キ:寄付を終えた帰り道。
今回ちょっと短めです。
【シュタール子爵家の小勲章】…品質☆
シュタール子爵家に多大なる貢献をした証。
受け取った本人の所有扱いになっていれば、一部を除くNPCの好感度が僅かに上昇する。
手放すとシュタール子爵家からの好感度が大きく下がる。
はい。
聖女としては小勲章的な物が無いから、ということで……ヴィクトリアさんからシュタール子爵家の小勲章を貰いました。
お貴族コレクションがまたひとつ増えたよ、やったね。
アリリアさんからは前に大霊廟のお礼でお守り的な物を貰ってる事もあるし、今回は多分1番使うのがヴィクトリアさんだろうからって事で、シュタール子爵家のを貰った形。
寄付金を元に、信頼出来るくらいに功績を積んでいる冒険者に声をかけて、使命をこなす事になるってさ。
(もしかして……ヴィクトリアさん関係のクエスト、僕ら1段階スキップさせたかな?)
(……かもしれない)
……まぁ、当のヴィクトリアさんが『これで初動が早くなる』って喜んでたから、良いよね。
具体的には、こっちに乗り込んで来ている怪しい集団に対抗するために、怪しい集団が住み着いた本拠地を探したり情報を集めたりするんだって。
僕らも何か情報を得たら教えて欲しいって言われたから、それこそ僕を狙ってる死霊魔法使いとかと何かあれば連絡しよう。
子供達への支援については、アリリアさんが何割か使って責任を持って行うって約束してくれたから、そっちは大丈夫。
そもそも最近は冒険者の協力もあって、そこまでカツカツじゃなかったらしいからね。
それに、なんたってアリリアさんが元孤児だから、きっと子供達が幸せになれるように使ってくれるでしょう。
そんなわけで教会の人達総出のお見送りを受けながら、僕らは教会を後にして、寄付は完了!
(教会の方の動きが聞けたし、ヴィクトリアさんとも会えたし……寄付にして良かったね)
(そうだね)
そんな感じに感想を話しながら、なんとなく徒歩で転移広場まで戻って来た……その時。
転移オーブに近づくと……すぐ隣に誰かがドサッと投げ出されたみたいに倒れ込んだ。
二人揃って思わず目線がそっちに向く。
この打ち捨てられ方は見覚えがあるなー……死に戻りだぁ。
死に戻った人は……男性で、ちょっと小柄な設定ではあるけど普通のヒューマンサイズ。
そして、背中に半透明の膜みたいな羽があった。フェアリーのとは……ちょっと違う? なんの種族だろ?
ビックリして立ち止まってついつい見ていると……羽のある男性は「うぁあああ……」って打ちひしがれた声でブツブツと何か呟き始めた。
「いやアレは無理ッスよ……いくらなんでも無理ッスよ……なんすかあの敵の数信じらんねぇよ……こっちはオレっちひとりなんすよ? エフォのバランス調整どーなってんだぁああああ……」
嘆き悲しんでいた男性は……ゆらりと立ち上がると、胸に手を当てて姿勢を整えた。
「……では、この感情を歌います。聴いてくださ……」
そして僕らを直視してフリーズした。
「あ……ぁ……ああああああああ!! いたぁあああああ!!」
青い髪でチャラい雰囲気をしているその男性は、ブワッと羽を広げたと思うと、驚きっぱなしな僕らの前に跳びこみ、片膝を突いて、祈りを捧げるポーズをとった。
「先輩方ぁああ! お会いしたかったっすぅうう!!」
「……?」
「……人違いでは?」
「いやエフォであんたら夫婦を人違いしたらモグリっしょ!? 森女先輩も後ろ確かめない! 間違いなくお二人の事ッスからぁ!!」
ええー……?
てか、誰?
知らん人の奇行に僕らがドン引きしている気配を察したのか、男性はスクッと立ち上がって綺麗に敬礼した。
「申し遅れました! 自分、『セイレーン(♂)』と申します! 最近エフォ始めた新人ッス!」
そして……ちょっと小声になって僕らに囁いた。
「……で、たぶん森一味の皆さんとおんなじ境遇だと思うんスよ。よければ答え合わせとか、させてもらえたらなーって思うんですけど……ダメッスかね?」
あ、ああ〜……そういう?




