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キ:新刊と猫


 お城に行く相棒を見送って、僕はそのまま図書館へ。


 ここの図書館は、なんと24時間営業です。

 そうじゃないと、初心者の操作説明所も兼ねてるから、ログイン時間合わないプレイヤーが入れなくなるからね。

 日の出直後でも大丈夫。


 明け方特有の爽やかな空気を堪能しながら、静かな通りを歩いて図書館に入る。

 目的の本は決まってるから、夜勤っぽい司書さんに声をかけた。


「最近翻訳が完了した本が読みたいんですが」

「あちらの棚になります」


 示されたのは新刊コーナーみたいなラック。

 司書さんにお礼を言って、ラックの本を物色する。

 この辺が翻訳された本かなー?

 三冊手にとって読書スペースへ。


 早朝から静かなファンタジー図書館でのんびり読書とか贅沢だなぁ。



 さて、本の一冊目は……これはおとぎ話の本かな?

 色んな世界を旅する空飛ぶ船の話とか、壊されて14個の欠片になった人形を集めて直してお礼を貰う話とか。

 ……翻訳必要な本でただのおとぎ話って事は無いよね。

 そのうち何か出てくるのかもしれない。写本作って持って帰ろう。



 二冊目は……卵の本。

 色んな種類の卵の孵し方と、孵したベビーを従魔として刷り込みテイムする方法。

 後半には、卵生の従魔が卵を産もうと思うようになる環境の作り方とか。

 テイマーというか、ブリーダーみたいなのが好きな人に必要な本かな?

 読むと簡単そうだけど、この本が無かったら手探りだったのか……救助できて良かった。

 これも一応写本持ち帰ろうね。



 さて三冊目は……猫の本だ!

 相棒は犬派だけど、僕はどちらかというと猫派です。どれどれ……?

 猫の……コレはおとぎ話かな? 猫型の妖怪みたいな存在の話かな?


『町中で猫を見かけても、考えなしにほいほい後をつけてはいけない』


『猫について行き、3つ目の角を曲がると、元いた町ではない別の場所を通っている事がある』

『そこは目もくらむような金塊が山と積まれた金庫であったり、素晴らしいご馳走が作られている調理場であったり、あるいは古今東西の美しい物が集められた展示室であったりするだろう。けれどもそんな場所に来てしまったら、決して猫からはぐれてはいけない』

『はぐれてしまえば道を失い、死ぬまでそこから帰れない』


『さらに4つ、猫の後を追いかけてから7つの角を曲がると、ある鍵のかかった箱の前で、猫が振り返って通行料を要求してくる』


『通行料を払えなければ、どことも分からぬ場所へ置き去りにされ朽ち果てるだろう』

『通行料を払えたならば、元いた場所に帰れるだろう』


『けれどもしも、もしも猫が辿り着いたその箱を、開くことが出来たなら──』


 ……本はそこで終わっていた。

 なんで!? すっごい気になる所で終わった!

 タイトルは……『猫の箱』

 肝心の箱の部分が書かれてない!

 えー、なんだろう。箱の中どうなってるんだろう?


 とりあえず写本は作ってと……


 ……気になる。

 すごく気になる。


『考えなしにほいほい後をつけてはいけない』かぁ……

 これってようは、『一歩間違えたら死んじゃうから危ないわよ』って警告のお話だよね。


 ……ってことは、別に死んでも復活するプレイヤーなら、ほいほい試しても問題無いよね!


 時間を見る……相棒はまだ訓練中だろうなぁ。

 とりあえず相棒を待つ間、試しに猫を探してみよう!


 本を戻して、写した本はしまって、図書館を出た。


 ……猫ちゃんどの辺にいるかなぁ?


 とりあえず適当に街をぶらつく。

 野良猫って夜行性かな? 早朝って猫は何してるんだろ。


 中世ファンタジーな世界観の街は朝が早い。

 日の出からそんなに経ってないのに、たくさんの人が朝食前のひと仕事をしている。


 あ、猫だ。

 塀の上で寝ているブチ猫が一匹。

 ……でもこの子は寝たまま動かないねぇ。起こすのも悪いからそっとしておこう。


 キャッキャと笑いながら駆け抜ける子供達。

 欠伸を噛み殺しながら朝の体操みたいな事をしている男性。

 パンの入った籠を持って急いでいる女性。

 長閑な朝の風景の中を歩く。


 お、猫二匹目。

 今度はてってけ歩いているシマシマの猫ちゃんだ。


 これはチャンス!


 僕はその猫の追跡を開始した。

 テッテッテッテッ、猫と速度を合わせて進む。

 ……シマシマの猫は、チラッと僕を振り返ったけど、そのまま速度を変えずに歩いている。

 お? これはもしかして、割と追跡を歓迎され……てない!

 猫ちゃんヒョイッと塀に登ったぁー!


 待って待って!

 僕【跳躍】が無い!


 とりゃっ! ふんぎぎき……

 跳びついて、なんとか登ろうとジタバタするけど……


 あー……間に合わなかった。

 なんとか塀に登った頃には猫ちゃんの姿はもう無かった。


 ちぇー、失敗だー


 そこへ飛んでくる相棒の念話。



(……ごめん相棒。ストロングハートベリー全部売れたわ)

(おおー! いいよいいよ、やっぱり人気商品だったね。ケーキ屋さんでも来てたの?)

(いや、城の兵士)

(兵士? なんで??)



 ハート好きな兵士が多かったのかな?

 ……そしてそんなイチゴのやりとりしてるって事は、そろそろ訓練終わりかな?


 それなら、相棒誘って一緒に追いかける事にしよう。

 猫ちゃん追跡リベンジマッチだ!


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― 新着の感想 ―
ホラー駄目なくせにそういうの追いかけるのは好きなんだね(ㆁωㆁ*) まぁ気持ちはわかりすぎるほどわかる(ㆁωㆁ*)
ウルタールかな?
(合流して猫を追跡して)お姫様抱っこで塀を駆けてくいちゃいちゃカップル…? 大丈夫?森夫婦と特定されない?(笑)
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