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キ:賑やかなフリマ販売


 僕らの出している物は確かに珍しいだろうけど、有用な物を出してる露店はもちろん他にもたくさんあるから。『仕入れに来ました!』みたいな人達は良識の範囲内で買い物を済ませるとサササーッと波が引くみたいに去っていった。

 うんうん、ここばっかり見てて他の掘り出し物買い損ねたら目も当てられないもんね。がんばれー。


 そうして業者が引き上げた後は、ちょっとしたインターバル。

 壁沿いの露店で串焼き齧りながらゴーレムのあれそれとかを遠目に見ていた人達が、『何に騒いでたのかなー』って感じでゆる~く店を覗きに来た。


「へぇ~、面白い物多いなぁ」

「火がいらないランプって水中でも使えます? ……あ、いけるんだー」

「お、wikiに載ってた溶岩ってこれかぁ」

「これカワイイ〜」


 さっきまでの市場みたいな空気は消えて。例えるなら修学旅行生がお土産屋さんを見に来たような、ちょっと賑やかでほのぼのした雰囲気が流れ始める。

 そんなお客さん達はそれぞれ気になる物が違ってて、何の職業かなーって考えるのが面白い。

 

 例えば、今は5人組パーティっぽい人達がきてるんだけど、その人達は気になる物がそれぞれ違うみたい。


「おっ、この星屑ランタンいいじゃん。チャージいらずで水中も可」

「そ、それよりここの植物素材はマジでヤバいぞ……ちょっと、買って色々試したいんだが……」

「いやいや、まずはこっちの金属買おうぜ。わかりやすく装備の性能上がるんだから」

「わかりやすい装備ってんなら、こっちのレゾアニムス装備! 回復役の防御固めさせてくれぇ〜」

「まぁ待てって、このバフ料理率が上がる食材はボス戦前の切り札になるぞ。少し買い込んでおいたほうが……」


 たぶん……最初の人はわかんないけど、他は……錬金術士、近接タンク役、回復役、料理担当、かな?

 5名がそれぞれ共用財布の紐を引っ張ってる感じ。


「……埒が明かねぇ、一回勝負だ!」

「「「「「じゃーんけーん!」」」」」


 学生みたいなノリでポンと勝ったのは料理担当さん。

 崩れ落ちる4人を横目に、ドヤ顔でラウラさんの前に立った。


「小麦20袋下さい」

「す、すみません。お一人様3袋までです……」

「アッハイ」


「よっしゃまだ残額あるな!?」

「次ぃ!」

「「「「じゃーんけーん!」」」」


「すいません、『マナの若葉』を……」

「これはお一人様3枚までな」

「アッハイ」


「「「じゃーんけーん!」」」


 ……結局、購入制限と照らし合わせたら、各々が各々必要だと思った分はひと通り買えたらしい。


「……じゃんけんの意味は!?」

「ねぇよ」

「購入制限に気付かなかった俺達の敗北」

「最初に説明ちゃんと読むべきだったなー」

「すんません、お騒がせしましたー!」


 いいよいいよ、面白かったから。


 愉快な5人組は、最後におみくじ感覚で知恵の林檎を買っていった。


「……『ピリオノートにはネズミの巣穴の入り口が76個ある』!?」

「おい、『ターバンモンキーは口笛で蛇をけしかけてくる』ってよ!」

「『コレクトツバメは稀少な貝を巣に集める習性がある』だと? レア素材か!?」

「『遊覧アルバトロスは一度飛び立つと30日は地上に降りてこない』……?」

「『万年ヤシの種は陸に漂着せず浮島として漂う事がある』だって! 面白そうだぞ!」


 そして各々が『自分の引いたTipsが一番面白そうだ!自分の引いたTipsを探しに行こう!』とやいのやいの言い合って……最終的にアカデミックな雰囲気のショ◯カー達に回収されていった。


(……それでも方向性の違いで解散したりしないんだね。あの5人組)

(そんなバンドじゃあるまいし)



 * * *



 さて、そんな感じで賑わう僕らの露店。

 買い占めが起きないように購入制限をかけているおかげで、まだ在庫切れはおこしていない。

 戦隊クランの注意喚起よ、ありがとう。


 僕らを見てない人にも口コミが届いたのか、またお客さんの波がやってきている。

 特に僕ら以外の店に素材が多めだから、生産職さん達がひっきりなしに仕入れにやってきている感じ。

 だから僕らの露店も、生産職さんが素材をメインに買っていく。

 うちで扱う素材といったら、まずは森の木材だよね。

 それに加えて今回は、クロちゃんがオヤツにつられて頑張ってくれたトマト結晶が大人気。


「『満ち夢ちトマトの結晶』……って、スレで話題になってたトマトを結晶にしたって事ですよね……」

「結晶幻獣かぁー、欲しいけど……でも自分のレベルが高くないと強い効果の結晶は難しそうだし……」

「悩みどころですよねぇ。結晶幻獣と頑張るか、高レベルの人に委託するか……」


 たぶんアクセサリー職人っぽい人達が、トマト結晶とフリマに間に合わせて書いた結晶の猫幻獣ちゃんの本を買って読みながら悩んでる。

 そうだねぇ、生産だけやってるとスキルレベルばっかり上がって、ベースレベル上がらないもんね。


「高レベルに寄生するのもイヤだしなぁ〜」

「ソロだと悩みますよねぇー」


 とはいえ、このゲームは装備のレベル制限が無いから、そろそろお金で殴れるんじゃないかな? 強い装備を揃えて、装備の性能で経験値効率の良い敵を殴るってやつ。

 あとは、思い切って戦闘は従魔メインに舵を切るって手もあるよね。


「『満ち夢ちトマトの結晶』ください」

「はい、お一人様2つまでです」

「じゃあ2つください」

「まいどーも」


 2つにしたのは、アクセサリー職人さんのため。

 1個は自分で欲しいかもだし、でも職人さんとしては売り物は自分用とは別に作りたいかもしれないから。


 ふふ、皆どんなデザインのアクセサリーに仕立てるんだろう?

 気になるなぁ、そういうスレ無いのかなぁ?

 たまには掲示板探してみようかな。


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― 新着の感想 ―
アカデミックなショッカー…一体どこのジャンキーなんだ〜?
黒戦闘員「お話いいですか」(純粋にお話が聞きたくて聞きたくてしょうがない) 面白すぎる……
結晶ネコちゃんの本には肉球推しのネズミが出てくるのかな?
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