キ:冬服と幼女とお買い物
「やっぱり厚手のケープかなー」
「ケープ人気ですよー。やっぱりファンタジー感大きいですからね。こっちがフード付きでこっちがフード無しになりますー」
「かーわーいーいー」
いつもの服屋さんにて、上着を物色しております、キーナです。
相棒はそんな僕についてきて待っていてくれています。好き。
「防寒着はアクセサリー枠なんですね」
「ですね~、マントはどんな機能の物でも防寒機能ついてるんで季節で装備変えなくて楽だって人多いですよー」
「へぇ〜」
だから光学迷彩マント着てる相棒は寒くなかったんだね。
とりあえずケープをお買い上げしたんだけど……今着てる装備にも軽めのケープが着いてるから、それをどうしようかなって相談したら、お店の人がその場で調整してくれる事になった。
青い装備の上から濃いめの青色をした厚手のケープをアクセサリーとして羽織る。
隠れる形になる薄手のケープは、チラ見えする裏地みたいになってオシャンティな感じに収まった。すごい。これがゲーム内プロの仕事……!
「ありがとうございましたー」
ふふふ、新しいヒラヒラは心が躍るぜ。厨二病がうずいちゃうね。
「あったかーい」
「よかったね」
無事に防寒着も手に入れたから、グレッグさんの定位置に向かいながらのんびり買い物をする。
皆の人形を作るのに使う布とか綿とか。
そうだ、綿と言えば、ツリーに雪代わりに乗せる分も欲しいよね。
あ、この光ってるやつってもしかして電飾代わり? 買います。
そうしてクリスマスマーケットの買い物デート2回目を楽しんでいたら……街人っぽい服を着た小さな女の子が、籠を片手に道行く人に声をかけていた。
「あの……マッチいりませんか?」
(マッチ売りの少女じゃんすか)
(え……なんで?)
(さぁ?)
とはいえ、童話みたいに飢えと貧しさに苦しんでる感じは無い。
無邪気でちょっとイタズラっぽそうな、健康的でかわいい幼女が、何故かマッチを売り歩いているってだけ。
でもやっぱり元ネタの童話が頭をよぎるのか、時々プレイヤーらしき人が「よしよし、おじさんが買ってあげようね……この飴玉はサービスだよ……」って、ちょっと通報したほうがいいのか迷う感じのやりとりをしている。
(……でも、ひとりに全部売ったりはしないんだね)
(だな)
たまに「全部買ってあげるよ」って言う人もいるんだけど。そういう人には幼女は首を横に振って「おひとりさま1箱までです」って購入制限があるらしい事を言っていた。
(……買ってみようかな)
(うん、何かクエスト関係かもしれない)
幼女ちゃんの手が空いたところを見計らって声をかける。
「マッチくださいな」
「はーい、7リリーです」
嬉しそうな幼女からマッチを購入。僕と相棒、それぞれ1箱ずつ。
……うん、見た目は普通のマッチだけど。
【マッチ】…品質?
マッチです。
……はい、マッチです。
え、表記が怪しすぎる! なにこのマッチ!?
「……このマッチなあに?」
「とくべつなマッチです!」
「どう特別なの?」
「とくべつな火がつけられます。とくべつなものにつかってください」
「はーい」
(特別だそうです)
(はい)
何もわからなかった。
えー、なんだろう? 気になるけど……すぐにどうこうするものじゃなさそうかな?
特別なモノに使えって言ってたからね……特別そうなモノが出てきたら使ってみよう。
* * *
「……って事がありまして」
「ほう……気になるな」
グレッグさんの所で、マッチ売りの幼女の話をするとグレッグさんも興味深そうに「後で買ってみるか……」って頷いていた。
って事は、今日から出没し始めた幼女なのかな? 今までも出没してたならグレッグさんは知ってそうだし。
そんなグレッグさんの露店は、いつも通りポーションとか小物とかが並んでいる。
ついでにポーションを補充して……相棒はさっそくグレッグさんに袋に入った素材を渡して、解毒剤の製作を依頼していた。
「……名前にツッコミどころしかない素材だな?」
「「ですよね」」
イチコロキノコとデスポテトだからね。直球がすぎる。
依頼はすんなり受けてもらえた。料金は依頼品が完成してからの支払いなんだって。よろしくお願いします。
「……あと、こんなの手に入ったんですがどうですか?」
「ん?」
袋入りのツーパンベアの爪を渡す相棒。
グレッグさんは袋の中身をそっと覗き見て……思いっきり吹き出した。
「マジか??」
「……マジです」
「グレッグさん欲しい?」
「欲しがるクランメンバーがいるから買い取らせてもらおう」
「「どうぞどうぞ」」
確か前のワンパンベアの素材を使ってたのは、手甲の人だったよね。
その人もツーパンになるのかな……ちょっと楽しみかもしれない。




