キ:襲撃終了後のあれそれと、マンドラゴラ
閲覧、ブクマ、評価、感想、リアクション、いつもありがとうございます。
総合評価が30000を超えました。嬉しいです。
なんかメンテ明けから急にポイントが増えて、『えっ、読者の方々そんなに筋肉大根好きだった???』なんて誤解をするところでしたが、たぶん何かが変わった影響なのでしょう。マッスラゴラがフィーバーしたわけではない。
重ねて、いつもありがとうございます。
※色々ミスしていたのを修正
マッスラゴラ襲撃イベントは、無事に……無事に? ……うん、NPC死者は出ないイベントだから、無事に終わったでいいんだと思う。
結果としては……攻め込まれて防壁を2枚とも乗り越えられ、最終防衛地点の城まで到達されていたから、アウトっちゃあアウト。
ただ、なんとか城へ押し入られる事は防げたから……ギリギリのセウトって感じ。
戦闘メイン勢が常駐している防衛関係スレでは、『これが死亡するイベントだったらマジヤバかった!』っていう感想に始まって。ものすごく真面目な反省会と、有志が録画していたマッスラゴラ戦の動画を使った勉強会みたいな事が、動画サイトを閲覧可能なVRアプリなんかを使って行われて、闘技場を使った訓練会まで実施されたらしい。
ガチ勢ってすごい。
そして今回の襲撃イベントの報酬は、一応いつもと同じ襲撃のポイントも貰えるんだけど、それとは別にイベント限定報酬が出た。
マッスラゴラ討伐数が一番多いプレイヤーに……なんと!『被るとステータスはそのままでアバターがマッスラゴラになれる帽子』をプレゼント!!
貰ったのは【闇魔法】をメインにしてる魔法使い系のプレイヤーさんで、『いらねぇえええ!』ってスレで嘆いてたらしい。
……難易度はやたら高かったけど、蓋を開けてみれば経験値効率も金銭効率も破格でとても美味しいイベントではあった。
マッスラゴラスレは、襲撃終了後はそのドロップ素材に関する情報スレに早変わりしていた。
ドロップ素材を普通のポーションに混ぜても効果は特に無いんだけど、筋力ステータスを増強するレシピと組み合わせると、その増強値を飛躍的に伸ばす効果が出るんだって。
……ただ、NPC販売価格が高額だから、プレイヤーが素材として買い取るなら、それ以上の値段を提示しないと数を集めるのは難しい。
効果は金額に見合うのかどうか、ガチクランは確保するかどうか頭を悩ませているみたい。
……そう考えると、事件のきっかけになった悪い農家NPCは、発想の方向性は悪く無かったんだよね。ちょっと肥料の効果がテキメンすぎただけで。
農家といえば、今回のマッスラゴラが進化する原因になった肥料。あれが農業メインで遊んでるプレイヤーの琴線に触れたらしい。
ご禁制の品とはいえ豊穣神由来のアイテムだから、『神頼みは、このゲームかなり大切なのでは?』って重要視する人が増えたんだって。
リアルの農業だって神様に豊作をお祈りするもんね。
教会に通ってNPCから豊穣神の情報を集めたり、自拠点に神棚とか神殿みたいなの作り始めたりしてるらしい。
そしてもうひとつ、肥料がきっかけで影響が大きく出たのは、意外にもテイマー達だった。
今回はマンドラゴラちゃんがマッスラゴラに進化していたわけで……つまり、『植物系のモンスターの従魔は肥料が嗜好品扱いで、強力な肥料なら強力な進化をするんじゃないか?』って言われていたのが、運営からアンサーが出たような感じになったみたい。
とはいえ、このゲームは肥料だって色んな種類がある。
従魔を強くするような肥料とは? って感じでテイマー達は強そうな素材を求めて旅立って行ったとかなんとか。
そうそう、マンドラゴラちゃんと言えば……【闇魔法】で元の姿に戻ってあちこちに植わってしまったマンドラゴラちゃん達。
あの子達は、城の兵士達が集めてきて、希望者に配布していた。
