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幕間:ロマン輝く火力を求めて


 ピリオノート北の街。

 大街道が繋がった、ちょっと個性的な攻撃力高めの街『☆フェアリータウン☆』


 そこの開拓者、『魔法少女☆ドレッドノート』は、今日も自分の拠点で高威力魔法を撃つための魔道具開発に勤しんでいた。


「……よく飽きないよなー」

「だって火力追求するの楽しいじゃん」


 コッテコテの少女趣味なファンシー衣装を身にまとい、ハニーブロンドのゆるふわウェーブな髪をポニーテールにまとめて大きなリボンを結んだエルフの美少女。

 それが高火力魔法使いとして名が売れているドレッドノートの姿。


 そんな彼女がせっせと研究と製作に精を出す、コッテコテの少女趣味なファンシー風味の作業場もまた、ドレッドノートの趣味である。

 そして、その作業場の棚に、居心地悪そうに寝そべっているのは、ドレッドノートのリアルの双子の兄であるフェアリーだ。

 2人揃うと、まるで女児向け魔法少女アニメの主人公とお供のマスコットのようであった。


 その兄は、ゲーム内での名を『カステラソムリエ』と言う。


「そうだ兄さん。貰った世界樹の素材、使い切っちゃったからさ、またいくつか買わせて欲しいな」

「ん、わかった。……てか、世界樹使った魔道具も使い切ったのか?」

「大体は? あー、でもロッドひとつだけ初心者にあげた」


 ドレッドノートの返答を聞いたカステラソムリエは、ズルッと棚から滑り落ちる。


「おい、アレを初心者にって……」

「大丈夫だって。ゲーム慣れしてる人達だったから、これは切り札だよって言い含めたし、NPC吹っ飛ばすような真似はしないよ」

「……ならいいけどよ」

「そもそも兄さんの【サモンセイクリッドツリー】ほどのMP増加効果出ないから」


 言いながら、ドレッドノートは思い出す。

 大街道敷設イベントで、山のような大きさの岩石ヤドカリモンスターを魔法で消し飛ばした時の事を。


 あの時は、この兄が就いている特殊職業『マナの召喚士』が使える特殊召喚でMPを増幅してもらったのだ。

 クールタイムがリアル一ヶ月というトンデモ仕様の魔法【サモンセイクリッドツリー】は、その名の通り世界樹の一部を呼び出す召喚魔法である。

 世界樹とは、世界の魔力の循環を担っている存在との事で、呼び出した世界樹は指定した対象にエグい量のMPを一時的に追加することが出来るのだ。


 まさしくロマン砲。

 火力に魅せられたドレッドノートは、あの快感が忘れられない。

 だからこうして、ひと月待たなくても撃てるようにそれに近付こうと、魔道具の研究を続けているのである。


 その過程で作り出した『マジカル☆リーフロッド』は、世界樹の葉を使って相当量のMPを備え、そこに『増幅』の刻印を組み込んだ自信作だ。

 火力を追求しすぎて耐久性を捨てているので、一発撃つと内部機構が全部吹っ飛ぶため完全に使い捨てだが、仕上がりにはそこそこ満足している。


 妹の趣味を理解している兄は、乾いた笑いを浮かべて再び寝そべった。


「街中でぶっ放さないといいけどな……」

「そもそも街中にこんな切り札が必要になるような相手出てこないでしょ」


 ドレッドノートは肩をすくめて、可愛らしいゆるふわポニーテールが揺れる。


「出たら出たで重要局面待ったナシなんだし。切り札は切るものじゃん」

「……まぁな」


 このゲームの魔法は想像力が物を言う。

 つまりは、『街をふっ飛ばさないように』と願えば、システムはそれに応えてくれるのだ。

 だから、プレイヤーがよほどヤケになるようなタイプでもなければ、早々街に重大な被害は及ばない、はず、なのである。


「まぁ、『家の一軒で済んでくれー』なんて考えちゃったら、家の一軒はボンッて飛ぶだろうけどね」

「それが怖いんだよ……」


 妹の人を見る目は悪くないとはわかっているので、カステラソムリエは『どうかアレを街中で使うような事になりませんように』とささやかな祈りを捧げたのであった。


「兄さん、それフラグって言うんだよ」

「言うな」


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はっやくお昼にならないかなー
屋敷の氷像の完成や...
…あちゃー…
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