キ:いつぞやの3人とラリーストライク
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今日は木曜日。僕らにとっては休日。世間にとっては平日。
つまり、普段混んでいる所に行くなら、今日は絶好のチャンス。
せっかくだから1回くらいはラリーストライクで遊んでみようという事で、僕らは闘技場へとやって来た。
さすが平日昼間は人が少ないね!
あんなに長い行列作ってた闘技場が、今はスカスカ。
だから僕らの顔も見やすかったんだと思う。
「あー! お久しぶりですニャー!」
「あ、ご夫婦だ。どーも」
「おひさしぃー」
いつぞや助けた三人組が、揃って闘技場の受付にいた。
「あ、久しぶりー」
「……どうも」
あの頃は絵に描いたような初心者だったけど、今はしっかりした素材の装備を着て、すっかり慣れきった雰囲気になっている。
まぁ初めて会ったのは割とサービス始まってすぐだったしね。半年近くたてば、もうとっくに初心者じゃなくなってる。
「そうニャ! お二人さん、よければ一緒にラリーストライクやってみませんかニャ?」
「僕ら?」
「デートのお邪魔するのは忍びニャいけど……この競技、俊敏ステータスの差でトンデモなハンデつくから、魔法職と弓職だとたぶん普通に遊べないと思いますニャ」
なるほど確かに。
「こっちもヒーラーのカリンが俊敏死んでてもどかしかったのニャ。ご一緒させて貰えると助かるのニャー!」
うんうん、僕とヒーラーのカリンちゃんならステータス的にも丁度よく遊べるし、相棒はそっちの2人とならいい感じに遊べるって事だね。
(どーする?)
(相棒がいいならいいよ)
じゃあ、ご一緒させてもらいましょうか。
* * *
はい、ラリーストライク、やってみました。
僕は無理だね! コレは!
普通にコントローラー握ってやるゲームならいけるかもしれないけど……自分で動くと球数増えたらパニクるわ。
「学生時代に、ふざけてシャトル2個でバドミントン遊んだことあるけど……あれが可愛く思える難易度」
「あー、確かにー」
カリンちゃんもおっとりしてるから、もう僕らは割り切って2,3発の球をテニスみたいに打ち合って遊んでいた。
「ストライクもっ……頑張れば打ち返せる……かな?」
「マジでー? 私は出来る気しないかなー?」
「『ストライク』!」
「あーっ!」
ひと段落して、僕らは休憩して俊敏高い組の遊びを眺める事にした。
「いやぁ〜、次元が違うねぇ」
「あっちだけ別ゲー」
特に俊敏重視な相棒とミケコちゃんの試合が凄い。
コート内を縦横無尽に飛び回る球の間を、ワンドを振り回しながら駆け抜ける。
無造作に振ったようにしか見えないのに、飛んできた球を的確に打ち返してて、ちょっとした隙を見逃さずにストライクを叩き込む。
「あ~、カッコいいー! 僕の相棒、本っ当カッコいい!」
「全力で惚気ー」
「惚れちゃダメだよ?」
「圧ー」
ミケコちゃんは格闘家、俊敏の数値は射手の相棒の方が高い。
ラリーストライクに俊敏以外のステータスは関係ないから、初心者同士なら速さで優位を取れる感じ。
「アー! 負けたニャー!」
「……お疲れ様でした」
「ユーレイさん強いなー」
ノンアルさんは盾持ち重装備のタンク系だから、近接職でも俊敏は控えめなんだよね。
なのでこのメンバーでは相棒が最強。カッコいい。好き。
「ユーレイさん、そんなに俊敏高いなら大会も良い所行くんじゃないです?」
「いや、そういうのはちょっと……」
「出ないんですニャ? 今回は景品も面白そうニャのに」
「景品?」
あ、ラリーストライクの大会って、ポイントが景品じゃないんだ? 夏のトライアスロンと一緒かと思って、うっかり見落としてた。
皆で集まって景品を確認する。
「今回はかなり豪華なんですよ」
「なんと優勝者には騎乗可能な飛竜をプレゼント!」
「へぇ~」
ドラゴンかぁ〜、なんだかんだまだドラゴンらしいドラゴンって出てきてないから、ゲット出来たらゲーム内最初のドラゴンテイマーって事に成るのかな?
「2位も3位も騎乗可能な鳥なんですニャ」
「……遠征距離が広がってきたから、欲しいプレイヤーは多いだろうな」
「4位は象だよー」
「突然の象」
アニマル景品が多いねぇ。
とはいえ、うちはネビュラがいるから……別に困ってはいないし……
「参加者を募りたいのか、予選を突破するだけで小鳥が貰えるそうですよ」
「睡眠バフになるんだってー、このシマエナガ」
…… シ マ エ ナ ガ !?
思わずがッとウィンドウに飛びついた僕を、三人組は驚いた目で見て、相棒は苦笑いしていた。
シマエナガッ、シマエナガッ、大好きなんだシマエナガッ!
あ、あ、あった、景品、シマエナガッ。
「アー! シマエナガだぁあああああ!」
「キーナさんシマエナガ好きなのニャ?」
「……グッズ見かけたら買うくらいには好きだな」
「あ、それはかなり好きなやつねー」
うるせー! シマエナガはカワイイから仕方ないだろー!?
「……こ、この子は、予選突破したら貰えるの?」
「ですニャ」
「…………僕、今から頑張って俊敏上げればワンチャン」
「「「いやいやいやいやいや」」」
なんだよぉー、その生温かい微笑みはぁー? 僕には無理だって言いたいのかー!?
僕もそう思いますぅー!
でもシマエナガは欲しいんですー!
いっそ誰かが露店に出すのを祈って……リリーで殴るしか……
なんて考えていたら、ポンと相棒が僕の頭に手を置いた。
「欲しいの?」
「……欲しい」
「じゃあ俺出るから」
「え……でも大会だよ? 相棒イヤじゃない?」
「でも欲しいんでしょ?」
「……欲しい」
「なら良いよ」
ああああああ!
なんで僕の相棒はこんなにイケメンなんですかー!?
「ありがとう! 好きぃー!」
「うん……でも予選敗退するかもしれないから、あんまり期待はしないように」
「でも相棒強いからきっと大丈夫!」
嬉しい。
とても嬉しい。
そんないつもの僕らを、三人組は生温かい微笑みで見ていたのだった。
「ラブラブだニャ」
「ここまでバカップルだったのか……」
「ゲーセンでぬいぐるみ取ってくれる彼氏じゃん、いいなー」
 




