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ユ:露店広場の珍事


 神父による神様関係の講義は、それなりの時間と情報量をかけて、終わった。


(……なんで、講義受ける事になったんだっけ?)

(えっと〜……ストロングベリーかな)


 イチゴをつついただけで随分濃い話が出てきたな……


 神父と子供たちにお礼と別れを告げて、俺達は露店広場に向かった。

 シイタケさんからメッセージの返事が来たから、変装装備を強化してもらうために預けに向かう。


「どーも、お二人さん」

「こんにちはー」


 希望は先にメッセージで送ってあるから、布の袋に入れている変装用の衣装をシイタケさんに渡した。


「……んんー、なるほどですねぇ。あ、これ素材はNPC店売りの布なのか……」


 ふむと少し思案したシイタケさんは、意味深に笑ってメッセージを送ってきた。


『素材変えて新調した方がいいと思うっす』

『あー、やっぱりです?』

『希望の素材持ち込みあります? 無ければこっちで良さげなの見繕いますよー』

『……特に無いんで、お願いします』

『ウィッス。あと、これ染めた素材頂ければ、見た目も同じ感じに仕上げます』


 インベントリを漁って、微睡(まどろみ)の森の木と葉を別の袋に詰めて差し出すと、シイタケさんは「Oh……」と苦笑いして天を仰いだ。


『なんか見た色だと思ってたけど、これかぁ〜! 例のベッドの木の色かぁ〜』

『です』


 ケタケタと笑うシイタケさんにお任せして、俺たちはその場を後にした。


(預けてる間に身バレしそうな戦闘起きないといいけどね)

(それな)


 同じ感じに仕上げて貰うのに、見本として預けないといけなかったからな。



 あとは……ついでにそろそろ近接戦闘用の短剣も強いのが欲しい。そう頻繁に使う物じゃないが、俺が近接で戦う時は、つまり敵に接近している時だから、刃物の威力に物を言わせないと詰む。


 ……と思いながら店で見繕ったが、どうもピンとくるのが無かった。

 素材を買ってジャックに頼むか。

 俺は精神が高くないから、レゾアニムス鋼だと都合が悪い。

 露店を見て回って、質の良い鋼鉄のインゴットをいくつか買った。


 買い物はこんなところか……

 じゃあ帰るかと転移広場側の出口に向かうと、相棒が途中にある何かを見た途端に吹き出した。


「……何? どした?」

「待って……アレ」


 アレ、と言いながら指す先には……スープの屋台?



 ……ちょっと待て?

 現在進行形で煮込んでる寸胴鍋に骨でできた鳥籠が入ってないか?


 籠の上に不死鳥のオバケが見えるんだが???



「……はぁ?」

「ちょ、ちょっと行ってみよ?」


 見えた物が信じられないまま店に近づくと……籠の上の不死鳥の霊は、ものすごく怠惰な姿勢で横たわりながら小皿に注がれたスープをちびちびと飲んでいた。


「料理長、こちらの鍋はもうよいぞ!」

「あいよガラちゃん!」


 屋台に掲げられた看板は『鳥料理専門店』


 いや、不死鳥も鳥だけど!?

 ……まさか『ガラちゃん』って不死鳥の名前か!?


「へいらっしゃい。今日のお勧めは鶏手羽と野菜の煮込みと、特製不死鳥ガラ卵スープだよ!」

「良い出汁でとるぞ」


 出てていいのか不死鳥。


「不死鳥の骨って煮込んでいいんです?」


 宇宙猫みたいな顔になりながら相棒が訊くと、店主と不死鳥は『言うと思った』みたいな顔で頷いた。


「うむ、最初はふざけるなと思ったがな……手間暇をかけた美味なる料理を食して気が変わった。どうせ霊体の今なら痛くも痒くもないからな!」

「不死鳥の間ではめっちゃ怒られましたけどねー。美味い料理を食べさせるかわりに煮込ませてもらう契約を結んだんですよ。ただねぇ……最近ハードルが上がっちゃって上がっちゃって……」

「美食の道に終わりなどない」

「ガラちゃんってば舌が肥えちゃってさぁー!」

「わかったら日々精進あるのみよ! オラッ、美味しくなーれと心を込めて調理するのだ料理長!」

「へいへーい」


 ええー……


(……もしかして、コレも主ナイズ?)

(あっ……)


 染まりすぎでは???


「……まぁ、合意の上ならいいんですけど……そんなに何度も煮込んで骨大丈夫なんです?」

「うむ、心配は無用。蘇生こそ出来なんだが、骨が消失せん程度には再生しておる。名付けて、無限出汁!」


 無限に煮込まれる本鳥が無限出汁言うな。


「……そういうわけで、我のスープ、買っていかぬか? 金が入ればより良い食材を仕入れられるので、じゃんじゃん買ってもらいたい!」

「直球!」

「ガラちゃーん、お金の話を出すのはちょっと生々しいよー」


『我のスープ』とか言って白骨死体を煮込んでる方が生々しいが??


「まぁ裏事情は置いといて……不死鳥のガラスープ。リジェネ効果のポーションとして使えるよー、しかも美味しい!」

「ウム、さすが不死鳥であろう!」


 性能が良いのがまた酷い。

 しかし、生産者どころか材料と直接会話を交わしていると、ちょっと飲むのは躊躇われるぞ。


(『私が作りました』っていうか、『私()()作りました』って感じ)

(それ)


 ……まぁ普通に他の料理は美味そうだったから、鶏手羽と野菜の煮込みは買った。帰ったら食べよう。




 なお、拠点に戻ってフッシーにスープ屋の不死鳥の話をしたところ……


「……マジ?」

「マジだよ」


 相棒ナイズされてるなぁって感じに呟いて宇宙を背負っていた。

 そうか……変わり者扱いされてたフッシーでもちょっとわからん感覚か……


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― 新着の感想 ―
大丈夫、国民的大人気ヒーローだって自分の顔を食べさせるし。
ガラちゃん!!! フッシーの異質味が薄くなったw
自分の骨食わせる美食家は不死鳥界のサイコパス野郎でしょww 普通だったら製作者は主要NPC並びに不死鳥からの好感度大ダウンしそうなのに AIの自由度が高いばかりにこんな大事故が…w いやまあ他のNPC…
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