表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/596

キ:二人なら、すぐにペースを取り戻す。


 珍しくのシリアス展開から一夜明けて、仕事行ってきました。

 ログインはまだです。


 本日の雄夜お手製晩御飯は、素麺と、ゴマドレッシングをかけた豚の冷しゃぶサラダ。

 ちゅるちゅるもぎゅもぎゅと美味しくいただくけど、今日は二人揃って口数は気持ち少な目。


 ……はぁ

 ゲームだろうとなんだろうと、メンタルが抉られた直後はしんどいね。

 頭の中で、ずっと色々考えちゃう。


 ……そうしたら、ずーっと考え事してるのが落ち込んでるみたいに見えたのか、雄夜が僕の顔を覗き込んできた。


「大丈夫?」

「うん? ……うん」


「具合悪い?」

「いんや、大丈夫」


「じゃあメンタルブレイク(メンブレ)してる?」

「ん-……そこまでじゃないかな」


「……しんどかったらやめてもいいんだよ?」

「ん?」


 何を?


「……エフォ(EFO)の事?」

「そう」


 ふむん。

 言われて少し考えてみる。


 まぁ、確かに出会った幻獣の『突然の死!』は少し堪えた。


 そんなに関わりは多くなかったけど、ちょっと強引にクエストを受諾させられたりもしたけど、恋愛沙汰が大好きな……あれだ、良い人紹介するのが生き甲斐な仲人奥様的なキャラだった。

 うん、死期が見えてたから強引な手段も取ってたけど、根っこは良い人な感じのフクロウさんだったから……うん、いつぞやの蛇精霊よりは好きなキャラだったから、『なんで死ぬの!? ヤダヤダ!』って混乱もした。


 でもまぁ、フルダイブVRMMOはリアルと変わらない五感で没入感がすごいから、その時は感情もグワッとなって泣いちゃったってだけだよ。

 ログアウトして一息ついて一晩寝たら、ちゃんとリアルとゲームの区切りはついてる。


 だから……


「……イヤになったわけじゃないかな」

「そう?」

「うん」


 そうだね、『しんどい』っていうのが語弊があったかもしれない。

『重い展開だった』、かな。


 合わない人は合わないかもしれないね。

 というか、フルダイブVRのゲームそのものが、リアル過ぎて合わない人にはとことん合わないジャンルだし。


 でも僕はちゃんと、自分が舞台に参加しているゲームとして、楽しめてるよ。


「雄夜は? やめたくなってない? 大丈夫?」

「まぁ、大丈夫。楽しいよ」


 ならよかった。


「へこんでたわけじゃなくてね……いっぱい情報が入ったからさ、ちょっと初心に返ってた感じ」

「初心?」

「うん。『情報の抱え落ちはよくないと思います』」

「ああ」


 リアルとゲームの区切りが付いていても、NPCがどうでもよくなったりはしない。

 親しく関わってくれたNPCとかお気に入りのNPCとかはね、やっぱり良い方に進んで欲しいなって思うわけよ。死んだら悲しい。


 で、あのフクロウさんが命がけで取ってきてくれた重要情報を僕らは持っているわけだからさ。

『絶対無駄になんかしない!』『必ず滅びに勝ってみせるからね!』……なんてヒロイックな厨二病が少ーしだけ顔を出しているのさ。


 ……大丈夫。気持ちが燃え上がるまでは行ってない。

 冷静な自分はちゃんといるから、突如勇者ムーヴしたりはしませんとも。


 よって、またなんとかして内容を周知したいなと思う。


「だから、どうやって拡散するのがいいかなーってずっと考えてた」

「なるほど。何か思いついてはいる?」

「んー、大体は?」

「どんな?」

「また本でも書こうかなって」

「ほう?」


 最初にパレードに乗り込んだり、スキルについての本を書いたりして。その結果がどんな感じになったのか、僕はスレに目を通した雄夜からなんとなくだけど聞いている。


「我々、エフォ(EFO)内のネームバリューだけは無駄にあると思うんだよね」

「そうだね、無駄にね」


 そして今まで発信してきたのは、皆が知っておいた方が良いんじゃないかなって思った事ばかりだった。

 だから、その実績の積み重ねによって、僕らが出す情報は信憑性が高いと受け取ってもらえるんじゃないかなと思ったのだ。


「あと、ついでじゃないけど……ホライゾンクロウってプレイヤーにも解放されたんだよね? だったら、オバケだった頃のこととか、お城の許可もらえたら書いてみたいなって」

「なるほど」

「どっちもそんなボリュームにはならないだろうから……あっ、これはいわゆるウス=イホンでは!?」

「……まぁ、確かにそうか」


 もうすぐ夏のイベント。

 そこで『出張露店広場』があるから、そこで売ったらどうかなーと思ってる。


「うん、まぁ良いんじゃない? ……その前に、蜂のお姫様の里親探しだけど」

「それな」


 蜂のお姫様御一行は、ひとまず報酬で詰め込まれた蜂蜜を預けて凌いでもらっている。

 でも早く落ち着きたいだろうから、今日はログインしたらコケッコの時みたいに里親募集の露店を立てないとね。


「……うん、雄夜と話してたら頭の中整頓されていつものテンションになってきた気がする」

「そう?」

「うん、さすが雄夜。好き」

「俺も好きだよ」


 じゃあ、食べたら諸々済ませてログインしようか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この作品苦いところと甘いところの差が激しいから紅茶に砂糖入れるかが悩みどころなんよね...牛乳だけ入れるか...
鉢姫「どどど、どーしよ!」
ここで「知ってる」じゃなくて「俺も好きだよ」って返すらへんがやっぱりイイ男なんだよなぁ、雄夜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