんはその……」
「いいわ……自分で言うわ……私、高い所ダメなのよ」
「えっ」
ありゃ、アルネブさんに意外な弱点。
「え、でもオレっちの所の雲の上は平気そうだったッスよね?」
「地面が見えなくて、あそこまで現実感が無ければ例外よ……下を見ると脚が動かなくなるわ……」
「あー、展望台とかで上見続けるタイプかー」
「……もしかして、ダンジョンの難易度が高いってのは……」
「……ウフフ」
「……わ、私が運んだりもしてみたのですが……敵が増えてくるとどうにも……」
そっかー、足場的な難易度で敗北してたのかー。
僕は、【召喚魔法】で、走ったりジャンプしたりが得意なダディを呼び出した。
「乗る?」
「……お願いするわ」
そっと大きなニワトリの首筋に抱きつくアルネブさんは、普段の余裕に満ちた雰囲気が消えて、ものすごく儚くなっていた。
(このアルネブさん、庇護欲をそそりますねぇ。かわいい)
(……重力で浮けるようになったのに高い所苦手なんだな……)
あ、ほんとだ。感想で気づきました500話です。
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