キ:冬イベントの準備イベント
ログインしました。
死の海の溶けてる知識サルベージ作戦が不発に終わって、翌日のログインです。
まぁ知恵の林檎がランダムサルベージ機能みたいな物だからいいんだけどね。
試してみたかっただけだし、別にそこまで急いで無詠唱が必要なわけじゃない。素直にチェーンクエストのNPCを待つ事にする。
死の海で限界になって拠点でリスポーンすると、肉体状態で復活していた。
その後戻って来た相棒と一緒に、デミ・レイスの霊体と肉体の切り替えのクールタイムを確認。大体1分かからないくらいだった。パッパッパッと切り替えを連打するのを防ぐ程度って感じかな。
それよりデスペナルティが加算されるのが辛いね。
普通のデスペナは経験値減少と、一定時間取得経験値半減なんだけど。
当然2回死んでる扱いになると経験値は2回分減るし、一定時間の取得経験値の減少は四分の一になってる。
死に戻るのに猶予があるからって、ゾンビアタックは出来ない種族だよ。まぁゾンビじゃなくて、オバケだしね。
そんな感じで、秋のハロウィンパレードからずーっと続いてたなんやかんやも消化しきった後の今日。
公式から、冬イベントの準備的なのが出ました。
「『フェスティバルツリーの準備をしよう!』……だって」
「イメージイラストはどう見てもクリスマスツリーだな」
本国では、毎年冬の年越し直前に、贈り物の神様のお祭りがあるらしい。
そのお祭りでは、フェスティバルツリーと呼ばれる木を用意して飾り付けをすると、祭りの日の夜、その木の傍らに神様からの贈り物が授けられるのだとか。
「かなりツリーとプレゼントに特化したイベントになってる」
「それな」
なお、そのお祭りは、神様からのプレゼントを楽しみにする他、仲の良い相手とプレゼントを贈り合って楽しむお祭りでもあるらしい。
イベントならではの贈り物と言えば、お菓子または靴下、というラインナップなのだとか。
「贈り物の神様はー……赤と白のモコモコ衣装を着て、プレゼントの入った大きな袋を持っているー!」
「サンタだなぁ」
「なお、贈り物の神様は、見る人によって姿が変わるらしい……」
「へぇー」
そんな感じの内容が、フェスティバルツリーを飾るお祭りの詳細として書かれていた。
「……もしかして、贈り物の神様についての絵本とか図書館にあったりするかな?」
「あー、あるかもしれない」
もしあったら、ちょっと読んでみたいかも。
「で、イベント準備の内容はー……」
まず、プレイヤー1人につきひとつずつ、『フェスティバルテラコッタ』が配布されます。
見た目はレンガの煙突みたいな形をしている四角い植木鉢。
その植木鉢に好きな木の枝を植えると、みるみる内にツリーとして丁度いい大きさにまで育って、フェスティバルツリーとなる。
そうしたら、そのツリーを拠点の好きな所に飾って、好きな飾り付けをすればオッケー。
「『飾りに使ったモノによって、プレゼントの内容が変わるかも!?』だって」
「それ検証勢が発狂するやつな」
強く生きてほしい。
「それにしても……モミの木じゃなくてもいいのか……」
「まぁ……南国みたいな拠点だと、針葉樹が似合わないかもしれないし?」
自由なゲームらしく、ツリーも自由に選んでいいってことなんじゃないかな。
フェスティバルテラコッタは、ベロニカちゃんが配達されたのを受け取ってくれていた。
もう土は入っているから、枝を植えるだけで大丈夫。
庭先で、植木鉢を前に2人で考える。
「相棒のは何の木にする?」
「んー……俺は拠点周りの木でいいかな」
微睡の木だね。
サクッと枝をひとつ拾ってきて植えると、ニュニュニュニュニュニュッと枝が育って、相棒の身長くらいの大きさになった。
「おー、はやーい」
「相変わらずグルグルしてるなぁ」
あとはこれに飾り付けをすればオッケーってわけだね!
ツリーを見ていると、相棒が僕の方を向いて言った。
「相棒のはどうする?」
「んー、どうしよっかな」
木によって飾りたい物も変わりそうだから、早めに決めた方がいいよねぇ。
「なんかこう……音に合わせて踊る木とか無いかなぁ」
「オモチャかな?」
せっかくフェスティバルなんだから、楽しい方がいいじゃんすか。
「……とりあえず、ピリオの露店でも見てこようかな。何か売ってるかもしれないし」
「そっか」
「ついでに図書館も見てくるけど、相棒はどうする?」
「いってらっしゃい」
「だと思った」
まぁしょうがないね。
シロちゃん連れてお出かけしてこよーっと。
* * *
というわけで、変装してない姿でやって来たピリオノートの露天広場は……いつもと雰囲気が変わっていた。
まず雪が降っている。
うっすらと飾り付け程度に積もっているのは、まだ冬の始まりだからなのか、それともピリオはこの程度しか降らないのか。
なんにしても、雰囲気重視の積もり方をしていて、冬だー!って感じがすごくする街並みになっていた。
そして……多分NPCだと思うんだけど、街の住人っぽい人達でサンタ風の防寒着を着ているヒトがめっちゃ増えている。
街のあちこちに立ってる兵士さんとか、鎧の上からサンタ風のマント着て、兜の上にサンタ帽被ってるよ。カワイイね。
さらに露天広場の店が、小屋みたいな屋根付きの露天が立ち並んでいて、クリスマスっぽい雰囲気に飾られている。
「クリスマスマーケットかな?」
「ジュリリ」
少し品物を見てみると、いつもの武器防具アイテムの他に……クリスマスっぽいオーナメントとか色んな木の枝とかがいっぱい。
……え、早くない?
イベント準備の発表が昼間で、僕らは夜のログイン。
リアル半日の間で、露天の人達はクリスマスイベント用の品物を用意して露天に並べたの? 早くない?
「……これが、商機ってやつなのかな?」
「ジュリジュリ」
流行りに乗っかっていく売り手って、スピード勝負なんだなぁ〜
……とりあえず、こんなにウィンドウショッピングのしがいがありそうな露天広場は、ぜひともデートしたいです僕。
「……よし、帰ろう」
「ジュリッ!?」
相棒をデートにお誘いしたい!
今日は気が乗らないなら明日でもいい!
一緒にお買い物したい!
若干呆然としたシロちゃんを連れて、僕はいそいそと拠点へUターンしたのであった。




