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ユ:ゴーレム使いの腐れ縁


 大扉の脇の隠し扉から出た俺達を待ち構えていたのは……煌々と輝く溶岩がそこかしこに流れる、広大な地下空洞。


 そして……扉の前の広いスペースに設置された巨大なゴーレムだった。


「「わぁ……」」


 思わずキーナとハモった声が漏れる。


 ボディビルダーのようなポーズで固定されたゴーレムは、冷えて固まった溶岩で出来た大きなステージのような物の上に堂々と立っていて、ダメ押しのように四方八方から向けられたスポットライトのような光が当たっていた。


「……スポットライトなんてあるんですか?」

「あれは光魔法の魔道具である! 光の当たった物に結界を張る代物だ! 美術品の展示にとの売り文句で販売されていたのを買って試しに置いてみたが、中々に良いな!」


 ド根性ブラザーさんは、扉の外にゴーレム型のデコイを置いて、そこにゴーレム用パーツやその他魔道具等の試作品を設置し、どれくらい狙われやすいか、どれくらい強度があるのかをテストしているらしい。

 今のゴーレムは肩当てや背中に凶悪な棘のついた世紀末な見た目の鎧を装着していた。

 ……その姿でボディビルダーのポーズを決めたゴーレムがライトアップされているのは、なんというか、派手だな。 


 あのデコイでモンスターを扉から離しつつゴーレムで殴り、釣られず扉へ向かったモンスターは扉周りに仕込んだトラップで削るという戦法を取っている、とド根性ブラザーさんは説明してくれた。

 なるほど、扉前の天井には大量の巨大な岩がすぐに落とせる状態で設置されている。アレを落として敵を潰しつつ扉を塞ぐのか。 


「今のデコイは11代目である!」

「……結構壊れてますね」

「うむ! 頻繁にやってきては壊すやつがいるのでな!」


 ……そんな話をしていると、俺の【感知】に1体、接近してくる存在が引っかかった。

 ド根性ブラザーさんも気付いたんだろう、俺達を近くの岩陰に誘導する。


 ……少しして、溶岩の中から上がってきたのは、ゴーレムと同じくらい大きな燃え盛るトカゲ。



 ラージサラマンダー・リベンジ Lv42



 ……リベンジ?

 見覚えのある表記に俺達が疑問符を浮かべていると、一隣の巨体が愉快そうに笑った。


「ハッハッハ! また戻って来たか!」

「……何回も来てるんですか?」

「うむ! 散々デコイを破壊するのはあやつよ!」


 アレかぁー。


 トカゲはポージングしているデコイをひと目見るなり、イラッとしたかのように目元をひくつかせて吠えた。



 ──シャラァアアアアッ!!



 そして細長い体でトゲが刺さるのも構わずデコイに巻き付き、大きく口を開いてデコイに噛み付いた。


 ……アレだけの巨体が乗ってるのにデコイビクともしないな。

 相当頑丈に作ってあるんだろう。確かにモンスターのうろつく拠点の外に置くなら強度は欲しい。


 ド根性ブラザーさんは、自分が搭乗するゴーレムを呼び出して乗り込み、ズシンズシンとラージサラマンダーの方へと向かった。

 その姿を見たラージサラマンダーは、アグアグと噛んでいたデコイから口を離し、見つけた!と言わんばかりに威嚇する。


 ──シャララァアアアアッ!!


「フッハッハッハ! 久しいなライバルよ! また熱く激しく拳を交わそうではないか!!」


 ──キシャアアアアアッ!!



 ……いや、気のせいか? 嬉しそうなド根性ブラザーさんとは反対に、ラージサラマンダーはめちゃくちゃ不機嫌そうに見えるんだが?


「……ライバルなの?」

「コヤツとは入植当初からの腐れ縁! 互いに切磋琢磨する間柄である!」


 ──シャゲェエエエッ!!


「先日のハロウィンパレードでも宣戦布告を受けた! 我々は永遠の好敵手と言っても過言ではない!」


 ──キシャーッ! キシャシャーッ!!


(……相棒、僕には夕焼けの河原でクロスカウンターして笑い合うような雰囲気には見えないんだけど?)

(俺にも見えない)

(だよね?)


 ド根性ブラザーさんがポジティブ発言をする度に『ちげーよ!』みたいな雰囲気で吠え散らかしてるんだよなぁ……

 というか、ド根性ブラザーさんの言う通りに愉快なライバルムーブしてるなら、俺に自動で言葉が聞こえててもおかしくないと思う。


「……サラマンダーちゃん、ガチギレしてない?」

「コヤツはいわゆるツンデレなのである!」


 ──ギシャアアアアアッ!!


 ツンデレ扱いされたラージサラマンダーが、ついに怒りが頂点に達したようにド根性ブラザーさんの乗ったゴーレムに飛びかかった。


 慣れた動きでそれを受け止めるド根性ブラザーさん。


 流れるように始まった殴り合いを、俺達は呆然と眺めるしかない。


「……加勢します?」

「手出し無用!!」

「アッハイ」


 ええ……どうしたらいいんだ?

 俺が困っていると、キーナが呆れたような声色の念話を飛ばしてきた。


(……ド根性さんって、『身内からKY判定されてる』みたいなこと言ってたけど……今やっとそれが分かった気がする)

(……そんな事言ってたっけ)

(うん。めっちゃ陽気できさくだからどこがKYなんだろうって思ってたけど、こういう所なのかなって)

(あー……)


 人当たりが良いだけで、俺達放ったらかしで自分の好きな事始めるあたり、この人もマイペース極めてるんだな……


 俺達はしばらく特撮みたいな戦闘を眺めていたが……殴り合いが長期戦の雰囲気を醸し出してきたあたりで、一声かけて撤収した。


 ……なお、11代目デコイは両者の殴り合いに巻き込まれて砕け散り、その役目を終えていた。


(……デコイが壊れるのはサラマンダーだけのせいじゃないな)

(半分くらいは自分で壊してると思う)


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― 新着の感想 ―
たぶん脳筋がギミック無視してるからこんな事に
ラージサラマンダーちゃん、ちょっとだけ哀れに思った。
ラージサラマンダー「元々ココはワシの住処だったんじゃ!!それをこの筋肉ダルマが勝手に奪いおってェ!!!」 とかかもしれない関係性
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