ユ:こういう時の斥候頼り
集めたアイテムは譲渡なのかとか……
クエスト報酬は具体的になんなのかとか……
一応確認しておきたかったんだが、ツーパンベアの衝撃で全部飛んだ。
ツーパン?
ワンパンからツーパンに?
……弱くなってないか?
とはいえ、『お二人に頼みたい』って言ったからには、俺達の拠点があるフィールドに出るモンスターって事で間違いはないと思う。
とりあえず俺達は、リスト片手に拠点へ帰ってきた。
集めるアイテムの量は大した事はない。
MMOのアイテム集めなんて、100個だの200個だのなんてザラだから、イージーモードな方だ。
ただ、見たことの無いモンスターの素材は、それを探す所から始めないといけないから、そこだけ難易度が少し高いか。
「探すかぁー、ツーパンベア」
「だねぇ〜」
俺の呟きに同意しながら、相棒はシステムウィンドウを開いて何かやっている。
「……何してるの?」
「同盟の皆に贈り物の神様のこと教えようと思って」
「あぁ」
俺も同盟チャットを開いて、書き込みを確認する。
キーナ:今日ピリオの露店広場に行ったら、サンタポジションの贈り物の神様に会いました
夾竹桃:はいー!?
キーナ:見る人と同じ種族に見えるタイプのNPCみたいで、僕にはオバケに見えたよ
キーナ:だから特殊な種族の人なら一発でわかるんじゃないかな
ラウラ・アステロイド:えっ!?えっと、あの、えぇっ!?
キーナ:プレゼント集めのお手伝いクエストを受けられたから、やりたい人は探してみるといいかも
ド根性ブラザー:なるほど!!情報感謝する!!
カステラソムリエ:いや待ってくれ
カステラソムリエ:そこの夫婦はいつの間に幽霊になったんだ???
キーナ:昨日!
ユーレイ:種族名はデミ・レイスです。俺はなってません。
夾竹桃:つまりキーナさんが幽霊で、ユーレイさんが幽霊じゃないってことー??
カステラソムリエ:紛らわしいな!
……まぁこうなるよな
カステラさんが神様の件を掲示板に上げていいか訊いてきたので、お好きにどうぞと返事を返してチャットを閉じる。
じゃあ、まずは斥候を飛ばそう。
「ベロニカ、近くの島にツーパンベアってのがいないか見てきてほしい」
「……ツーパンベアってどんなモンスター?」
「……わからん」
「ちょっと」
「たぶん熊。ワンパンベアと似て非なるものだと思う」
「……つまりこの島にいない熊を探せばいいのね」
うちの斥候が優秀で助かる。
飛び立っていったベロニカを見送って、その間に他のアイテムの準備をしておく事にする。
「ストロングハートベリーは必要量少ないな」
「籠に山盛り採れてるんだけどね。……これ、ジャムの他に結晶にもしてみたいな」
「ああ、いいんじゃない。精神上がる結晶になりそうだ」
畑のストロングハートベリーと満ち夢ちトマトを収穫。
鹿の角と狐の毛皮はドロップアイテムだから、熊を狩りに行くついででいいな。
トマトをそれなりに収穫したら、それを結晶にしないとな。
「クロちゃーん、お仕事お願ーい」
「今日はカリッとジューシーに焼き上げた鶏肉にまっしぐらチューブを和えたのが食べたいニャア」
「うぅ~ん、クロちゃんってばグルメにゃんこ!」
「普通に腹が減る」
しょうがない、ベロニカを待ちがてら料理をすることにした。
クロのリクエストに応えつつ……ネビュラやシロや籠の中のオバケ達も気になるみたいだから同じメニューを作って出す。
CMに出来そうなくらいとろけた表情で食べる面々を見て癒されていると……キーナがおもむろに口を開いた。
「ねぇクロちゃん……まっしぐらチューブって結晶にしたらどうなるのかな?」
反応は劇的だった。
宇宙を背負ったような顔をしたクロは、次の瞬間キーナに縋り付いて必死に悲痛な想いを訴え始めた。
「いやニャァ! いやニャアアア!! オヤツを何個もまとめて結晶にしちゃうだなんてイヤなのニャアアアアア! お仕事いっぱいするからそれだけは! それだけはご勘弁下さいなのニャア〜!!」
「うん、ごめん、わかったしない、しないから。大丈夫、ちょっと思いつきを言ってみただけだよ、やらなくていいから、ね」
……クロは100パーセント食い気で動いてるんだな。
そこへ戻って来たベロニカが呆れた声で言う。
「……なにしてんのよ?」
「クロがオヤツの危機で本気出してる」
「本気出す所そこなわけ!?」
まぁそれはいい。
ベロニカから捜索の報告を聞く。
「それっぽいのはいたわよ。南側に二つ飛んだ島だったわ」
「オッケー」
とりあえず目星はついた。
あてもなく探し回るのと比べれば効率は段違いだ。
ベロニカにも御褒美メニューを出してから、俺達は出発準備を整え始めた。




