キ:スライム探しの情報収集
さてさて、お城の観光を終えて、僕らは拠点に帰還した。
指輪も先払いで貰ったし、スライムの卵の親探しをしないとね。
今日はフェスティバルとお城観光をのんびり楽しんだからあんまり時間は残ってないけど、方針を決めるくらいはしておこう。
「どうやって探す?」
「……『サーチワンコ』に頼もう」
ああ! そういえば【召喚魔法】を覚えた時に、相棒はそんなワンコと契約してたねぇ!
「【サモンビースト:サーチワンコ】」
相棒が魔法を唱えると、地面に小さな魔法陣が光って、可愛いコーギーみたいな犬が現れた。
嬉しそうに尻尾をフリフリしているサーチワンコに、相棒が屈み込んでワシャワシャと撫でながら話しかける。
「ワンワン!」
「ちょっと確認したいんだけど……スライムの卵があるんだが、その親の場所を探したりは出来るか?」
「ワフン! ワンワオン!」
「……なるほど、ありがとう。ああ、今日じゃない。今度何回かお願いすると思う」
うん、犬もかわいいし、犬と会話してる相棒もかわいい。
相棒はカッコいいしかわいいし頼りになるし甘えてきてもくれる、最高の旦那なのです。
軽くキャッチボールをしてから、サーチワンコは帰っていった。
「どうだった?」
「探せるって。ただ、さすがにある程度近くないと無理らしいから、スライムの生息地を調べないと」
「なるほど」
そりゃそうだよ。さすがにピリオノートからスタートして何日もかかるような所にいるスライムなんてわからないよね。
「……なんか、めっちゃスライム好きな人いたから、スライム情報は調べたら出てきそうな気はする」
「いたな、スライムマスター。スレにもたまにいる」
スライム情報を確認するため、僕らはちょっと早いけどログアウト。
ベッドに横になって、くっつきながら2人でひとつのタブレット画面を覗き込んだ。
「wikiのスライム関係は……ここか?」
「……待って、めっちゃページ多くない?」
「……発見済みスライム一覧……スライム生息分布図……テイムした場合のスライムの好物・使い勝手・進化情報……スライム系モンスターを倒すコツ……」
「……なんかリンク貼ってあるけど?」
「……『スライム関係の最新情報やもっと詳しい内容は、下記サイトがお勧め』」
有志wikiでもかなり詳しい情報が多いのに? これ以上詳しいサイトがあるの??
僕らは恐る恐るリンクを押した。
読み込まれるページ……そして表示されたのは……『EFOのスライム大辞典』
「うわー! なんて目に優しくないホームページ!」
「五千兆円のネタみたいなロゴが輝いてやがる……」
「ズラッとラインみたいに並べたスライムを虹色にグラデーションさせなくていいんですよ!?」
「……訪問者数カウンター」
「中途半端に古のホームページに片足突っ込んでるー!」
ドギツい個性のトップページから、やたら項目が多いメニューの中の『最新スライム生息分布図』に飛ぶ。
……すると、今度は打って変わって落ち着いたシックな雰囲気のページの中に、ピリオノートを中心にした広域の地図が表示された。
「統一感!」
「いったい何処を目指してるんだ……」
とはいえ、確かにこのページは有志wikiの物よりも情報量が多かった。更新日時もこっちの方が新しい。
僕らはピリオノート周辺のスライムの分布を確認した。
「まずは大街道がつながってる四方の街より内側の範囲でいいよね?」
「いいと思う。そんなに遠くないって言ってたし、近場から行こう」
「ってなると……『ブリックブレッド』の近くと……『サウストランク』の近く?」
「あとは『石の街ロックス』の近くにもある」
「……そういえば、ロックスってどうなったんだろ。イベントで、結局壊滅したんでしょ?」
「だな……ついでに様子見てみるか」
「うん」
石切場の街。タンクトップとか売ってて、なんだかんだ楽しかった思い出がある。
なくなったのはちょっと残念だから、その後が気になるね。
さすがに街道が繋がってる所で、廃墟のままって事はしないだろうし。
「とりあえずはこの3カ所見に行くか」
「うん。……あ」
「どした?」
「『この分布図は、ゲーム内の冒険者ギルドで購入が可能です』だって」
「……行く時に買うか」
わざわざ作ってギルドに提供してくれてるのかぁ……手厚いなぁ……どんだけスライム布教したいんだろ。
さらにそのままページを下の方にスクロールさせていくと……『このサイトの情報は、クラン『スライム愛好会』によって集められています。同好の士、募集中!』って書かれていた。
「『スライム愛好会』」
「なんてわかりやすい」
「……『クランリーダー、スライムマスター』」
「なんてわかりやすい」
本当に、スライムで遊ぶためだけにエフォやってるのかもしれない。




