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ユ:ご主人の好物を求めて


「なんかベルン君、気になるモノがあったみたいなんで。ちょっと遠目の所に散歩に行ってきてもいいですか?」

「おお! 散歩は手間かと思ったけんど、お願いできるならたすかりますわ。ゲホッ……ベルン、良い子にするんだぞ!」

「任せるワン!」


 相棒が上手いこと遠出の許可を取ってくれたから、俺達はベルンの散歩用リードを借りる事が出来た。

 首輪に着けて、準備は万端。


 ペトガロアさんの風邪は薬も飲んでいるし、大事を取っているだけらしいから問題無い。


 ……で、問題は。


「……ガイモカマイムッシュって、どこで手に入るんだろう?」

「さぁ……?」


 クエストを受けたあの時、ベルンは俺に「ご主人には内緒にしてワン!」って言うもんだから。ペトガロアさんから料理の情報は聞けなかった。

 かと言って、ノーヒントで聞き込みはしたくない。俺のメンタルがもたない。


 ……仕方ない。こういう時は


「……相棒、ベルンと一緒にちょっと待ってて」

「うん? 良いけど、どうするの?」

「有志wikiで検索してくる」

「なるほど」


 食い道楽なプレイヤーのおかげでグルメ関係のデータはやたら充実してるwikiだ。本国でしか食えないメニューでもない限り引っかかるだろう。


 ベルンを相棒に任せて、俺は一度ログアウトした。



 * * *



 ……調べた結果。

 ガイモカマイムッシュは芋料理だと言う事が分かった。

 主に本国で生産されている芋を使った甘辛いマッシュポテトみたいなものらしい。

 それが食べられる店もデータにあった。

 ありがたい有志wikiだ。


 再ログインして、調べた情報を相棒とベルンに共有する。


「ピリオの食堂で食べられるらしい」

「食堂かぁ〜、テイクアウトできるかな?」


 そこまでは記載が無かったから、行ってみないとわからないな。無かった場合、事情を話して、追加料金とかで対応してもらえないか交渉が必要かもしれない。


 ベルンは料理が手に入りそうだと理解して、テンションが爆上がりしてグルグルと回っている。


「ご主人はガイモカマイムッシュのスパイシーロニオンソースがけがお好きなのですワン! 故郷の味なのだとか!」

「わかった」


 スパイシーロニオンソースがけね。


 メニューの確認が必要だから、ベルンを連れてピリオへ飛ぶ。

 場所はピリオノート南西。

『大盛りキャロットパイ食堂』だ。

 店の入り口に飾られている、ニンジンが刻印された大きなパイ皿が目印の大衆食堂。


「おおー、賑わってるねぇ」


 相棒が言うように、大衆食堂なだけあってラフな格好の人が多く出入りしている。

 犬は入ったらまずいかと思ったが、どう見ても散歩途中な犬と飼い主が躊躇いなく一緒に入って行ったから、大丈夫かと一緒に扉を潜った。


「らっしゃい! 空いてる所適当に座ってくだせぇ!」

「3番テーブル! 銀エールと魚サンド、ベーコンナッツ添えお待ちー!」

「おおーい! こっちにタワーレタスの追加頼む!」

「ウサボール肉のスープおかわり!」

「はいただいまー!」


 おお……戦場みたいな食事処だ。

 映像とかで見るならともかく、自分で来るのは苦手な雰囲気で腰が引ける。

 相棒もどこを通ればいいのかわからずしばし固まった。

 ベルンは……ベルンは何でもない顔をしてるな? まぁ建築現場に平気で同行してるくらいだから喧騒は慣れてるか。

 ……一応、飯時からは少しズレた時間なんだけどな。


 復活した相棒が、食堂の端に貼り付くようにして店の奥の厨房近くへと移動するのについていく。


「すいませーん」

「はいよ! ご注文ですか?」


 キッチンにいるウサギの獣人が応えた。


「えっと……ガイモカマイムッシュの……なんだっけ?」

「スパイシーロニオンソースがけ」

「あ、それだ。ガイモカマイムッシュのスパイシーロニオンソースがけを……テイクアウトしたいんですけど」


 要望を告げると、ウサギの獣人は……何故かキランと目が光ったように見えた。


「ほう……ガイモカマイムッシュのスパイシーロニオンソースがけテイクアウトですね?」

「はい」

「……奥へどうぞ」


 ……なんだその反応?

 よくわからないが店の奥の扉の先へと案内される。


 テイクアウトは窓口が違うのかとも思ったが、奥には別の店員が待ち構えていて、さらに下り階段があり、俺達は流れのまま地下へと案内された。


「どうぞ」


 よくわからないが地下の綺麗な扉を開いて入室を促される。


 ……そこは、ケモレベルがMAXな獣人ばかりがひしめく、薄暗くて怪しいバーのような部屋だった。


「……へへっ、新顔だな?」

「なんだよ、獣人じゃねぇじゃねぇか」


 どいつもこいつも悪そうな顔をして、自分の席の料理をつついている。


「おいおい、ここはカップルがデートに来るような所じゃないんだぜぇ?」

「あ、僕ら夫婦です」

「おおう……番かよ」

「ラブラブ夫婦です」

「バカップルじゃねぇか!」


 相棒……この空気でする自己紹介はそれでいいのか?


 というか、俺達は料理を買いにきただけなんだが……この空気はなんなんだ?



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一話で回収されるフラグ
何かの音声認証突破しちゃった?w ちょっとAI君なに考えてるの?w
ウサギのとっておき...虎獣人の占いだー!
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