キ:山を越えた先を探索しよう。
ログインまだです。
現在僕らは、夕飯を食べながら、エフォの公式動画を見ている最中。
今日はキノコと玉ねぎのポタージュをパスタソースにした雄夜のお試しレシピ。
「……うん、クリームシチューっぽくなったな。どう?」
「美味しいよー」
「なら良かった。真紀奈、シチューパスタ好きだもんな」
「うん」
冷蔵庫にあるもので美味しい新メニューが作れるのは才能だと思う。全部野菜炒めか鍋になっちゃう僕には無理です。
公式動画はフリマとダンジョン召喚が動画化されてた。
召喚儀式クエストをクリアした後すぐに、公式から『闘技場のプライベートルーム内での会議を動画化しても良いか』の確認が来て、それにオッケーは出していたんだけど。まさかこんなに早く完成して公開されるとは思わなかったよ。
そして返信に『出来れば変装していない時は出さないで欲しい』って書いてはみたけど……まさか希望をすんなり汲んでくれるとは思わなかった。
「エフォの運営って……突然の大至急締め切り多そうだよね」
「ん? ……ああ、動画?」
「そう。プレイヤー次第じゃん?」
「確かに」
ゲーム会社も大変だねぇ。
ムービーは、砂の都・サラサオアシスとダンジョンの入り口が隣り合ってる景色を上空から映した映像でフェードアウト。
最後にエフォのロゴがバーンと出て終わった。
「……良いファンタジーだった」
「ゲームのCMみたいなムービーだったな」
「あー、あるある」
堪能した所で、雄夜が言う。
「掲示板見る限り、夏イベントで船が作れるようになったから出来上がって出航するプレイヤーと、この召喚したダンジョンに挑むプレイヤーとが多くなりそうって話だよ」
「へぇ~、そうなんだ?」
「うん。……で、俺達はどうする?」
僕達?
……ふむ、確かに。やり切った感でいっぱいで、特に何も考えてなかったね。
「……雄夜は、砂漠のダンジョン行きたい?」
「いや、まだ出たばっかりだし、レベルも全然足りて無さそうだし……挑むにしても有志の情報が出揃ってからがいい」
うん、雄夜はそうだよね。
僕も別に、明らかにレベル足りてない無理ゲーダンジョンに突撃したくはないかなぁ。
「でも別に、船出したいかって言うと……なんか違うかな?」
「そうなんだよ」
明確な目的地が無い船旅は……自分の開拓地があるとあんまり気が進まない。
遠出したとしても、様子は気になるからね。
そういう意味では、開拓地無しの戦闘勢の方が探索には向いてるのかも。
「……そうなると、僕らは流行りに乗る感じじゃないのかー」
「そういうこと」
何しようねぇ?
僕が特に何も思いつかずにいると、雄夜が口を開いた。
「特にしたい事ないなら、レベル上げしない?」
「レベル上げ」
「そう」
……レベル上げ!
そうだね、エフォってMMOだったね!
MMOって、半分くらいはレベル上げがメインのゲームだったね!
「いいよー、どこに行く?」
「拠点のあるフィールドの、他の島をそろそろ探索してもいいんじゃないかなって」
「なるほど、そういえばワンパンベアもとっくにワンパンできてたね」
「そう」
1回他の島に行ったのは……ネモを仲間にした時だっけ。あの時は占いに従って山ピョンしただけだから、他の島をまともに探索はしていない。
そうだね、僕らは僕らしか行けない所の領域を広げようか。
じゃあ今日はログインしたら遠征準備して他の島にお出かけだー!
* * *
ログインして、ゲーム内朝食をとって……こっちのフィールドなら基本的に変装はいらないから、アイテムの準備をして……
「今日はジャック達も連れて行くよね?」
「もちろん」
二人そろって後衛職だから、前衛ができるデューとジャックはぜひとも一緒に来てほしい。
そしてマリーも、二人と一緒にお出かけして足止め役としての技量が上がっているらしいから、ジャックのヒーラーポジションも兼ねて連れて行こうね。
今の僕らのステータスはこんな感じ。
キーナ
種族:エルフ
職業:死霊使いの魔女
Lv32
HP:32
MP:112
筋力:4
魔力:83
強靭:10
精神:64
俊敏:10
ユーレイ
種族:ヒューマン
職業:霊狼の射手
Lv34
HP:70
MP:45
筋力:51
魔力:33
強靭:40
精神:11
俊敏:74
夏イベントを満喫して、なんだかんだレベル30は超えてる。
今の高レベルガチ勢は、大体50前後なんだって。
冬に使徒が来る時は、高レベル帯にある程度合わせて来るだろうから、もう少し追いついておきたいねって相棒と話をした。
相棒はいつものネビュラとベロニカを連れて。
僕はオバケはどうしようかな……戦闘があるにせよ無いにせよ、ネモは応用が利くから連れていきたい。
あとは……コダマ爺ちゃんとフッシーにしようかな。
……よし、準備完了。
ジャック達をパーティに入れて、まずは一気に山登りだ!




