キ:出品手続きはこちらです。
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昨日は、パピルスさんの店で小瓶をたくさん買って、帰ってから瓶詰をたくさん作った。
普通の土と【闇魔法】を込めた小さな石を入れて、そこにマックラゴラの種を3粒くらい入れる。
そうしたらコルクの蓋を乗せて、蓋を瓶の口ごと覆う感じに薄い紙を被せて細い麻紐でキュッと縛った。
その紙にマックラマッシラ夫婦がラブラブなイラストと、『マックラゴラの種』って文字を入れて完成。
これを種の分繰り返した。
マッシラゴラの種もほぼ同じ仕様だけど、もう僕が【光魔法】をこめられないから、普通の土と種だけ入れた。こっちは調べれば育て方が出るしね。
相棒も何か作るか訊いたけど、今回はいいやって返事だったから、瓶詰作りはひたすらに僕が楽しんだ。
もっと変わった瓶詰も作ろうかなーと思ったけど、僕らの拠点の素材は危険物が多すぎるからね……非売品で出すのもどうかなーと思ったからやめておいた。
そんな感じで、準備は完了。
で、今日の予定は、まず森夫婦モードになって、瓶詰展示会に昨日作った瓶詰を出しに行く。
その後、1回拠点に戻ってきて変装無しの状態になってから、瓶詰展示会へデートをしに行くのだ。
変装を無しにしてから見に行くのは、欲しい瓶詰があった時に変装していると困るから。
名前と金額を書いて出す必要があるからね。名前出しオッケーな状態じゃないと身バレしちゃう。
というわけで、僕らはサウストランクのイベント会場へとやって来た。
会場はサウストランクの転移オーブ近くにある大きな建築。街の集会とかに使ってる建物っぽい。リアルの公民館とかホールとか、そういうやつ。
1階は石造りで、2階から上が木造なのはサウストランクの他の建物とお揃いだった。
(見学は正面から、瓶詰めを預けるのは裏口へ……だって)
(……あっちかな?)
矢印の看板に従って裏へ回ると、裏口にわかりやすく大きな字で『瓶詰め預かり所』の看板が。そこから中へ入ると、カウンターみたいにテーブルがあって係りの人がいた。
「『瓶詰展示会』へ出品希望ですか?」
「あ、はい。そうです」
「ではこちらへ必要事項の記入を、瓶詰めはこちらへお願いします」
差し出された書類に必要事項を書いていく。
名前は匿名希望にチェックを入れて、仮名は……連名オッケー? なら一応『森夫婦』って書いておこう。
拠点名は任意だから未記入で……出品する瓶詰めの詳細は、『マックラゴラの種』と『マッシラゴラの種』……数は……横で相棒が夫婦インベントリからせっせと出してくれてるから……20個ずつね。
瓶詰めの配置は指定できません……了承にチェック。
販売は……可。
任意の連絡先は……未記入。
個人メッセージを飛ばしても良いか……ダメ。
拠点へダイレクトメールは飛ばしても良いか……ダメ。
あとは任意のアンケート……
……もしかして、この書類がパピルスさんの本命なのでは??
どんな人がどこに住んでてどんな品物を入手出来るのかとか、アンケートで需要と供給とかを調べているのでは……?
なんなら瓶詰めのオークションで、こういう物にならいくらまで出してもいいとか、どんな物に人気が集まるのかとかも分かるよね?
(……パピルスさんって、ゲームの中でも仕事してるよね)
(急にどうした)
ちょっと本気度合いに微笑ましい気持ちになっただけだよ。
方向性が商人に全振りしてるだけで、パピルスさんもガチ勢なんだなーって。
……とりあえず任意部分は未記入にしておいて、僕は書類を係の人に渡した。
「はい、ありがとうございます。匿名をご希望ですので、こちらが割符になります。引き取りは、展示会期間が終了してから割符を持ってこちらへお越しください」
「……その時も裏から入った方がいいですか?」
「引き取りは表からで大丈夫です」
了解でーす。
瓶詰を預けて、手続きを終えた僕らは外に出ようと振り返って……いつの間にか後ろにいっぱい人がいて、僕はビクッとなった。
手元を覗き込まれたりはしてないけど、皆ズラッと並ぶみたいにしてテーブルに乗せた瓶詰めに視線が釘付け。
……そんな今更『何も見てません』みたいにすっとぼけた顔して明後日の方向見ても遅いんだからなー! 君達めっちゃ僕らの瓶詰ガン見してたじゃんすかー!
(ビックリした!)
(やっぱり気付いてなかったか)
(言って!?)
僕らがそこを離れると、真後ろにいた人が素知らぬ顔で手続きに入る。
……もしかして、みんな順番待ちだった? 僕、時間かかっちゃってたかな?
って思ったけど……すっとぼけた顔の人達は、すっとぼけたままふわ〜っと解散していった。
(9割9分野次馬!)
(暇人だなぁ)
もう苦笑いしか出てこないよ!
早く拠点で着替えて僕らも瓶詰見に行こう!




