キ:ちょっと小休憩。
今日から夕方更新も再開してみます
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昨日は塔の召喚のあれそれを打ち合わせして、それぞれ用意する物が決まった所で解散した。
残りの足りない召喚士は、ガルガンチュアさんのクランが心当たりを誘ってくれる事になった。
決行日については、各々が必要なモノを確保出来た時点で連絡がまわって、全部揃った後で予定をすり合わせて決める事になっている。急いでないしね。
天使のラウラさんへの確認もカステラソムリエさんが請け負ってくれたから、僕らの役目は情報提供者として当日まで本を所持しておく事だけ。
……つまり、特に無し!
「みんなダンジョンって聞いて目の色変えてたなぁ」
このゲームのダンジョンって、基本的に素材しか出ないからね。
宝箱とか無いのだ。先住民がいないから。
だから、わかりやすく魔法関係のアイテムが手に入るようになるかもしれないダンジョンの存在にテンション爆上がりしているらしい。良かったねぇ。
さて、僕はそんな皆を眺めた結果、とっても生暖かく見守りたい気持ちになっていた。いってらっしゃーいって気分。
だから今日は、拠点でのんびり土いじりをしようと思う。
相棒はせっかくゲーム内の早朝で時間が合ったから、久しぶりに魔術師団長さんの所に【格闘術】の訓練に行った。
「マンドラちゃ〜ん♪ マ♪ マ♪ マ♪ マ♪ マンドラちゃ〜ん♪」
頭に浮かぶ単語を何も考えずに音とリズムに乗せて歌いながら、畑の片隅、オバケの籠が置いてある近くへ向かう。
夏のイベントで花火の材料集めをしていた時に、ニヤニヤフラワーと交換でもらった萎びかけのマンドラゴラの苗2体。
あの子達は引き取って鉢に植えた後、持って帰ってからはコダマ爺ちゃんから見える所に置いて様子を見てもらっていたのだ。
声をかけてくるオバケ達に挨拶しつつ、特に何も問題ないよって報告をもらう。
そして鉢植えの方へ。
エフォのマンドラゴラは、割と埋まり具合が浅いのか、脇の下くらいまで土に埋まってお風呂みたいに過ごしている。
そして僕に気付くと、ちっちゃいお手々をピコピコと振ってくれた。
「ギャンカワ」
思わず真顔で口から出たよ。
なんだこの可愛い大根は。
近付いて、体の様子を見る。
しなしなだった根っこの体も、今はすっかりみずみずしいツヤツヤボディ。
「もうすっかり元気だねぇ」
コクコクと頷くマンドラちゃん達。可愛い。
僕にはもうこの子達を引き抜いて素材には出来ない。可愛すぎて。
相棒にはそう言って苦笑いと共に了承されている。『だろうな』って言われた。さすが相棒、よく分かってる。
このまま育つと、普通の大根みたいなサイズまで大きくなるらしい。
薬の素材として使うなら、そこまで育てると品質は落ちるんだって。
まぁ、僕は素材が欲しいわけじゃないから、のびのびと大きく育ってほしい。
* * *
しばらくして読書をしていると、相棒が帰ってきた。
「そういえば……ダンジョンって、王国的には召喚して大丈夫なのかと思って、訓練ついでに魔術師団長に確認してみた」
ああ、そういえば確かに。偉い人的にはダンジョンが増えるなんて一大事だもんね。
……まさかダメだとは言われないとは思うけど。ゲームなんだし。
「で、どうだった?」
「……めっちゃ楽しみにされた」
あるぇー?
「……反対されなかった?」
「全然」
「喜んでた?」
「大興奮だった」
「……魔術師団長だからかな?」
「たぶん? どんなダンジョンをどういう経緯で呼び出す事になったんだ?って訊かれたから……猫の店は端折って、ざっくり説明したら……『必ず成功させろ』って圧かけられた」
わぁ。
「魔法関係の施設が飛んでくるわけだもんねぇ……ダンジョンだけど」
「ダンジョン化してなければよかったのにな……」
しみじみと頷きあう僕ら。
でもねぇ……本の内容からして、たぶんダンジョン化してないと風化して資料が駄目になってたんだろなぁって思うと仕方ないんだよね。
あ、そういえば。
「思ったんだけどさ……無詠唱に関するロングチェーンクエストあるじゃん? あれも関わって来そうだなーってちょっと思った」
「ああ……確かに」
魔法関係だもんね。中にクエストのキーがあるかもしれない。
「でもこんなに早くそのへん解放しちゃって、ゲームバランス大丈夫なのかな?」
「……まぁ、その辺は運営……というか、ゲーマスAIがなんとかするだろ」
というか、してくれないと困るよ。
これだけハマってるのに、バランス崩壊してクソゲー化からのサービス終了はキツいよ。
……なんて考えていたら、相棒にカステラソムリエさんからメッセージが届いた。
「……カステラさんに、お嬢様から連絡来たって」
「なんて?」
「儀式の準備出来たって」
「早っ!? え、サモナーも? アイテムも?」
「…………揃ったって」
「早っ!? 皆どんだけ楽しみだったの!?」
「それな」
あれこれと予定を擦り合わせた結果……全員の予定が合いそうなのは金曜日の夜って事になった。
……別に土日でもよかったんだけどね? みんな出来るだけ早く決行したかったんだって。
皆どんだけ楽しみだったのさ。
「……見つけた僕らより周りの方が盛り上がってるよね」
「それな」
これはゲームなので、プレイヤーが自主的に進めるタイプのクエストなら、どんな大掛かりな作戦であろうとも、NPCはハッキリと『人手貸して』と言われない限り『頑張れよ』『任せたぞ』という放任なリアクションをします。
そして王国側がどこまで把握しているかですが、味方NPCの誰かが知った事は巡り巡って偉い人の耳に入るようにはなっています。
ですが『内緒にして』とプレイヤーがお願いすれば、好感度がよほどマイナスでない限りそのNPCからは伝わらないようになっています。
逆に気になる事を積極的にお城へ知らせているプレイヤー等は、細かく報告を上げてくれる冒険者として好感度が高かったりします。