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キ:じゃじゃ馬ドルンレースヒェン

閲覧、ブクマ、評価、感想、リアクション、いつもありがとうございます。

400話投稿と同じタイミングで総合評価が40000を超えました。嬉しいです。

いつもありがとうございます。


 おはようございます、キーナです。

 フルダイブVR睡眠は寝起きがスッキリ爽やかで快適で素晴らしいね。


 ……あれ? 僕、いつ寝たっけ?


 記憶を辿ってもベッドに入った覚えがございません。

 おかしいな???


 確か……楽しいパズルがあると思って治安の悪い所に行ったら、そこのトップ2が唐突にラブコメぶちかましてくれてありがとうございますって思ったものの、パズルは結局最後の一手だけ残しておきました!みたいな状態でちょっと物足りなかったのは覚えてるんだけど。



 起き上がって周りを見る。


 ……ここはどこだい?

 緑と黄緑色のグラデーションになっている丸い部屋みたいな場所に僕はいた。

 壁は綺麗なグラデーションなんだけど、ところどころに葉脈みたいなモノが透けて見えて……あぁ、そうだ。質感は花びらに似てるかな?


 そう思った途端に、視界の端でずるりと動く細長い物。


 いつの間にか、部屋の中は棘だらけの蔦が、何本も何本も僕を取り囲むみたいに伸びて来ていた。



 ……そうだ、思い出した!

 僕、封印されし謎の物体から出て来たアレに取っ捕まりましたね!



 って事は、ここはパクリンチョされた植物の中?

 ……いやいや、それにしては空間のサイズが明らかにおかしい。こんなに大きくなかったはずだよ。

 それに衝撃の被捕食なんて事件があったのに、どうして僕は寝ていたのさ。


 寝て……そうだ、前にもこんな事があったね。

 眠って、おかしな場所で目覚めた事が。

 あの時は部屋の形こそ寝室のままだったけど、色味が白黒反転していて変だった。


 蔦から逃げるように後ずさりながら、僕はインベントリから目当てのモノを取り出した。


「ペタちゃん」


 魔術師団長が悪夢を見る呪いをかけられていると知ってから、いつ必要になるかわからないと思って持ち歩くようにしていた夢守の卵。


 取り出すと、すぐに卵はペタちゃんの姿に変わった。


「ペタちゃんが出てくるって事は、ここは夢の中なんだね」

「肯定。ここは捕食者が獲物の能力を啜り喰らうための夢領域。マスターにとって不利となる」


 そりゃモグモグされる側にとっては悪夢だわ。

 ……って事は、この蔦に捕まるとマズいって事かな?


「ペタちゃん、周りの蔦を僕に触れさせないで」

「受諾」


 ペタちゃんの尻尾の先端が、三叉の刃物みたいになって近寄る蔦を切り払う。



 ドレインソーン(夢) Lv60



 うぞうぞと無数に沸き続ける蔦。

 ペタちゃん任せにしてる場合じゃないかも、僕も攻撃しよう……ってか、封印解除の邪魔だからって、杖をインベントリにしまいっぱなしだった。

 ……と、思って杖を出そうとしても、反応しない。


「んん? 杖が取り出せない?」

「警告。夢を扱えるモノは夢のルールを決められる。この夢は、収納している物品を取り出す事が禁止されている」

「……ペタちゃんの卵は出せたのに?」

「ペタちゃんは夢魔。夢魔は夢のルールに縛られない」


 ふむ、あの蔦モンスターはひたすら自分が有利な夢に僕らを引きずり込んで能力をモグモグしようとするって事かな。

 能力モグモグがよくわかんないけど、なかなかやり手のモンスターな感じ。

 いやでも……夢領域があるって事は、プレイヤーが抵抗する余地なのかも? デバフかかるから、よっぽどレベル高いか夢魔がいるかじゃないと厳しそうだけど。


 まぁ、僕は杖が無くても幸いペタちゃんがいるし、魔法で戦う事も出来るしね。


「……ちなみにペタちゃん。僕がこの夢から出るにはどうしたらいいかな?」

「夢主を夢領域で撃破する事。そうすれば、夢領域が崩壊し現実で目覚める」

「だよね」


 その仕様は変わらないわけだ。

 じゃあそうしてやりましょうじゃないの!


「ペタちゃん。僕に攻撃が来ない事を優先しつつ、夢主を倒して」

「受諾。夢領域における夢主の存在を複数確認。殲滅を開始」


 ペタちゃんの輪郭がゆらりと揺れて、次の瞬間壁に大きく映った影みたいに大きく薄くなった黒い体が、僕を包みながら広範囲を薙ぎ払う。


 僕が紙装甲すぎて防衛がメインになっちゃうかな?

 だったら攻撃に加勢しようねぇ!


「【サモンネクロマンス:フッシー】【煉獄の炎】!」


 杖が無いから、手の先から展開する魔法陣から、召喚したフッシーが飛び出してくる。


「フーハッハッハー! なるほど夢ならば森が燃える心配もあるまいな! くらうがよいわぁ!!」


 緑の空間に、白い炎が燃え広がった。


 狭い空間だから、蔦に逃げ場は無い。

 デバフで弱体化していても火は苦手なんだろうね、蔦は腰が引けたような動きをする。


 純白に焼かれる円形の空間。

 焼かれ、切り裂かれていく棘だらけの植物の群れ。

 花弁よりも儚く舞い上がる、白い火の粉と蔓草の破片。


 最初の頃はMP消費がキツかったフッシーの炎だけど、今は余裕を持ってイイ感じの威力をだしてそれなりの範囲を焼ける。


「さっさと片付けて早く起きよう」


 捕まってる状態なわけだから、相棒が助けてくれるとは思うけど。

 でも、おとなしく能力モグモグされたらアッチがピンチになりそうだし。それに暇そうでイヤだ。


「助けに来てくれた愛しの王子様(旦那様)に起こしてもらうのも好みだけどねー」


 憧れないわけじゃないけど、退屈はノーセンキュー。

 それにほら、僕はお姫様じゃなくて魔女だから。


「それなら自力で起きて脱出して、御褒美に甘やかしてもらう方がいいや」


 対抗手段を持ってて良かった。

 相手にとっては運の尽き。

 アイテムが使えないから、MPだけ気をつけよう。


 夢魔と不死鳥をお供に連れて。

 僕は茨みたいな蔦を殲滅するべく一歩踏み出した。


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― 新着の感想 ―
キーナはむしろ王子様を迎えにいくくらいが丁度いい
キーナはただ待つだけのヒロインじゃない。カッコイイ!
待ってましたこの展開!!そしてペタちゃん活躍回!!! これだからこの作品を追い続けてしまう! 書き続けてくださってありがとうございます! 400話おめでとうございます! 今後も楽しみにしております!
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