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キ:豆ニワトリと森の畑とリンゴの木


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 僕が大きめの仕事で疲れたせいで、一日空いての休日ログイン。

 ってことはゲーム内では三日くらい経ってるって事で……


「主よ、豆ヒヨコが成鳥になったぞ」

「おおー!」


 ヒヨコを見ていてくれたフッシーが早速教えてくれたから、急いで飼育小屋に向かう。


「コケッ」

「コケコケコッコ」

「コッコッコ」

「ニワトリだー!」


 小屋の中には丸々とした五羽のニワトリ!


「……なんか豆ついてない?」


 一緒に来た相棒が、ニワトリを持ち上げて首を傾げる。



 豆ニワトリ Lv3



 豆ヒヨコはやっぱり豆ニワトリになるらしい。

 トサカの代わりに緑の葉っぱがフサフサしてて、首周りをグルっと囲むように豆の蔦が生えてる。

 その蔦には、豆のサヤが何個かぶら下がってた。


「……豆だねぇ?」

「卵の代わりに豆を生む……? いや、卵は卵でちゃんと産んでるな」

「コケッ」


 豆ニワトリはひと鳴きしながら、大きく育った首の豆サヤをひとつブチッと毟り取って打ち捨てた。


「「えっ」」

「コケッ」


 フンスッて感じで豆ニワトリはスッキリした顔をしている。

 恐る恐るサヤを拾ってパカッと開けると……中は普通のヒヨコ豆に見えた。


「……これってもしかして、畑に植えたら豆ヒヨコになる?」

「……この流れだとそうなんじゃない?」

「つまり豆ニワトリは……自分の分身を増やすタイプの豆繁殖と、遺伝子シャッフルをするための卵繁殖の、二種類の繁殖方法を持っている生き物……ってこと!?」

「なんだこのゲーム」


 養鶏業者は泣いて喜びそうな生態。


「これって、豆は豆として食べられると思う?」

「……精神的に抵抗無ければ、食べられるんじゃない?」

「つまり豆ニワトリを飼育するだけで、ヒヨコ豆と卵と鶏肉が得られます!」

「優秀。簡単な一食作れるわ」

「あれって詐欺だったけど、ゲーム的には食料ボーナスだったのでは!?」

「そんなことある?」


 実際、人口ガンガン増やしてる拠点はすごく助かると思う。


 ひとまず豆ニワトリはこのまま五羽くらいを維持して、卵と鶏肉を採ることにした。

 モンスターみたいに倒すだけで解体済みのお肉と鶏ガラになるのは助かるね。

 倒した分は植木鉢に豆を植えて待てばヒヨコが孵る。雄雌のバランスだけ気をつけないとだから、豆はわかる分は雄雌分けて保存しよう。

 この仕様だと、襲撃とかで滅びた後のリカバリーにも一役買うんじゃないかな?

 初心者に優しい豆ニワトリ。


 そうして喜んでいたら、相棒が不思議そうに言った。


「相棒、意外とサクッとニワトリシメたね? 鳥好きなのに」

「……だって、鶏肉は食べたいじゃん」


 心はちょっと痛いけど、家畜ってこういう事。

 感謝して、いただきましょう。



 * * *



 植木鉢で試験栽培してた作物もそろそろよさそう。

 キャベツはちゃんと緑色に育ってる。

 収穫して確認してみると、なんと普通のキャベツだった!


「すごい! 普通に食べられるキャベツだ!」

「いや、普通に食べられないキャベツがおかしいから」


 ニンジンも! トマトも!

 ちゃんと普通のお野菜が出来た!


「大成功では!?」

「だね。土を替えれば雨は浴びてもいいのか……」


 ってことは、畑を作るときは地面と畑を分けるように……つまり大きなプランターを埋めてるような構造を、レンガとか石とかで作ってあげて、そこに街の方の土を入れればいい。


「現状二人分だから小さくていいよね」

「いいよ。足りなくなったら増やそう」


 今日落ちるまでの作業としてはちょうどいいくらいかな。

 街のNPCの店でレンガを買ってくる。

 そろそろお金が減ってきたかな。フリマまでは節約しないとね。


 土魔法で畑にする部分の地面を少し掘り下げて固く均す。転圧機もいらんとは、魔法は土木建築に強いねぇ。

 底にレンガを並べて……縁もレンガで立ち上げて……中に余所から持ってきた土を入れる。根野菜が育つのに困らないくらいの深さの、半分埋まった花壇みたいな畑ができた。


「かわいい」

「家に合うじゃん」


 早速野菜を植えて、【水魔法】で水やりをする。

 これで野菜の自給自足ができるようになった。


「開拓始まった!」

「とっくに始まってるんだよなぁ」



 * * *



 畑といえば。

 野菜の種と一緒に買った物がもうひとつある。


 それはリンゴの木。


 別に忘れてたわけじゃなくてね、単純に木が育つのに時間がかかったってだけ。

 ……あと、ヤバい実の前例がいくつかあるから……ちょっと現実逃避して意識から外してただけ。


 リンゴの木はそこそこ大きくなって、可愛い白い花が咲いた後に実が赤く色づいていた。


「食べ頃に見えますねぇ〜」

「見た目はね」


 ……よし、覚悟を決めて……おひとつ、もぎる!



【知恵の林檎】…品質★★

ひとつ食べると深みから吸い上げた知識をひとつ得られる。

何を知るかは、食べてみないとわからない。



「……なんか面白そうな方向性で攻めてきた」

「……その系統で来たかぁー」

「食べてみていい?」

「どーぞ」


 では、実食。


 リンゴは普通に真っ赤で美味しそうな見た目をしてる。……あー、軸の周りだけ赤と黄色が少し渦巻きになってるかな?

 でもその他は大きさも普通だし、ぱっと見で見分けるのは難しそう。


 表面を軽く拭って、皮ごとガブリ。


 ……美味しい!

 甘味と酸味が程よくてジューシー。ボケてる感じもしない。普通に美味しいリンゴだ!


「……どう?」

「美味しい! …………でも一口だと特に? ひとつ食べると〜だから、1個丸ごと完食しないと駄目なんじゃないかな」

「……割と重いな」


 シャクシャクのんびり食べ進める。リンゴうめぇ。


 芯を残して完食したあたりで、目の前に小さなメッセージ画面が出た。



 ──『メタルバッファローは群のボスになると角が金色になる』



「誰だよ!!」

「何? どうした?」

「メタルバッファローは群のボスになると角が金色になるんだって!!」

「誰だよ」


 これアレだ!!

 どーでもいい雑学がランダムで出てくるガチャだ!!


「……相棒も食べてみて」

「じゃあひとつ」


 ガブリと齧るワイルドな相棒もカッコイイ、好き。


 ムッシャムッシャと食べきると……一瞬止まって目が文字列を追う動きをした直後に吹いて笑い出した。


「これゲームの読み込み中によくあるTipsじゃねーか!」

「ああ! それだー!」


 相棒が引いた知識は『ウデナガイソギンチャクはミリオンニードルイワシを好んで食べる』だった。

 誰だよ!

 どっちもどこの海にいるの!?


 予想外の面白コンテンツだったリンゴは、たくさん集めてフリマで売る事にした。

 皆の反応が楽しみだね。


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― 新着の感想 ―
Tips雑学本作って売ろう
初コメです。ちょうどウデナガイソギンチャクの飼育方法で悩んでいたところだったので助かりました。 今日のうちにムゲンゴカイを採集して、明日にでもさっそくミリオンニードルイワシを釣りに行こうと思います。
楽しいやつだ、これー!
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