表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/596

キ:命の危機は薄い遭難者


 遭難者を探して、いわゆる無人島にやって来た僕達。

 ここを教えてくれた人魚パーティと別れて、砂浜と森の間の歩きやすい所を通って海岸線をぐるりと周る。


「早めに場所わかって良かったねぇ」

「それな」


 さて、この無人島だけど。

 地形はちょっと絶壁な岩山があって、その周りに平坦な森が広がってる、そんな絵に描いたような未開の島。

 プレイヤーが乗り込めなかっただけで、植物も生き物もちゃんといる島だった。


 で、さっきから森の中にちらほら見える姿がこちら。



 ウサボール Lv1



「ウサボールだねぇ」

「だね」


 長い耳のあるまんまる毛玉がポヨンポヨンしている。


「あ、あっちのウサボールちょっと大きい」

「……本当だ」



 ラージウサボール Lv4



「あれはなんか長いな?」

「本当だ! ながーい!」



 ロングウサボール Lv7



「あの毛玉は取り巻きがおるぞ」

「おおー」



 ウサボール・リーダー Lv10



「……もしかしてここ、ウサボールしかいない?」

「かもしれない」

「……もしかしてさ」

「うん、アレな?」

「そうアレ」


「「ウサウサ島!」」


 いつだかのリンゴTipsで出てきた雑学の島。

 そこには、ウサボールの親玉がいるらしい。


「ここの何処かにいるのかなぁ」

「かもね」


 ちょっと見てみたい。

 でも遭難者がうっかり遭遇してないか少し心配。

 ……うん、安否確認は急いだ方がいいよね。

 僕らはネビュラの背中に乗って、急いでベロニカが姿を確認した地点を目指す。



 ……そうしてしばらく走って。

 波と森の木々の葉擦れの音が響く長閑な海岸。

 そこに家が作られていたのを僕らは見つけた。


「ログハウスじゃん」

「ウッドデッキ付き」

「え、窓ガラスあるけど? ガラス作ったの?」

「表札かかってる」

「他に誰もいないのに?」


 なぁにこれぇ?

 困惑した僕らは……それでも顔を見合わせながらもログハウスの扉を叩いた。


 バタン


 直ぐに開かれるログハウスの扉。


「ふむ、ホライゾンクロウが見えたから手紙が届いたとは思ったが、予想よりも到着が早かったな」

「えっと……救援要請を出したルビィル・ロズさんで間違いありませんか?」

「ああ、瓶に地図と手紙を詰めて流した本人だ。来てくれて助かった」


 魔術師団長さんとよく似た声の、正反対のカラーリングをしたローブ姿の男性、ルビィル・ロズが、無精髭の生えた顎をさすりながら現れた。



 * * *



「荷物をまとめる、少し待て」


 なんでそんなに長くないはずの遭難生活で荷物があるんですかねぇ。

 健康そのもので疲れてもいなさそうな、遭難者とは思えないルビィルさんは、手作りっぽい籠にバサバサとビッシリと書き込みがされた木の皮や葉っぱを詰め込んでいる。

 それを待ちながらログハウスの中を見渡してみると……魔術師団長さんが呆れ半分に言っていた『死にはしない』の言葉の意味をまざまざと理解する光景が広がっていた。


 石を使って作られた調理場。

 吊るされているウサボールの干し肉と野草。

 アク抜き中っぽい木の実。

 鍋にたっぷりと煮込まれたスープ。

 なんなら木製の椅子とテーブルに本棚、布団こそ無いけど寝床まできちんとあった。

 ちなみに外には草を編んだロープがかけられ、洗濯物が干されていた。リアルタイムで回収されてったけど。


「サバイバル力高すぎない?」

「生活力もかな……」


 なるほどこれは死なない。

 なんならこのまま年単位で生き延びるどころか、普通に住みつける……っていうかもう開拓地だよ。


「こんな所か……ああ、鍋はどうしたものかな。愛用の品だから持ち帰りたいが、スープを捨てるのはもったいない」

「……僕らが鍋ごと預かります?」

「ああ、貴殿らは冒険者だったか。では頼む」


 鍋と、ついでに食材もインベントリへ入れて、ログハウスを後にする。

 ルビィルさんピンピンしてるから、普通にネビュラに一緒に乗ってくれた。

 ……なんだろう、思ってた救助とだいぶ違うなぁ。

 まぁ元気でいてくれた方がもちろん嬉しいんだけどね?


「……なんか、迎えに来なくても自力で帰れたように見えますけど?」

「本国の海ならそれも一つの手だったがな。こちらは適当に移動しても人里に出る確率が低いと思い止めた」

「適当……?」

「私は昔から方角を失念しやすい性質でな、島に流された時には完全にどちらが来た方角なのか分からなくなっていたのだ」


 え、方向音痴!?


「なんで一人で海に出たんです!?」

「好奇心を抑えきれなかった」


 当然のように言う。

 ……これは魔術師団長さん苦労してそう。


 呆れたような雰囲気で僕らのやり取りを聞いていた相棒が質問を挟んだ。


「……どうやってこの島に上陸したんですか? この辺、海流がおかしいらしくて、唯一上陸できそうな流れの場所には強力なイソギンチャクがいるらしいんですが」

「ああ、あのイソギンチャク……小舟で海を進んでいた時に、凶暴な魚群に襲われてな。面倒だから逃げようとして海流に捕まり……たぶんその流れが島に入る流れだったのだろう、制御が利かなくなった所で小舟を破壊された」

「破壊」

「大型のイソギンチャクの触手だった。食われかけたのを【雷魔法】でやり過ごしたが、そのまま海流に流されて島に押し上げられたのだ」


 なるほど、流されて、捕まえて来ようとした手だけバチッて弾いてたらイソギンチャクエリアを通過しちゃったんだ。


 話をしていたら、僕らが上陸した方角の海岸に出た。


 ネモにまた足場になってもらって、ネビュラがその上を走っていく。


「ほう……実に興味深い」


 目をキラキラさせないでください。

 僕のオバケなんで。研究とかダメですよ。

 ……そんな顔してもダメなものはダメですからね!


 その後、ネモを帆船にしてから港に着くまで、ルビィルさんはずーっとネモをペタペタペタペタペタペタペタペタ触っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
フッシーと意気投合しそうなタイプである
まんべんなくすべての技量レベルが高くていると便利な知識人(トラブルメーカー)な香りがすごい 面倒なクエストいっぱいこなすと最終的に最強装備や武器に繋がりそう
ウサウサ島発見はプレイヤーには朗報
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