農家プレイヤーとか錬金術士プレイヤーが主に引き取っていったらしい。
テイマーが引き取る場合もあって……どうやらマッスラゴラが気に入って、いつか進化させたいって夢を持っているらしかった。
……まぁ、夢を見るのは自由だよね。
* * *
「……って感じの事があったのさ」
「ほほう」
僕は今回の事件とその顛末を、自拠点のマンドラゴラちゃん達とコダマ爺ちゃんに聞かせていた。
植物関係の事件だから、面白いかなーと思って。
フッシーとバンとネモは籠に入れて現地に連れて行ってたしね。
「旦那が会ったとかいう黒い輩は結局何者だったんじゃ?」
「わかんない。一応調べてるみたいだけど」
相棒は、今まさに黒マントの情報をスレで調べている真っ最中。
とはいえ、名前わからなかったからね。
『黒いマント』なんて、プレイヤー装備でもあるから検索かけたところで大量に引っかかってくる。
時間かかりそうだから、僕はこうしてのほほんとお話ししているわけだけど。
「……マンドラちゃん達は、できればマッスラゴラにはならないでほしいな……」
完全に僕のわがままだけど……ついついポロッと口から出た。
マンドラゴラは、ちょっと変わったモンスターで……『素材』として所有する事も出来るし、『作物』として育成する事も出来るし、『従魔』として【テイム】する事も出来る。
そして……開拓地の住民として迎え入れる事すら出来る。
そんな風に、プレイヤーによって色んな扱いが出来る存在なのだ。
僕が貰ったこの2体は、開拓地の住民扱いにした。カワイイから。
でも住民扱いにしたからって、別に何か仕事が出来るわけじゃない。住民の数を増やして枠を埋めるだけで、ただ街路樹みたいに植わって育ってるだけ。
なんか、素材にせずに大きく育つと、剪定した葉っぱとかを出荷する農家みたいになるらしいけどね。
うちのこは、今のところはのびのびと育ってるだけ。いいんだ、カワイイから。
もう少しで大根サイズな2体のマンドラちゃん達は、そのつぶらな瞳でわがままをこぼした僕をジッと見ると……顔を見合わせて頷いて、お手々をピコピコ動かし何かを訴え始めた。
「ん? 何ー?」
「ふむ……右のは『地面に直植えしてくれ』と言うとるぞ」
「えっ!?」
なんで?
……マンドラゴラ的に、美味しそうな土なのかな。
「……ここの土って、野菜が変な育ち方するけど……大丈夫?」
右のマンドラちゃんは力強く頷いた。
心なしか目がキリッとしてるような気がする……変な事にはなるんだろうけど……自信があるなら、まぁいいか。
「んー、でもお家どうしようかな……」
住民扱いだから、植木鉢を【住居登録】してたんだよね。コダマ爺ちゃんみたいに。
でも直植えすると植木鉢無くなるから……
……僕は、石材をレンガサイズに切って、花壇っぽく土を囲み看板を建てた。
「『マンドラ家 敷地』……っと」
これでよし。
マッスラゴラから戻ったマンドラゴラも、花壇があればそこに向かってたから、植物的には家なんだと思う。
マンドラちゃんがそこに植わってから【住居登録】をすると、ちゃんとシステムにも反映された。空いた植木鉢の登録は解除しておこうね。
一段落すると、今度は左のマンドラちゃんがピコピコしだした。
「左のは『癒しの【光魔法】が込められた石が欲しい』と言うとるぞ」
「はーい……怪我とか風邪気味なわけじゃないよね?」
「そういうわけではないのぅ」
ならいいや。
適当な小石に【光魔法】の癒しをイメージして籠める。
「これでいい?」
マンドラちゃんは嬉しそうに小石を受け取り、自分の植木鉢に大切そうに埋めた。
……湯たんぽかな? 気持ちいいのかもしれない。
さてさて、たぶんマンドラちゃん達は何か進化がしたいんだろうけど……マッスラゴラのムービーみたいに急激な変化が起きるわけではなさそうだね。
時間がかかるのかな?
どうなる事やら。




