ユ:シンボルツリーテラコッタ
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昨日見てきた瓶詰展示会は、最終日が終わるまで購入できたかどうかわからない。
だからそっちは結果が出るまで待つ事にして……今日はキーナが何やらしたい事があるようだ。
「フェスティバルで貰ったシンボルツリーテラコッタを、まだ使ってなかったから。何か植えようかなって」
「ああ」
ツリーの飾り付けで拠点オールスターやって貰ったやつか。
「変な木見つけるまで保留にするのかと思ってた」
「……実はちょっと瓶詰展示会で変な木探してた」
だよな、知ってた。
「でもピンと来るものが無かったから……この子にしようかなって」
そう言ってキーナが指したのは……知恵の林檎の木だった。
「うちの拠点のシンボルツリーって考えると……周りの森の木と同じよりは、こっちのような気がする」
「ふーん……まぁいいんじゃない?」
うちの拠点は季節が無いからか、花と実が同時についていて面白い見た目になってるしな。
俺達はとりあえず、シンボルツリーテラコッタの置き場所を決める事にした。
シンボルツリーと言うだけあって、今より大きくなるかもしれない。ジャック達と一緒に、畑の日当たりに影響が出ない所を探す。
「陽の光はいつもコッチからこう来るヨ」
「いっそ畑から離したこちらの方がよろしいかト……」
「それならジャック達の家に近くしちゃおうか」
「ベランダから手が届きそうです」
位置を決めて、大きなテラコッタを地面に設置する。
テラコッタとは言いつつ、フェスティバルテラコッタと違って底が無い、サークルとして囲むだけの物だ。花壇の縁取りみたいな感じだな。
「じゃあ林檎の木に来てもらうよー……【ツリークリエイト】!」
キーナが魔法を唱えると……知恵の林檎の木が『よっこらしょ』と聞こえてきそうな動きで地面からズボッと根を引っ張り出した。
「はい、オーライ……オーライ……オーライ……」
キーナの誘導に従って、林檎の木が根をタコのようにズルズルと動かしながら移動する。
「うわぁ……」
「すごーい、歩いてルー」
「ああいう魔物のようデスナ」
「足が多いようで、少し親近感があります……」
そして林檎の木はテラコッタの円の中に入り、根を器用に動かしてズブズブと土に植わった。
……すると、シンボルツリーテラコッタが一瞬キラリと光る。
そしてフェスティバルツリーの時のように、林檎の木がわさわさと枝葉を揺らして大きくなり始めた。
今まではキーナでも余裕で手が届く、果樹園の木より少し小さいくらいの低木だったが。テラコッタに収まると、『立派な木』と言っていい背の高さになった。
「「「「おおー!」」」」
「……ちょっと実を採るの大変になったな」
「ハシゴ作ろっか、登りやすそうな木ではあるけどね」
「デューに肩車してもらってもいいカモ」
「お任せくだされ兄上。マリーも遠慮するでないゾ」
「はい兄様」
成長した木に実る知恵の林檎を試しに食べてみたが、ゲームだから特に味や効果に変化は無かった。
【木魔法】の成長促進じゃないから不味くなったりはしないのか。これは別の扱いなんだな。……って事は、木をテラコッタから避けたら元のサイズに戻るのかもしれない。
「大きくなったから花の数も増えそうだね」
「だなぁ」
……これが全部林檎になるなら、ジュースとかにして売ってもいいな。今度シナモンでも買ってくるか。
そして思いの外シンボルツリーを喜んだのはコダマ爺さんだった。
「こやつは中々見込みがあるからの。ワシの言うこともよく聞くし……このまま行けばコヤツがワシの跡継ぎで決まりじゃ」
「コダマ爺ちゃん……林檎の木ちゃっかり弟子にしてたの??」
「いつの間に」
油断も隙もない。
その後、ハシゴを作って皆で林檎の収穫をしていると……キーナが俺の方を見て首を傾げた。
「そう言えば……相棒は瓶詰展示会で結局ベラドンナしか購入希望してなかったけどさ、最初に見たポーションはチャレンジしなくてよかったの? 忘れてたなら、まだ期間中だし、お金もまだあるよ?」
ん? ああ、そういえば、あの時俺が何考えてたのか言ってなかったか。
「あれはポーションが欲しかったんじゃなくて、ポーションの効果が【ワイルド・ファクター】みたいな永続スキルで欲しいなって思っただけだから」
「あー、ポーション飲んだ一時的な効果じゃなくてね?」
「そう。……まぁ、そのうちNPCに情報収集でもしてみる。魔術師団長とか」
「ふーん……」
するとキーナは、何か考えるようにぼんやりと宙へ目線を向けた。
「……どうした?」
「うん……相棒、占いしてみようよ。手がかりのヒントくらいなら出るかもよ?」
「……ああ」
なるほど、そういえば最近やってなかったな。
 




