キ:無事に終わりましたよの報告
昨日の後書き、ちょっと言葉足らずだったかと思い追記しました。
※7/20 称号を追加。
そんなこんなで、パレードで出会った『魂呼びの魔女』さんに端を発したクエストは無事にクリアした。
聖女さんの再会が終わった後で、魔女の使いのカボチャちゃんは、たぶん魔女さんからのクエスト報酬っぽいアイテムを僕に手渡してくれたんだけど……
【ガリスメリアの聖印】…ユニークアイテム
かつてガリスメリア大霊廟に飾られていた聖印のレリーフ。
所持していると【死霊魔法】使用時に微量のボーナスが入る。
……これは、僕がもらうべき物じゃないと思うなぁ。
大霊廟は結局ダンジョンのままだから、お墓参りなんて来れないし。
御遺族がお墓代わりにお参りして追悼するために使った方がいいんじゃない?
そう思ったから、その場で泣き止んだ聖女さんに渡した。
「えっ……で、でも、これは『魂呼びの魔女』様から『鎮魂の魔女』様への報酬なのでは?」
「貰った僕が、遺族の人達に使って欲しいだけだから」
「……ぁ……ありがとうございます……っ」
──称号『聖女の恩人』を取得しました。
受け取った聖女さんはまた泣き出しちゃった。
魔女の使いのカボチャちゃんもなんだかおろおろしていた。
ごめんよ。でもこっちの方がお話として綺麗だと思うんだ。
他のプレイヤーさん達には『ユニークアイテムをNPCに渡すの!?』って凄い顔されたけどね。
逆にユニークアイテムって事は、『ガリスメリアの聖印』はこの一個しか無いって事じゃんすか。
ジグソーパズルを綺麗に組み上げて、最後の1ピースをご褒美に上げますってされたら、僕は嵌めちゃうよ。
今回の大霊廟召喚に参加してくれた人達には、『後日お礼をお送りさせていただきます』って聖女さんが言ってたから、何かしらの報酬は出るのかな。
泣き崩れて死体みたいになってた親衛隊の人達も、これで満足できるといいんだけどね。
今度は聖女さんをピリオに送り届けないといけないんだから、泣いてないで頑張って。
他の参加メンバー達は、それぞれ大満足って感じで解散した。
麗嬢騎士団はお嬢様が親衛隊に負けず劣らずボロ泣きしてるのを慰めながら帰還。
グリードジャンキーとモロキュウ冒険団は、大霊廟ダンジョンが気になるみたいでそのまま突撃。
検証勢は時々飛んで来るコウモリをウザがりながら、まだなんかアカデミックな話し合いをスレを開きながらしている。コウモリが邪魔なら帰ればいいのに。
同盟メンバーはもっとアッサリしていて、『じゃあねー、楽しかったよ、お疲れー』って感じにサラッと解散した。
うんうん、このくらいが気楽でいいよね。
そして僕らは、風切羽で拠点へ帰還。
ジャック達を拠点に残して、そのまま城へ向かった。
聖女さんから話は行くだろうけど、色々伝えておきたいことがあるからね。
いつも通り対応してくれた魔術師団長さんに、事の顛末と、気になった事……『禁足地に、死霊使いが出入りしていたかもしれない事』を伝える。
「……なるほど、報告感謝する。お前たちのおかげで本国で違法行為に手を染めていた死霊術士は一斉検挙となったのだが……まだ逃走を続けている輩がいるからな。そいつらを捕まえるのに使えるかもしれん」
あー、まぁ一網打尽とはいかないよね。
何人くらいいるのか知らないけども。
「ところで……霊廟の奥にいたレイスの名をもう一度頼む」
「……『不死爵・オーキモンド』ですね」
「ふむ……霊廟で事件を起こしたのは『死霊術師シャルマディ』……偽名だったか? となれば、オーキモンドの方が本名の可能性が高そうだな……合わせて調べさせるとしよう。身元が分かれば、足取りや本拠地に繋がる情報が得られるかもしれん」
……なんだろう。本国の死霊使いってフレーバー情報かと思ってたんだけど、結構な頻度で話に出てくるんだよね。
その内、ガッツリ関わってくるのかなぁ。
エフォはゲーマスAIがフレーバーから膨らませたりもしてそうだから、可能性はあるのかも。
伝えるべきことを全部伝え終えると、魔術師団長さんは「うむ」とひとつ頷いた。
「被害者の魂を解放し、他の危険なモノは中に封じられたまま……現状では最高の結果と言えるだろう。こちらで現地の様子を確認後、本国へ報告を上げる。よくやってくれた」
お褒めの言葉でひと安心。
魔術師団長さんの、珍しい爽やか笑顔いただきましたー。
「今回の功績は、おそらく本国から褒賞が出るだろう。何か希望はあるか?」
「いえ特に……」
「希望が無い場合、お前たちは爵位を賜る可能性が高いぞ?」
「エッ」
「……うわぁ」
「それが嫌なら何か希望を出しておけ」
わーお! ちゃんと事前に警告してくれてありがとうございます!!
えー、でも爵位って事は……つまり王様からの御褒美でしょ?
うっかりお金でって言ったら天文学的な数字で返ってきそうだから、それは怖い。
(……相棒は、何か欲しい物ある?)
(特に無い。相棒の受けたクエストなんだから、相棒が決めなー)
……ってなったら、僕の欲しい物なんてこれしかない。
「じゃあ面白い物ください。責任が伴わないやつで」
「……よくわからん希望に絶妙な釘を刺しつつ出してきたな。良いだろう、そのように添えておく」
苦笑いを浮かべた魔術師団長さんに見送られて、お城への報告も無事終了。
なんだか疲れたから、今日はここまで。
拠点に戻って、寝室のベッドでログアウト。
色々済ませてリアルでもベッドに潜り込み……雄夜にべったりしがみつくみたいにくっついた。
「なんだなんだ、どうした?」
「今日はダンジョンが怖かったからくっついて寝る」
「……しょうがないなぁ」
あー……雄夜にギュウッと抱き込んでもらうと安心する……
背後も天井も暗いのも怖くない……
暖かい温もりに包まれて……あっという間に眠気がやってくる……
「……次からホラーダンジョンのクエストはやめとくか?」
「んー……でもダンジョン召喚楽しかったし……助けられてよかったから……だいじょぶ……」
「ならいいけど」
「でも……あそこはもういかない……」
「だよな、知ってた」
ぽんぽんと背中を叩いてもらうと……僕は速やかに眠りの中に落ちていった。




