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キ:穏やかな相手が甘いとは限らない


 僕らが久しぶりに訪れたブリックブレッドは、相変わらずレンガ造りの建物がステキな街だった。


「観光地って感じだし……食事処と、宿と……あとは装備じゃない服とか……素材の店も多いかな?」

「馬車も多いし、NPC向けの繁華街って感じか」


 確かに、あんまりピリオノートで見ない感じの、高級な服を着た地位の高そうな人が多い。


 すれ違う貴族の老夫婦っぽい人の会話が耳に入った。


「本国へのお土産は何にしようか」

「今度は息子夫婦達も一緒に来ましょうね」


(……異世界に、視察旅行に来てる?)

(かもね)


 こっちが大街道が出来て他の街にも行きやすくなったから、移住する開拓者以外にも地位の高い人は行き来するようになったとか、そんな感じかな?

 開拓好きなお国柄みたいだし、その内移住してきたりもするのかも?

 これを見越して観光地にしたならすごい先見の明。


 ブリックブレッドは、ピリオ方面から入る西側と、反対側の東側に門がある。


 僕らは東側の門から外に出た。


「よし、じゃあ出発ー!」

「気をつけて行こう」



 * * *



 四方の街より遠くへ行くのはエゴマ亭に泊って以来かな?

 ブリックブレッドで見つけて買った『涼しい魔道具』を首から下げて、僕らは森と平原が交互に続くフィールドを歩いて行った。


 そしてリアルで数日経って、ようやく目星をつけていた森に辿り着く。


「結構遠かったね……」

「それな」


 ここで合ってるといいんだけど。


 そんな心配もいらなかったみたいで


「やーっと着いたのね。人の子は足が遅い、覚えておくわ!」


 頭上から降ってきた帽子越しに聞いたのと同じ声。


 半透明の白いフクロウが、大きな木の上からホッホゥと僕らを見下ろしていた。



 * * *



 フクロウに先導されて森を進んで行く。

 随分と大きな花が沢山咲いてるメルヘンな森だね。

 そんな森を歩いていると、チュピチュピとハチドリみたいな鳥が集まって来た。


 ……デカいね??


 うん、形はハチドリなんだけど大きさが握り拳よりちょっと大きいくらいある。

 このサイズでハチドリの飛び方してるのはファンタジーだねぇ。


 案内されたのは、座るのにちょうど良さそうな倒木のある広場。


「はい、楽になさって」


 とりあえず二人並んで倒木に座る。


「人の子はこちらの流儀がわからないだろうから、質問は最後にしてくださいな。まずはこちらの要望を伝えるわね」


 はーい。

 なんというかこのフクロウ、やりとりに慣れている感じ。


「私は『絆の梟幻獣』、(つがい)という尊い絆を結んで放浪している、愛の使者よ!」


 んんん〜……思想が強そう。


「今回の私は、周囲を飛び交うニードルバードの愛の手助けをしにやってきたの。初夏はニードルバードの恋の季節! ステキな出会いをして、意中の相手に想いを伝えて愛を育む……はずだったのだけれどねぇ」


 フクロウは「ハァ」と優雅に溜息を吐いた。


「ニードルバードは花の蜜を好む鳥。中でも『マロイアマイレンゲ』が大好物で、求婚する時はこの花を贈る習慣があるのだけど……」


 チラリとフクロウが、どこか遠くを見るように首を動かす。


「ここの近くにねぇ、大きな大きな蜂のお城があるのですって。そこの女王様はね、普段は周りの食事を考慮した採集を行ってくれるのだけど……最近はどうもいつもより大量に集めているらしくって」


 せっかく花を見つけても、蜜が空っぽの事がちょいちょいあるらしい。

 これではプロポーズなんて出来やしない。


「だからね、貴方達、蜂のお城で事情を訊いてきてちょうだいな」

「……梟幻獣さんは行かないんです?」

「そういうのは守備範囲外よ」


 ええー?

 フクロウさん曰く、いくら絆の幻獣とはいえ、恋愛に直接関わらない事はしたくない主義なんだとか。

 こだわりが強すぎる。


「では、質問があればどうぞ?」

「えっと、じゃあ……どうして、僕らが話を聞いてたのがわかったんですか?」

「それはだって、私は『絆の梟幻獣』だもの!」


 この帽子に使われているのはキキミミズクの羽角。

 ミミズク含めた同じフクロウ族という『絆』を持っているから、絆で繋がれた耳目が向いていればすぐに分かるのだという。


「ほあー、スゴイ」

「でしょう?」


 フフンとドヤ顔をするフクロウさん。


「……ところで僕ら、幻獣って言葉が通じないと思ってたんですが」

「そうね。普通は通じません」

「……梟幻獣さんはどうして通じてるんです?」

「それはだって、私は『絆の梟幻獣』だもの!」


 あらゆる縁の繋がりに特化している絆の幻獣は、あらゆる意志あるモノと会話が通じるらしい。


「精霊はお役目という義務があるから権限を貰っているだけね。私のような絆の幻獣を含め、そういう事が得意な幻獣はお話出来るはずよ」

「へぇ〜」


 なるほど、動物の姿をしているモノは、本当は普通の動物と同じで種族が違うとお話できないのかぁー。

 そう考えると、オバケならなんでも話せる死霊魔法は、かなりコミュニケーション特化の魔法なんだねぇ。


「他に訊きたい事は無いかしら?」

「んー、特には? 相棒は何かある?」

「いや、別に……依頼として受けるなら、その蜂の城がどこにあるのかは確認したいけど」

「あら! まさかこの期に及んでお断りするわけないわよねぇ?」


 ん? なんだろう、その含みのある言い方は。


 相棒からフクロウさんへ視線を戻すと、フクロウさんはクイーッと首を回しながらニッコリと笑った。


「私、前払いとしてきちんと貴方達の質問には答えたわ? 知識は返品できないでしょう? じゃあその分キッチリお仕事してちょうだいな?」


 ……ああーっ!?

 やられたぁー!!



 ──クエスト『蜂の女王への謁見』を受諾しますか?



『はい』しか選択肢無くなってるやつだー!!


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― 新着の感想 ―
最初から報酬と言わず寄越した情報は報酬に値しないと思ってる私は、他に報酬くれないならクエスト受けないわ(ㆁωㆁ*)
絆(強制)
汚いさすが絆の幻獣汚い(某ネトゲ風)
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