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ユ:謎の石板をどうしようか


 施工現場の土から出てきた、やたら意味深な『謎の石板』だが、初出のアイテムというわけではないらしい。

 兵士に見せたら『ああ、また出ましたかー』って感じに頷かれ『そのまま持ち帰ってどうぞ』の許可が出た。

 見つけた人が貰える扱いのようだ。


 農場予定地にクエスト受注テントがあったからそこで完了報告をして、俺とキーナは邪魔にならない敷地の隅の適当な切り株に腰を下ろしてスレを開く。


「『謎の石板』っと……ああ、専スレあるわ」

「おお?」


『謎の石板進捗報告スレ』というタイトルの専スレは、>1に謎の石板について簡単な説明がテンプレとして貼られていて、あとは集めている人の蒐集量や関わりのあるNPCの進捗報告をするだけのスレだった。


 その>1のテンプレによれば。

『謎の石板』は、フィールドやダンジョンに落ちていたり、地面を掘り返す作業をしていると極稀に出て来たり、いつのまにかNPCの所有物に紛れ込んでいたりするアイテムらしい。

 石板研究NPCがピリオノートにいて、そのNPCが言うには、恐らく別の世界から紛れ込んだ代物だろうとの事。

 普通のNPCの店で売却はできず、石板研究NPCの所へ持って行って渡すと、珍しいアイテムと交換してくれる。プレイヤー間の売買は可。


「……これってアレじゃない? 集めて交換するメダル系のアイテムじゃない?」

「ああ、小さいやつ?」

「そうそれ」


 某メダル系と違うのは……石板研究NPC的には、プレイヤーが自分で集めても全然かまわないらしいって事か。

 何なら石板研究NPC所有で形が重複した石板はプレイヤーが買う事もできる。


 集めて組み合わせたら復元もできそうだと検証勢は見ていて、実際に集めているプレイヤーはそこそこいるようだ。

 ただ、どうやら石板の完成形は複数枚あるようだから、かなり気の長い蒐集要素っぽいな。



 さて……俺達は、この石板をどうするか。



「……とりあえず、石板研究NPCの所行ってみたい」

「そうするか」


 交換アイテムのラインナップとか、気になるしな。



 * * *



 プレイヤーが所属している設定のククロスオーヴ王国には、貴族と平民がいる。

 だからピリオノートには『貴族街』が存在する。


 ピリオノート北東は一部が壁に囲まれて、出入り口には門があり、常に見張りの兵がいて検問のような事をしている。

 その中が、貴族の家だけが立ち並ぶ貴族街。

 プレイヤーもクエスト関係か貴族と懇意になるかしなければ入れない。

 飛行可能種族は上空から様子を窺う事はできるらしいが、上空から一定範囲まで近付くと容赦なく魔法で追い返され、その後で城へ呼び出されて叱られて罰金を取られるらしい。厳しい。


 そしてそんな貴族街の門の外のすぐそばに、お貴族様の住居だっていうのに貴族街の外に建っている珍しい屋敷がある。



 庭は広くなく、建物は装飾が少な目で頑丈さを優先したような石造り。

 窓には全部鉄格子が嵌められていて、テラスやサンルームなんていう開放的な雰囲気の造りも無い閉鎖的な外観。


 なにより特徴的なのは、一部の屋根だ。

 半球のドームのようになっているその屋根は、夜になると一ヵ所が開いて立派で大きな望遠鏡が空へと向けられるらしい。



 天文台の機能を持ったその建物は、知る人ぞ知る研究馬鹿であり、プレイヤー間では『石板研究NPC』として親しまれている、ハークレンズ伯爵家先代当主の隠居先なんだそうだ。




「お屋敷っていうより、研究所っぽい」

「それな」


 ガッチガチに窓からの出入りが出来ないようにしているシンプルな建物は、『機密情報持出禁止』どころか『関係者以外立入禁止』な雰囲気が漂っている。

 たぶん家主にもその自覚があるんだろう。

 出入り口の門の横には『謎の石板、買い取ります』と書かれた大きな看板がドーンと場違いな雰囲気で立っていた。


「……看板に買い取り店の住所が別に書いてあったりしない?」

「しないんだよなー」


 セレブの豪邸に質屋の広告が立ってるみたいで場違い感がすごいけどな。


 ……そうやって建物の前で二人で立っていると、後ろから足音が近付いてきた。



「おっ、そのためらいっぷり。謎の石板初ゲットした人達かなー?」



 軽い雰囲気の声に振り返ると……登山用ピックのような杖を持ち、『ザ・旅装』って感じの装備に身を包んだ無精ヒゲの男が、人好きのしそうな笑みを浮かべて立っていた。


「男女ペアのパーティ? カーッリア充ウラヤマシーイ! あ、石板オジサンの研究所ならここであってるよ。おいでおいで」


 ちょいちょいと手招きする男。

 俺とキーナは一瞬顔を見合わせて、とりあえず着いて行く事にした。


 男は何度もここに来ているのか、慣れた様子で門を潜って玄関をドアノッカーでゴンゴンとノックする。

 少しして出てきた執事っぽい人に「石板でーす」と告げると、執事も特に疑う事無くあっさりと扉を開けた。


(めっちゃオープン)

(厳重なのか緩いのかわからない)


 せめて名前とか控えなくていいのか?

 まぁゲームだからいいのか……いちいち署名するのダルいもんな。


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― 新着の感想 ―
お前登山ガチ勢じゃない限りロードオブザピッグだな?
屋敷の性質はともかく、博物館なんかは原初は貴族の見世物部屋かなんかだとW〇kipeで読みましたねえ モノを集めて調べるだけの資産と時間があるからそらそうよ、みたいな
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