キ:ポーションお試し実験回
※睡眠ボーナスについて追記
テレレッテ テッテッテー
テレレッテ テッテッテー
ポーションお試し実験回〜
今日の僕らは、以前の大街道敷設イベントで見つけて持ち帰った花を使って、MPポーションを自作してみようと思いまーす。
【月光雫の花】…品質★★★
月の光を蜜に溜め込む花。蜜はMP回復薬の素材になる。
満月の夜に摘むと蜜が多く、効果も強い。
これね。
種はなんだか上手く育たなかったから鉢植えから育てたこの花を、普通の土を使った花壇に植えてたくさん咲いてもらって、蜜をコツコツと採集したものがこちら。
【月光雫】…品質★★★
月の光を溜め込んだ、甘くとろける蜜。
MP回復薬の材料になる。
時間がたってそれなりの量になったから、思う存分お試しができるよ!
【調合】は錬金術士の系列だから、複数の素材を混ぜるとわけのわからない事になりやすいらしいんだけど。
HPとMPの回復ポーションは、初心者でも自前でまかなえるようにって事なのか、あんまりとんでもな変化は起きないんだって。
なんかね、相棒に見せてもらったwikiによると、素材を【調合】に使った場合、完成品を決定する優先度があるらしい。
MPポーションの基本レシピは『月光雫』と『薬草』
この2つが入っていれば、飲食可能な素材なら大体は何を足してもMPポーション系にはなる。つまりこの2つの素材は、完成品決定の優先度が高いって事。
ポーション作りをメインの仕事にしてる錬金術士は、この基本のレシピに色んな物を足して、もっといい効果のポーションが作れないか組み合わせを研究してるわけだね。
で、本屋さんで買った『錬金術レシピ集』には、この完成品決定の優先度が高い組み合わせと、オススメの追加アイテムがたくさん書いてある。
仲間内で使うポーションを【調合】するなら、必携の書になってるんだって。
相棒の作業部屋になってる地下室で、『錬金術レシピ集』を並んで眺める。
「『黄緑タンポポの花』を入れると弱回復が持続するポーションになるんだね」
「シンプルにMP回復量を増やしたいなら『青いフサフサ草』が初心者向けか……」
ポーション強化にオススメの追加アイテムを眺めて……僕らは顔を見合わせて苦笑いした。
「知らないアイテムばっかりだねぇ……?」
「うん……これ多分、通常フィールドのピリオ周辺で採れるアイテムが主に載ってるんだろうな」
「やっぱり?」
特に戦闘勢向けなんだろうね。
特殊なマップに拠点を持って活動している僕らは、その特殊さの恩恵を受けている代わりに、こういう一般的な情報の恩恵が受けられないんだなぁ〜
「開拓勢も、自拠点周辺のアイテムを使って研究してるんだろ」
「だねぇ……ってことは、僕らもそうした方がいいのかな?」
「まぁ、自給自足できた方が便利ではある」
それはそう。
というわけで、僕らはインベントリを漁って拠点周りで採れる飲食可能な素材を確認してみた。
「……食べる事はできても健康に悪そうな物ばかりであります!」
「それな? 普通の野菜を入れた所で効果が上がる気がしないしな……」
とりあえずピックアップしてみたのは
『ストロングハートベリー』
『睡眠玉ねぎ』
『満ち夢ちトマト』
『夢会い草』
『知恵の林檎』
『キツネの葡萄』
『夢喰い鹿の角』
この7つ。
動物の角は、砕いて粉にして使うのは薬的に有りなのでは?って事で入れてみた。
「じゃあ片っ端から試してみるか……」
「おー!」
僕もお手伝いしつつ、レシピにしたがって基本の材料を鍋で煮ながら追加アイテムを放り込んでいく。
まずは『ストロングハートベリー』さんです。
心が逞しくなるイチゴ。MPポーションに入れたらどうなるかなー?
【ストロングMPポーション】…品質★★★
あらゆるMP減衰効果を無視してMPを回復させる。
回復量は普通のMPポーション。
「おおー、MPデバフ無効の効果付きかぁー」
「場所によっては重宝しそうだな」
でも回復量は増えなかったねぇ。
次は『睡眠玉ねぎ』さんです。
食べると、調理法によって甘い夢を見たり辛い夢を見たりするっていうこの玉ねぎ。
ようするに、火を通して甘くなった時に食べれば甘い夢を見る、生食好きに厳しい玉ねぎさんなんだと思うんだよね。
だから先に火を通して、甘くしてからポーションにイン!
