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キ:悩める少女の周りの人々


 シャーロットお嬢様の話を聞いて、大体の事情は理解した。


 うーん、どう転ぶだろうねぇ……もしもロナウド君が浮気してたら最悪だけど、そうじゃない場合はただの痴話喧嘩っぽいから。

 ま、その辺に決着をつけるのは僕らじゃなくて当人とか貴族のお家とかなんだと思う。

 開拓地に来てる貴族子女が複数いそうな感じだったから、たぶんお貴族様と関わるきっかけ作りのクエスト群ぽいし。


「じゃあ、ピリオノートに行こうか」


 パーティを組めばNPCも転移オーブが使えるから、サクッと組んで、港建築現場に戻って、サクッと転移。


 こんなに早く城に戻って来る事になると思っていなかったのか、シャーロットお嬢様は露骨に狼狽えだした。


「え、も、もうですの? へ、兵士の方もお忙しいでしょうし……夕刻でもよろしくてよ?」

「はいサッサと行こうね〜」

「ああ〜」


 入口の兵士に事情を話すと、苦笑いしながら中へ案内してくれた。


 廊下を歩く間、シャーロットお嬢様はチラチラとすれ違う兵士に目をやっている。

 ロナウド君がいないか探してるのかな?

 でも見つからないまま、前にも通された部屋に到着。


 せっかくだから、待っている間に訊いてみようか。


「ロナウド君ってどんな見た目の人?」


 シャーロットお嬢様は、少しはにかみながら、出された紅茶に目線を落としつつ答えてくれた。


「ええと……髪は紫ベリーのような色で、背は私よりも高いです。顔立ちは整っている方なので、鍛錬をする姿は女性に人気があり……そうだわ、ここのお城の兵士なんて鍛錬を見られる機会は多いのだもの……メイドは肉食獣だとお母様は言っていたわ。ロナウドを放って置くはずが……」

「はいどうどう、落ち着いて落ち着いて」


 ゴゴゴゴゴ……って感じに黒いオーラが漂いそうなシャーロットお嬢様を宥めて続きを促す。


「鍛えてるなら筋肉質な感じ?」

「いえ、むしろ鍛えても鍛えても筋肉がつかないと嘆いていましたわ。私のお祖父様にアドバイスを求めていたほどで」

「じゃあ結構細身なのかな……」


 うーん、記憶に引っかからないなぁ……とはいえ、僕はすれ違うだけの人はまったく記憶に残らないからなぁ……


(相棒はそれっぽい人見た記憶ある?)

(いや、無いな)


 そこまで兵士さん達と関わり無かったもんね。


 うーん……と僕らが記憶を辿っている間に、シャーロットお嬢様は何か違う事を考えていたらしい。

 おずおずといった感じに、質問してきた。


「あの……お二人はご夫婦なのですよね? その……長く離れている時など、不安になったりはいたしませんの?」


 はて、長く離れている間?

 それは前提が違う。


「長く離れたくないから結婚したんだよ」


 そう答えると、シャーロットお嬢様はものすごく驚いた顔をした。

 あー……中世ファンタジー世界観の貴族令嬢に、現代の自由恋愛夫婦の価値観を語って大丈夫だったかな? ……まぁ、もう遅いけど。


「な、なるほど……そうですわね、妻となってしまえば、開拓地へ共に来ても問題なかったのですわ!」

「そうだね。仕事中は仕方ないけど、帰ってきた後なら、お互い一緒にいたいと思えばずっと一緒だよ」


「ずっと一緒……」と口の中で繰り返すシャーロットお嬢様。

 う~ん、頬を赤らめてて可愛いねぇ。そもそもが美少女だから破壊力抜群。

 こんな可愛い子を放ったらかして、ロナウド君は何してるんだかねー


 そんな感じで自他共に認めるバカップル夫婦の思考回路を伝授していると、コンコンとノックの後に、筋肉が分厚い御老人が入室してきた。

 使い込まれた鎧の上にしっかりとしたマント。旅人とか冒険者って雰囲気だけど……


「お祖父様!?」


 え、お祖父様?


「シャーロット、久しいな! 元気そうで何よりだ!」

「お祖父様こそ、一昨日こちらに立ち寄った際はいらっしゃいませんでしたわね?」

「引退した身で城に常駐するはずがなかろう。荷馬車の護衛で出かけておったわ!」


 なんだかほのぼのと、久しぶりのお祖父ちゃんと孫をやっている二人。

 お祖父ちゃんは開拓地にいたんだねぇ。


(……これって、僕らはもうお払い箱でいいのでは?)

(そんな気はする)


 仲良しお祖父ちゃんみたいだし、そのままお祖父ちゃんが観光案内でいいんじゃないかな?


 なんて考えていたら、そのお祖父ちゃんは僕らの方を見てニヤリと笑った。


「その出で立ち、主らがサフィーラの話しておった魔女と狩人だな?」


 サフィーラ……えっとサフィーラは確か……魔術師団長さんのはず。

 ……魔術師団長さんを思いっきり呼び捨てるこのお祖父ちゃんは何ポジ?

 そんな僕らの内心の疑問に、お祖父ちゃんはすぐに自ら答えを返してくれた。


「儂はグリッタランス・スワド・ブロニと申す! ラッセルに引き継ぐまでは入植地ピリオノートの騎士団長を務めておった! まぁ今はただの引退爺じゃ。外で会ったらよろしく頼むぞ」

「お祖父様は開拓神様の加護を頂いた聖人様でもあるんですのよ」


 あ、教会で聞いたやつだ!

 シャーロットお嬢様! お祖父ちゃんだいぶスゴい人じゃんすか!


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― 新着の感想 ―
開拓の加護……つまり、ルールは破るためにある?(彼は真顔で書き終えた
本国貢献度と重要NPC含むNPC好感度と認知度に聖人の知識辺りでイベント起きてそう ...つまり「斥候クロウ隊のお話」著者キーナ先生!
破天荒爺様とそっくりなお転婆姫だったかw 目立つ人たちに目をつけられたなぁ
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