キ:試合終了後は速やかに撤収を。
『試合終了! 『ユーレイ』選手の勝利です!』
『『ユーレイ』選手、Iブロック突破おめでとうございます!』
『……どうも』
ほぁああ~~~っ!!
カァッコイイィィイイイイ!!!
見た!? 見ました!?
あのIブロック突破選手!
あれ僕の愛しの旦那様なんですよ!!
あ~、好き!
何回でも惚れ直しちゃう。
Iブロックのスクリーン映像が終了して、鳥籠を持った相棒が部屋から出てきた。
ザッと周囲の視線が集まっている。
まぁブロック突破しちゃったからねぇ〜。
こっちだよーって手を振って呼ぼうと思ったら……相棒にスススッと近付く、白シャツに黒いサスペンダーパンツ姿のヤギっぽい獣人少年!
「こんにちは、『ウサボール通信社』です! Iブロック突破おめでとうございます! よければインタビューお願いします!」
「アッハイ」
あー! ダメだー! 断るのが苦手な一面出て来ちゃったー!
いかんいかん!
僕の方から合流しないとマズい!
僕が小走りで近付くと、相棒はホッとした感じで、鳥籠を持っていない方の手を僕と繋いだ。
「アッ、えっ、彼女さん?」
「妻です」
「あ、ご夫婦!?」
どうもご夫婦です。
「すいません、旦那こういうの得意じゃないんで……」
乗り気じゃないの、見ればわかるよね? ねぇ? と笑顔で圧をかける。
こういうのをお断りするのは僕の役目なのだ。
「あ、すいません。じゃ、じゃあ、ひとつだけ……本戦トーナメントの意気込みをお願いします!」
「…………ここまで来たら、やれるだけやってみようと思います」
「ハイ、ありがとうございましたー!」
はい、引き下がってくれてありがとうございましたー。
繋いだ手を引いて、闘技場の外に出る。
ちょっと人も注目も多すぎるからね、早く帰ろう。
ずんずん歩いて……アイテムで帰るのはちょっとよろしくないかな? さっさと転移広場まで移動して拠点に戻る。
よし、ここに戻ればもう大丈夫。
飲み物を差し出すと、相棒は鳥籠を一度地面に置いてから受け取り、グビグビッと一気に相当量を飲み込んでブハーッと息を吐いた。
「ありがと……」
「イイって事よ」
わしわしと頭を撫でれば、僕を抱き寄せてグリグリと頭に頭を擦り付けてくる。
「……勝ったよ」
「うん! すっごいカッコよかった!」
「……本当に?」
「嘘つく理由無くない? マジで世界一カッコよかったのに」
「……もっと言って」
「相棒カッコいい! 好き!」
ギューッとハグをして背中をさする。
あー、いつものやりとりいいわー。とっても幸せで落ち着く。
なんというか、試合よりも終わった後の方が疲労してるねぇ。
ひと息ついた所で、相棒が足下に置いていたカワイイ鳥籠を僕に渡してくれた。
「はい、シマエナガ」
「やったー! ありがとう!」
念願のシマエナガですよシマエナガ!
籠の中には写真で見たシマエナガそのまんまな小鳥がちょこんと止まっていた。
「おああ〜〜っ! ギャンカワァァァ〜〜!」
「ジュリリ」
「アッ、アッ、ジュリリッて鳴いた! カワイイ! スゴいカワイイ! ありがとう相棒!」
「うん、相棒の方がかわいいよ」
そんなバカな!?
このシマエナガの可愛さに僕なんかがかなうわけない!
……あ、ゲーム内の表記は何になるのかな?
プリティシマエナガ Lv3
「プリティシマエナガッ……!」
「名前」
確かにシマエナガはプリチーですけどっ!
「……まぁかわいいからいいや。名前何にしよっかなー……エナガだとそのまんまだもんねぇー」
「そうだね」
んー……
「黒猫がクロちゃんだから……」
「……んん?」
「白いシマエナガはシロちゃんにしよう」
「……マジで?」
だって深く考えると厨二病が顔を出すよ。分かりやすい方がいいじゃんすか。
そもそもシマエナガがカワイイんだから、名前が平凡でも問題ない。
「……まぁ、相棒がいいならいいけど」
「うむ。あ、まずはテイムしなきゃかな? ……テイム生えるかな?」
「賞品だし、そこで苦戦するような事は無いんじゃないか?」
籠の格子越しに人差し指を伸ばすと、シマエナガは不思議そうにツンツンしてくれた。
「くっ……カワイイッ!」
「はよテイムしなー」
「……えっと、【テイム】?」
──【テイム】スキル取得
おー、よかったー。
無事にシマエナガテイム成功。
僕にとっては地味に初めての従魔だね。
「よろしくねシロちゃん」
「ジュリリ」
「ウウッカワイイッ……相棒……ありがとう、ありがとう」
「うん、よかったね」
うへへ、相棒は最高にカッコよかったし、シマエナガは最高にカワイイし、今日は最高の1日だったぜ!




