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ユ:フリマ商品の準備、その1


 食材の買い出しを終えた相棒によって、ここの森の木を使ったリュートが【楽器製作】のスキルで作られた。



微睡(まどろみ)の木のリュート】…品質★

微睡(まどろみ)の木に弦を張ったリュート。

演奏を聴くと睡眠効果が出る。



「客寄せには使えない物ができたな?」

「この木! ここの木はいっつもこう!!」


 まぁこれはこれで使い道があるかもしれない。取っておこう。


 相棒が普通の木材で作り直してくれたリュートを持って、庭の適当な切り株に腰掛けて練習をする。

 しばらくやっていると【演奏】スキルを習得した。

 ……あー、一応戦闘で使えるスキルなのか。【演奏】持ちが演奏すると、聞いた味方にバフがかかるパッシブスキル。よくあるバード系の支援職みたいな事ができるらしい。


 のんびり霊達に聞かせつつの練習を続けながら、相棒の作業を見守る穏やかな時間が過ぎる。


 今日の相棒は、森で集めた枝でせっせと箒を量産している。

 フリマで売るらしい。

 オリジナルの生産品は品物の名前を自由にできる他に、生産者の名前を入れるかどうかも選べる。相棒は今までそこを読み飛ばしていたらしい。生産者が未記入になってビックリしていた。

 ちなみにプレイヤーメイドの生産品を改造すると、生産者の名前はそのままで『改変者』って項目が新しく増えて追記されるらしい。偽造防止ってことなんだろう。


「何本くらい売れると思う?」

「……さぁ?」


 見当がつかない。

 相棒はとりあえず10本作って終わりにしたようだ。

 シンプルな青みがかった白い箒。

 元が白系だから色も変えやすそうだ。


 箒が揃ったら効果が付くって判明した森の木のリュートも作り始めた。これも10本。

 スキルがあると、楽器なんて複雑な物も量産が楽そうでいいな。

 もし売れ残ったらNPCに売ってもいい。


「あとは木材をそのまま売るのと……そうだ、刻印のチャーム作ろう」


 そう言って、相棒は小さな木の板を用意し始めた。

 ……ああ、そうだ。

 リュートを弾く手を止めて声をかける。


「相棒、【刻印】の写本って売れないの?」

「えっ? ……どうかな、販売の許可は訊いてない。なんで?」

「【刻印】スキルって使えない扱いされてるから」

「ええっ!? なんで!? こんなお手軽に性能上げられるのに!」


 俺は相棒にスレや有志wikiでの共通認識を伝えた。

 要はスキルのレベル上げ練習をしようにも、本が貸出禁止なせいで作業をしながら見ることが出来ない。

 メモして持ち帰ろうにも、そもそもメモの段階で正確な形じゃなくなるから上手くいかない。

 そんな話だ。


 それを聞いた相棒はわけがわからないって顔になった。


「え? まぁフリーハンドは厳しいだろうけど身の回りの物でどうとでも……あと【製図】スキルとかは?」

「それ相棒どうやってとった?」

「えっと……ネクロマンスクラフターに転職したら覚えた」

「たぶん持ってる人少ないと思う」

「ええー」


 相棒は【転写】スキルの習得と上手いこと噛み合ったんだよな。まぁそもそも得意分野だったって事もあるだろうけど。


「だから【刻印】が載ってる本は売ったら喜ばれると思うよ。【刻印】の書き方のコツとか、【転写】の事とかも本にしたら売れるんじゃない?」

「マジ?」


 どうせ図書館で得られる情報だし、出し惜しみするような事じゃない。

 相棒は首を傾げなから図書館に出かけて、写本の販売が許可されている事を確認し、羊皮紙とインクを買って帰ってきた。


「売っていいって。『むしろ職人のために売ってください』って言われた」


 運営の切実な声が混ざってる気がするな?


 相棒は【転写】と【製本】スキルで【刻印】の本を増やした。これは20冊。

 それから【刻印】のハウツー本と【転写】のハウツー本を書いた。

 ハウツー本は相棒が全力で自分好みにまとめたから、全編にわたってデフォルメフッシーのイラストが指南役として描かれていて図解も多め。子供でも読むのに抵抗が少なそうな雰囲気に仕上がっている。


「どーだ、可愛かろう!」

「うん、可愛い。ゴツいドワーフのオッサンとかがこの本で【刻印】の勉強するのかと思うとクるものがある」

「……そんな面白いこと言われたらもっと可愛くしたくなる」

「やめてあげて」


 出来上がったハウツー本は、これも【転写】と【製本】で20冊ずつ増やされた。

 羊皮紙製だと魔導書か何かみたいだな。中身は漫画みたいなハウツー本だけど。


「こんなところかな?」

「いいんじゃない?」


 ……周りが本当に欲しいのは【死霊魔法】のハウツー本かもしれないけどな。

 不死鳥と会話したいプレイヤーのスレでは未だに習得方法が分からなくて諦めモード。

 それは俺達の切り札でもあるから、別に勧めなくていいだろう。【刻印】があれば到達するかもしれないし。会話だけなら、もうすぐ街にNPCの不死鳥が来るって話だし。


 ハウツー本にも製作者名は入れていない。

 代わりなのか、俺達の変装衣装にも刺繍したフッシーモチーフの紋章みたいなのを入れていた。


「……今回売るものはさ、広まればいいなーって物ばっかりだから、『販売品は全て複製・改変可』って板に書いて売り場に置いておこうかな」

「ハウツー本も?」

「うん。これで儲ける気無いし」


 まぁ相棒的にハウツー本はスレに書き込んだくらいの感覚か。その過程で全力で遊んだ結果、漫画みたいになっただけで。

 相棒が楽しんでるなら俺は良いよ。


 ……まぁでも、そろそろ構って欲しいかな。


「ログアウト前に、軽く散歩でも行かない?」

「あ、行く行く! どうせなら籠持って行ってキノコとか採ってもいい?」

「籠? インベントリあるのに?」

「メルヘンなキノコ狩りの雰囲気を味わいたい」

「ああ。まぁいいよ」


 籠があれば過剰に採ることも無いだろうし。


 今日の残りの時間は、二人で手を繋いでのんびり森を散歩して終わった。


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>全編にわたってデフォルメフッシーのイラストが指南役として描かれていて〜 身を隠す<全力で遊ぶ!なのねw
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