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ユ:クリスマス色の露店広場


「相棒! 相棒! クリスマスマーケット一緒に行こう!!」

「はいはい、何を見つけたのかから話してくれる?」


 出かけたと思ったらあっという間に戻って来た相棒と、相変わらず圧縮言語なシロから話を聞く。

 ……なるほど、露店がクリスマスグッズまみれなのか。

 それはツリーの飾りを探すのに良さそうだ。


「じゃあ行くかー」

「やったー!」


 転移オーブからピリオへ向かう。

 ……おお、確かに冬景色になってるな。

 そしてサンタっぽい服の住人が多い。……兵士は兜の上からサンタ帽被ってるのか……


 露店広場も、動画で見たヨーロッパのクリスマスみたいな雰囲気がある。電飾みたいな魔道具はわざわざ作ったんだろうか。


 テンション高めでゴキゲンな相棒と手を繋いで、露店をゆっくりと見て回る。


 ……時々、変装していない状態で露店広場デートしているが。ラリーストライクの大会の後から、生暖かい視線が飛んでくるようになった気がする。変に絡まれるよりはよっぽどいいけど。


「綺麗な丸い玉のオーナメントが多いねぇ」

「定番だからな」


 プラスチックや発泡スチロールがない世界観だから、飾りはそこそこの重さがある。鱗や貝の素材を使っている物が軽くて綺麗で人気があるようだ。


「うちの拠点で採れた軽くて綺麗な素材はいかがですかー? そこの職人さーん! 海の中から産地直送! 鱗も貝殻も色々取り揃えてますよー!」


 あんな感じで素材を売っている店もある。


 俺はとりあえず、シンプルに丸い飾りと、キャンディケインの形の飾りを買った。


「相棒は……枝見てるのか」

「うん」


 成長した形のイラスト付きで枝が何種類か並んでいる。

 ……ヤシの木とか何処からもってきたんだ。そしてフェスティバルツリーにするつもりなのか。

 だがキーナの琴線に触れる枝は無かったらしく、店員に質問を始めた。


「ダンシング柳の枝って無いですか?」


 あれか。

 あれが欲しかったのか。


「あー、うちは扱って無いですねー」

「そっかー」

「あの枝売ってる人、あんまり露店来ないんですよ」

「んー、残念」


 のんびりと商品を眺めながら露店を歩く。

 時々食べ物の露店が混ざっているから、チュロスのような物を買った。……うん、美味い。普通にチュロスだこれ。


 食べながら歩いていると、今度はやんややんやと言い合うような声が聞こえてきた。


「えーっとですね……この色を元に、もう少し赤色を濃くつややかなピジョンブラッド色にしてほしくて……つまりこのスライムそっくりにしてほしいんですよ。で、こっちの方はこのスライムっぽいピスタチオグリーンに透明感を……」

「待ってくれ注文が細かすぎる! オーダーメイドでもかなり手間かかりそうだから、お高くなりますよお客さん!」

「もちろんです! この素晴らしきスライム達を再現してもらうという大仕事なんですから金に糸目はつけませんよ! 金額は相場の10倍……いえ100倍出してもかまいません!!」

「そーれを早く言ってくださいよお得意サマァー!! 本日の露店は閉店でーす! 工房へご案内ー!」

「わーい!」


 荷車に大量のスライムを乗せて引いている客が、揉み手の職人と去っていった。

 オーダーメイドとかもあるんだな。


 キーナが露店をチラ見して戻って来るまでの間でチラ見した『ツリーのプレゼントを考えるスレ』によれば、ツリーで貰えるプレゼントは、そこまでレア物は出ないのではないかという予想が立っていた。

 というのも、フェスティバルツリーの準備について書かれているページには『ツリーはプレゼントが届くと同時に消滅するので、高価なアイテムやレアアイテムを飾りにする場合は注意してね!』みたいな事が添えられているからだ。

 検証勢は、希少レアに希少レアで返すようなモノではない可能性が高いと見ている。

 βテストに冬イベントは無かったから、フェスティバルツリー関係は全プレイヤーが初見のイベントだ。だからスレはそこそこ賑わっていた。


 予想だけで確かな情報が無いなら、俺はレアアイテムは使わない。普通にイベントとして楽しんで、もし次回があれば、情報を元に考える。

 ……この犬の人形いいな、飾るか。


 そうしてのんびり買い物を楽しんでいると……キーナがピタリと足を止めた。


「どうした?」

「んー……あの子」


 視線を辿る……と、そこには黒髪の若い女性がいた。

 ミニスカのサンタコスって感じの服を着て、サンタっぽい白い袋を背負い、興味深そうな顔をしながら露店の商品を見て回っている。


 ……うん、普通のサンタ服の女性だな? 何がそんなに気になったんだ?


 と、キーナがその女性に近付いて行った。


「あのー……」


 声をかけて振り向いた女性に、何か耳打ちをしている。

 と、女性が驚いた顔をして、直後におやって感じの表情になった。


(……なんて言ったの?)

(え? 『そんな分かりやすいオバケの見た目で街をうろうろして大丈夫?』って)



 …………は?



 オバケ?

 ……目を凝らしても、俺には普通のヒューマンの女性にしか見えない。


 ……待て、俺にはヒューマンに見えて、相棒にはオバケに見える?

 そういう事か?


 追加で近付いた俺が気付いた事を察したのか、謎の女性は俺と相棒を手招きして露店広場の外へと誘った。


(……えーっと、どうしよう?)

(……まぁ、行くしかないんじゃないか?)


 おそらく自分と同じ種族に見えるんだろうNPCが、どんな話をするんだろうな?


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― 新着の感想 ―
奥さん、急にホラー始めるじゃん。
デミレイス仲間だろうか
種族が変わったことで見えてる世界も変わってしまった感じかな?
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