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キ:状況判断の材料集め


 ダークスライムとかいう、捕まったら即アウトタイプのホラーみたいなのを避けて、僕らは一階に下りた。


 チーム初心者は一階の食堂にいた。

 暖炉から煙突の中を調べているみたいで、それが終わったら情報の擦り合わせをすることにする。


「厨房を調べてたら、ゴミと一緒に割れた壺の破片があったんです」

「高級そうな壺でしたから……あれが呪われた品だったのかも」


 あー、それさっき書類で見たやつかもしれない。

 ちょうど煙突に登ってたファンブラー・盛塩さんが降りてきたから、食堂のテーブルと椅子を借りて休憩しつつ話し合い。


「これが建物の図面」

「こっちがお貴族様の欲望に身を任せた盗難証拠書類ね」


 見つけた資料をテーブルの上に広げて渡す。

 クエストを受けてるのはあっちのパーティだからね。渡しておかないと。


「これは……厨房に破片があった壺がポルターガイストの入っていた壺っぽいですね」

「じゃあポルターガイストをなんとかすれば解決?」

「なんとかって言っても……壺はご覧の有様だし……」


 見つけた破片を見せて貰うと……あー、うん……ちょっと修復がどうのってレベルの壊れ方じゃないねぇ。

 そこそこ大きそうな壺が、強く叩きつけた感じでバラバラになってる。


「僕の連れ歩いてるオバケが言うには、ポルターガイストの他に、病気で亡くなった女の子の霊もいるらしくて。対話を試みるなら女の子の方がいいみたい」


 形見の宝石に取り憑いているらしい少女の話と、たぶんそれの事っぽい宝石が盗難証拠書類にあるのを指して伝える。

 すると、チーム初心者もうんうんと頷いた。


「異論無しです。もしかしたらその少女がポルターガイスト達のリーダーになっているのかもしれませんし」

「宝石かぁ……どこにあるんかな」

「盗品だからね……さすがに誰にでも目に付くような所には置かないんじゃないかな」


 2階は客間なのか家主の部屋なのか分からないけど、半分くらい見た中にそれっぽい宝石みたいな物は無かったと思う。


「……3階が怪しくないです? この部屋、ガラスケースとかありますよ」


 探索者Aさんが見つけた場所を見ると……うん、確かにこの部屋、ガラスケースが並んでる。コレクションの展示室みたいな部屋なのかな。

 ……盗品をコレクション扱いして展示してるなら、かなり情状酌量の余地の無い悪徳貴族だけど。


「……ところで、いま煙突登って来たんですけどねー。煙突の上からは普通に外出れそうだったんですわ」


 ファンブラー・盛塩さんの言葉に、全員の目線が集まる。


「え、まさか煙突が出口?」

「というか非常口?」

「いや、分かんないけど……なんか、屋敷の周りにさ、ゴロツキっぽい格好の人が何人かいたんだよね」


 んんん?


「え、借金取りか何か?」

「あるいは、我々の見張り?」

「わかんないけど、何にしても中途半端な状態で煙突から脱出とかはしない方がよさそうな気がする!」


 ふーん……?

 盗難の証拠書類がある場所を調査なんてとんだご乱心だと思ってたけど……調査後に冒険者を処分するつもりだったのかな? もしくは、後からヤバい書類を見られる可能性に気付いて慌てて刺客を差し向けたか。

 どっちにしても、僕らプレイヤーだからコロコロした所であんまり意味無いんだけど。


「……もしこのまま解決出来たとしても、屋敷から出る時は気をつけよう」


 帰るまでが遠足って言うもんね。



 * * *



 ダークスライムはこっちを認識していない時は足が遅いけど、見つかったらどうなるかわからないし、射程距離がどのくらいなのかも不明だから、僕らは細心の注意を払って3階へと移動した。


 目当ての展示室はすぐに分かった。


 その部屋だけ、扉が焼け焦げたみたいに溶かされていたから。


「なんでも溶かせそうなのに、わざわざ扉溶かしたんかダークスライム=サン」

「やはり有機物の方が食いでがあるのでは? 壁は石造りですし」


 ガラスケースはそんなに被害が無さそうなのが幸い。

 相棒が、スライムが近付いたら分かるように廊下に罠を仕掛けてから、部屋の中に入る。



 ──クスクス……アハハ……



 ヒエッ、仄かに子供の笑い声が聞こえる……

 扉が無いから【光魔法】で眩しいくらいに明るくするのも躊躇われて、おっかなびっくり進むしかない僕です。


「……ケースの中身は見事に盗ませたリストの物ばかりですね」

「盗品コレクション部屋か、ある意味定番ではあるね」

「もー、ここから出たら絶対あのクソ貴族しょっぴいてやろうぜー」


 やめるんだ、その台詞はフラグになる。

 ……部屋に並んだガラスケースのひとつ、その中身がぼんやりと紫色のオーラを発し始めた。

 ほらぁー!!


 武器を構える僕らは、紫色のオーラを溢れさせているのが、大きな宝石のついたブローチだと気付く。


 宝石の上に……半透明の、白い夜着を着た少女の姿が浮かび上がった。


 オバケだぁあああ!! ……けど、あんまり怖くないかな?


 身綺麗なんだよね。

 血まみれだったり、ボサボサだったり、欠損したりしてない。長く闘病してたんだろうなぁって感じに痩せてはいるんだけど。特に恨みがましい目もしてない。

 ……どっちかと言うと……何か焦ってるみたいな顔でパクパク口を動かして……


 あっ、はい。僕の仕事ですね。


「【ネクロマンスクリエイト】」


 イメージはピント合わせ。

 オバケと僕らの声のチャンネルを合わせる。

 すると……女の子の幽霊の声がハッキリと届いた。



「やぁっと話が通じるのが来たわね! かなりヤバい状況だからとにかく聞いてちょうだい!」



 …………なんか、思ったのと違うね?


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― 新着の感想 ―
死霊魔法が無かったら詰んでたんだろうな…
あ、これホラーに偽装したアドベンチャー系のシナリオっぽいぞw
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