キ︰ご注文、ご生産、ご生誕。
相棒を連れて、露店広場に戻ってきた。
別に僕が注文だけしても良いんだけどさ。
『あんなのも付けられますし、こんなのも付けられますよ。どっちがいいですか?』みたいな事言われたら、僕じゃ返事出来ないから。
だからっていちいちメッセージで訊いてたら時間かかっちゃうし。ね?
さっき見た時に、相棒が今着てる装備を買った店の人がいたからね。同じ人に頼めるなら、その方がいいかなって。
露店には『素材持ち込みオーダーメイドOK』の看板もある。
とりあえず、最初は僕が店員さんに声をかける。
「すみません、素材持ち込みオーダーメイドお願いします」
「あ、この前の。ありがとうございまーす!」
おお、覚えられていた。
こんな序盤で金に糸目をつけなかったから印象に残ったらしい。
「この人の装備を、コレを使ってお願いします」
麻袋に入れた黒いキツネの毛皮を渡す。
「はーい、確認しまーす……!?」
袋の中身を確認した店員さんは、一瞬ビックリした顔で固まった。
「何か?」
「……いえ、なんでもないっす!」
さて品質か仕様か、どっちがビックリ要素だったのかな? でも、何事も無かったみたいにとぼけた顔したから、よし!
「兄弟さん? 友人さん?」
「旦那でーす」
「はい旦那さん。装備は軽いのがいい感じですよね? 何か希望とかあります?」
「……特に」
相棒の口数が激減している。
「素材の感じ、隠蔽重視で仕立てていいっすか?」
「それで。あ、矢筒……矢を入れる所、三つくらいにできます?」
「出来ますよー」
うん、やっぱり連れてきて良かった。
注文完了して、相棒とシイタケさんがフレンド登録。店員さんは製作したシイタケさん本人だったよ。
後は適当に露店を冷やかしてまわった。
相棒も試験管なんかを買い足してたし、来てよかったね! 目は死んでるけどね!
* * *
さて、拠点に帰還。
相棒は憂さ晴らしと欲しいものを採りに森へ。
僕は拠点で物作り。
作りたい物は色々あるけど、まずはずっと後回しにしてた森の木の製材をしてみよう。
「【伐採】!」
なんか【伐採】使う時って声に気合が入っちゃうんだよね。
森の木は、丸太から建材になりました。
【微睡の木の建材】…品質★★★
微睡の森の木を製材した物。
夢の力が滲んでいる。
杖の時もそうだったけど、この夢の力って何なんだろう? ベッドとか作ったら良いことあるのかな?
ま、それは本拠点建てる時でいいや。
建材としては、グルグルした木目が目立つけど、ちゃんと普通の木材の形になってくれたから、使う分には問題なさそう。
色は木材には珍しい、うっすらと青みがかった白。
……これは、他の木材の家具と並べると浮くかもね。使うなら揃えるか、小物単品だけにするとかかな?
とりあえず【木工】で椅子を作ってみる。
【微睡の椅子】…品質★
微睡の森の木で作成した椅子。
とてもリラックスできる。
おお、リラックス効果が。
品質が低いのは僕の木工の腕の問題かな。
出来上がった椅子は、元々の木の色そのままだから、塗装もしていないのに白い。
「……テーブルも作ろうか」
もうセットにしたほうがしっくり来る気がする。
小屋の広さ的にも、まぁ大丈夫。
二人分の食事が問題ないくらいのテーブルを作成。
椅子と合わせて、気になる角の面取りをして、とりあえずオッケー。
「……散らかったなぁ」
外作業とはいえ、木屑が溜まってしまった。
「箒作るか」
軽く壁の外に出て、出来るだけ細い枝を集めて、ついでに柄にちょうど良さそうな枝も拾ってきた。
細い枝を束ねて縛って……柄に巻いて。
「イイじゃんイイじゃん?」
白系の、中々オシャレに見える箒が出来たぞ?
【夢掃きの箒】…魔攻+10、魔防+2
微睡の森の木の枝で作られた箒。
掃き捨てたモノを夢の彼方へ送る。
武器としても使える。
何故???
え、ゴミは何処へ行ってしまうの??
わかっちゃいたけど、この森の木材を使うと、素材の味(特殊効果)をふんだんに活かした逸品ばかりが出来上がるね?
……でも、魔女っぽい装備が好きな人は、箒が武器扱いできたら嬉しいかも? というか、僕がまさにそうだ。今被ってるのも三角帽子だし、絶対に合う。
ある程度落ち着いたら、売る用の箒を作ってみても良いかもしれない。
なんて考えながら、とりあえず掃除した。
……すごい、本当に木屑が掃く先から消えていく! なんて便利なんだ! リアルで欲しい。
ついでだからそこら辺の枯れ葉も掃除しちゃおう。
ルンタッタルンタッタと鼻歌混じりに掃除をしていると……何か黄色いフワフワしたものが箒の前に飛び出してきた。
「わわわっ!?」
え、なになに?
手に乗るくらいの大きさのフワフワは……ヒヨコだった。
ピヨピヨピヨピヨ鳴いている。
「えっ、可愛いー! どうしたのこんなところで、箒危ないよ?」
ヒヨコはピヨピヨ鳴きながらこっちを見ている。
か〜わ〜い〜い〜!
よく見たら一匹じゃないや、二匹、三匹……四匹……でもなんでここにいるんだろう〜?
「………………えっ、なんでここにヒヨコがいるの!?」
慌てて箒を放り出してヒヨコを拾い上げた。
一匹、二匹、三匹、四匹……え、待って待って? まだいる!? 十匹できかない! しかもこのヒヨコ、なんか頭に双葉生えてない!?
「主〜、何やら畑からヒヨコが湧いておるぞー」
フッシーの声に呼ばれて駆けつけた僕が見たのは。
「なんでぇぇえええええ!?」
畑をピヨピヨと我が物顔で闊歩するヒヨコの群れだった。