【甘夢のMPポーション】…品質★★
飲んで眠ると甘い夢を見る。
睡眠ボーナスとして最大MPが僅かにプラスされる。
「あー……なるほどそういう」
「僅かにか……どのくらい増えるか試してみてだな……」
手間に見合わない増加量だと面倒くさいだけだもんねぇ。
睡眠ボーナスは次の睡眠まで継続するものだし。
では次、『満ち夢ちトマト』さんです。
幻獣とお話ができるようになる不思議トマト。
これはもうシンプルに湯剥きして潰してドーン!
【幻夢のMPポーション】品質…★★
飲むと一時的に幻獣召喚時のMP使用量が減少する。
「なんて限定的」
「サモナー向けか」
今のところ僕らの仲間に幻獣はいないから、お蔵入りかなぁ。
次の出番は『夢会い草』さん。
ひとつの葉っぱを複数人で齧ると同じ夢で会えるっていう薬草の変種。
すり潰してポーション鍋へ。
【夢繋ぎのMPポーション】…品質★★★★
パーティメンバーの内、これを飲んだ者同士で一定時間MPを共有できるようになるポーション。
「えっ!? すごくない!?」
「とんでも仕様がここへ来て出たな……」
大規模クランとかめっちゃ欲しいやつでは?
一人が魔法撃って、他の人がポーション飲んで回復してってできるもんね。
「……まぁ、俺達はそんな大人数で活動しないんだけどな」
「宝の持ち腐れだねぇ〜」
でも同盟とかでも有れば便利かもしれないよね。
これはある程度の数を作ってとっておこう。
『夢会い草』も多めに植えておく事にする。
では次、いつも楽しい『知恵の林檎』さん。
知恵の部分はポーションに入れるとどうなるのかな?
すりおろしてイン!
【知恵のMPポーション】…品質★
普通のMPポーションだが、ある程度の量を飲むと深みから吸い上げた知識をひとつ得られる。
何を知るかは、飲んでみないとわからない。
「……混ざっただけだ! MPポーションの効果にTips効果が単純に増えてるだけだよコレ!」
「戦闘中にTips出るのクッソ邪魔だろ」
使えない!
『知恵の林檎』さんはポーションに混ぜても意味の無い子です!
……じゃあ次は『キツネの葡萄』さん行ってみましょう。
何故かキツネが持っている、とっても酸っぱい葡萄の実。
コレも潰して鍋に投入っと。
【酸っぱい葡萄汁】…品質★
とても酸っぱい葡萄の汁。
「……アレッ!?」
「……マジで!?」
「えっ、ポーションの材料入ってたよね??」
「入れた。それでこの結果って事は……『キツネの葡萄』は、それ単品でポーション系レシピよりも完成品優先度が高いアイテムって事になる」
「えええええええ!?」
どんだけー!?
ビックリした僕らは、『キツネの葡萄』を相棒が使ってる毒薬とかとも適当に混ぜてみた。
結果は……全部綺麗に『酸っぱい葡萄汁』
「なんだこのレシピキャンセラー……」
「『キツネの葡萄』が強すぎる……」
「……あ、レシピ本1巻の最後に書いてあったわ。『『キツネの葡萄』はこの本に載っているあらゆるレシピを打ち消して『酸っぱい葡萄汁』にしてしまうので注意』だって」
「わぁお」
本職がわざわざ書いておくくらいなんだから、よっぽど完成品優先度高いんだね、コレ。
……なお、1巻から5巻まで、全部の巻末に『キツネの葡萄』に関する同じ注意が書いてあった。とんでもないね!
いよいよ最後、『夢喰い鹿の角』さん。
ポーション作るのに使うかもってちゃんと用意しておいた薬研で、小さくした角をゴ〜リゴ〜リ。結構楽しいねこの作業。
粉になった鹿角を鍋にサラサラ〜
【夢喰いのMP減衰薬】…品質★★★
飲むか浴びるかすると一定時間MPが徐々に減っていく薬。
効果時間中はMPの自然回復を阻害する。
「減ったー!?」
「毒薬だなこれ」
辛うじてMP関係の枠に収まってはいるけど、こういうパターンもあるんだねぇ。
これも使い道がありそうだからって、相棒はいくつか在庫を作って置くことにしたみたい。
そのうち魔法攻撃がメインの敵が出てきた時に活躍しそう。
……さて、ひと通り作ってみたわけですが。
「なんということでしょう。シンプルにMP回復効果の高まる素材がありませんでした!」
「はい。……まぁ、ちょっとそんな気はしてたよな」
「うん。ちょっとしてた」
だって、明らかに天然素材が身体に良くない物ばっかりなんだもん、このフィールド。
効果の高いMPポーションの調達は、自作はちょっとしばらく置いておいた方がよさそうかな。




