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キ:ピリオノートで世間話


 にゃんことか鳥とか期待してたらオバケを紹介されました、キーナです。

 僕がデミ・レイスだからだよね、知ってる!

 でもこれいつもの【死霊魔法】の召喚と変わんないよね!

 ついにアニマルな召喚枠と契約かと思ったけど、そんな事は無かったぜ!

 まぁ、目的の【召喚魔法】は覚えられたからいいんだけど。


 そういえば【召喚魔法】のスキルレベルは、相棒は1からだったんだけど、僕は覚えた時から15あった。

【死霊魔法】の範囲で召喚していた分の経験が、【召喚魔法】にも入るんだって。

 相棒のネビュラ呼び出しは精霊との繋がりでする物だから、あれは別扱いらしい。詠唱もしてないもんね。

 とはいえ、自分の従魔を呼び出したり送り返したりする召喚はレベル1から使えるから問題無し。

 僕らは無事に目的を達成したのであった。




 そんな感じで冒険者ギルドを出ると……ワンワン!と犬の鳴き声。そして犬にズルズルと引きずられているのは、見覚えのある豚の獣人さん。


「こーれこれこれベルン、どーしたってんだぃ……おやぁ?」

「あ」

「……どーも」


 夏の港建設現場で出会った、長〜い名前の好物を求めて芋虫狩りをした時の、ワンちゃんとそのご主人様。


「どーもどーも、お久しぶりで。あっしですよ、海で風邪引きペトガロアでさぁ」


 うんうん、ちゃんと経緯は覚えてるよ。

 名前は忘れてたけど。

 ペトガロアさんは前に見た時よりも血色が良くて健康的になっていた。うん、こじらせたりはしなかったみたいでよかった。

 相棒が嬉しそうにベルン君をワシャワシャしながら、僕らは軽く世間話。


「ピリオに戻って来たんですか?」

「ええ、サウスサーペント港の工事も落ち着いたんで。あっしはこっちで次のお仕事ですわ」


 馴染みの食堂にまた通えて嬉しい、と大きな太鼓腹を叩いて笑うペトガロアさん。(ちなみに豚の獣人的にペトガロアさんは標準体型らしい)

 そんなペトガロアさんは上機嫌で何か思いついた顔をした。


「そうだそうだ、せっかくなんでお話をひとつ。別に秘密でもなんでもねぇんで、噂のひとつにしてもらってかまわねぇんだがね。貴族街をもうひとつ、どっかに作ろうって話が出てんですわ」

「……それ本当に秘密にしなくていいやつです?」

「むしろお上からは『冒険者には積極的に広めろ』って言われてるんでさ。あっちこっちの開拓地が、貴族街欲しさにもっと発展すりゃあ願ったり叶ったりだーってなもんよ」


 まだ全然、発案されただけーみたいな話らしいんだけど。

 何度も観光に来ているお貴族様達も、いよいよ本格的にこっちの世界へ移住しようとする雰囲気になりつつあるんだって。

 そうなると、今のピリオの貴族街じゃ土地が足りなさそうで。

 それなら当然、どこかに新しい貴族街を〜って話になるよねって事。


「どこぞの開拓地に追加するのか、それともお貴族様だけが豪邸を建てられる街を新しく作るのかはわからんがよぉ。開拓地が我こそはと奮起するのは良いことだ、ってな」

「なるほど〜」


 まだ候補地を選ぶ段階ですらない話って事だね。立ち消えになるかもしれないくらいのやつ。

 でも将来的にそうなりそうだから、誘致したいプレイヤーは今から頑張れーって事なのかな。高級な街を作りたいプレイヤーもいるだろうし。


「ピリオノートは、なんだかんだ冒険者の街だからなぁ。机の上で書類越しに開拓するのが好みなお偉いさんには、ちぃっと賑やかすぎんだろうよ」

「あー、なるほど」


 ピリオの街は綺麗で明るいけど、お上品かっていうとそこそこ止まりだもんね。


「最近は門の外で戦に備えてでっかいの作ったりもしてっからなぁ」

「でっかいの?」

「あんれ、ご存知ない? 巨人がこしらえたカカシみてぇなのが、ドカーンと立ってまさぁ」


 へぇ~。あれかな、僕らが最近作ったような囮用の人工物って事かな?


 せっかくだから見てみる事にして、買い物に向かうペトガロアさんとベルン君とはそこで別れた。


「ベルン君もペトガロアさんも元気そうで良かったね」

「うん。今日は犬率が高くて良い」

「ね。運勢絶好調な日だったのかもしれない」


 そして見に行った門の外には……ものすごく分かりやすい大きなカカシが作られていた。


「え、マジでカカシだ」

「カカシだなぁ……」


 たぶん【木魔法】で生やしたんだと思うものすごく太くて丈夫そうな人っぽい形の木に、金属の鎧を着せたカカシ。

 それが街道から少し外れた所に、いくつか立っていた。


「シンプルな構造だね」

「だな。鎧以外はかなり低コスト」


 鎧も【鍛冶】スキルの練習として喜んでやる人は多そうだしね。壊れたらまた溶かして作り直せば良いわけで。


「……やっぱり、フランゴ君との決戦に向けた準備なのかな?」

「かもしれない」


 冬の決戦は、場所がどこなのか明言されてないからね。

 中心的な街のピリオノートが戦場になる可能性は充分ある。

 敵が人工物に向かうのは別にド根性さんしか知らないわけじゃないから、誰かが街の外に殴りやすい囮を用意したのかな。


「……どんな決戦になるかなぁ?」

「さぁ……とりあえず、NPCが死ななければいいよ」

「だねぇ」


 カカシを見ていると、ちょっと怖いような楽しみなような。

 複雑な気持ちだった。


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― 新着の感想 ―
フランゴくんとの別れが近づいてきてて悲しい
ピリオノートの作りが防衛戦のお手本になるの、ものすごく「はじまりの街」感強くていいな!
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