ユ:魔法と図書館の話
ログインまだです。
俺も真紀奈も休日の朝はダルい。
昨日も休みではあったんだが、夏用の買い出しだなんだで1日使ったから精神はともかく体は疲労している。リアルは体力無いからな……
精神の方は、真紀奈が日中も一緒にいるなら上向きにはなる。
「マーガリン♪ マーガリン♪ はーちみつの〜〜♪」
寝ぼけておかしな歌を歌いながらトーストの準備をする真紀奈に、手拍子を合わせつつ目玉焼きが焼けるのを待つ。
あー……夏だ。今日も暑いな。
* * *
ログインすると、涼しい気温なベッドでキーナと一緒に起床する。
当然、ゲーム内の家にはクーラーなんて無い。
……薄々思ってたが、これは確定か?
「……ここってもしかして、季節変わらないのか」
「え? ……あー、そういえば暑くないね。ピリオは暑くなってきてたけど」
ってことは、暑さが必要な植物はうちの拠点では難しいな。
覚えておこう。
ゲーム内の朝食を終えて、いつも通りお互いやりたい事を上げていく。
今日は……というか、相棒がそろそろやっておいた方が良さそうな事を済ませるか。
「相棒、そろそろ光か闇か、どっちかの魔法選んで覚えた方がいいんじゃない?」
「あー、そういえばそんなのもあったねぇ」
最初のキャラメイクの時、魔法を覚えるのはちょっとした制限がある。
まず基本四属性を取るか、光闇二属性を取るかのどちらかを選ぶ事。
基本四属性は火・水・風・土の四つの事だ。こっちを取る事を選んだ場合は、この中から二つまで取る事が出来る。
光闇二属性はそのまま光と闇の事。こっちは光か闇か、どちらかひとつしか取る事が出来ない。
ヒーラーをやるなら光属性一択。その場合、闇属性の魔法は一切習得できなくなるわけだ。
どの魔法も図書館に本があってそれで習得出来るから、事前に情報を仕入れた戦闘勢は初期のキャラメイクで魔法は取らず、ゲーム開始後に図書館に走るらしい。
ただ、開拓勢は入植直後に自分の身を守りつつ開拓地を決める必要があるからそうはいかない。魔法使い系のステータスにしたなら尚更だ。
さて、以上を踏まえて俺達だ。
俺は基本四属性は本で習得済み。
そして死の精霊であるネビュラを仲間にした事で自動的に【闇魔法】を習得した。だからもう【光魔法】は覚えられない。
相棒も基本四属性は本で習得済み。
光闇属性はまだ未習得だ。
「うーん……取るなら光かな? 色んな場面でヒーラー足りてなかったし」
「いいんじゃない?」
二人で動くなら、光と闇がそれぞれいた方が便利だろうな。
相棒はそこから何か連想でもしたのか、記憶を探るように宙を見ながら訊いてきた。
「そういえばさ……魔法で、二つの属性の合成? みたいなの撃ってる人たまにいたよね。あれってどうやるんだろ。想像力次第でやれば出来る系の物?」
「いや、あれは魔法のレベルを上げないと出来ないよ」
「どのくらい?」
「最低20」
「あ、結構必要だね」
魔法のレベルは、まず10になると、上位属性があればそれが解放される。
次に、20になる事で二属性混合の【ダブルクリエイト】が使用可能になる。
そのまま30になれば三属性混合が、40で四属性混合、といった具合に混ぜられる種類が増えるようになる。
例えば火と土を二属性混合するなら、火も土も両方スキルレベル20になっている必要があるわけだ。
「……あれ? 最初のピリオ襲撃で火と土の混合してる人いなかった?」
「いたね」
「……あの時で、もうスキルレベル20になってたってこと?」
「そうだよ」
「すごいね!?」
「そうだね」
戦闘ガチ勢の本気って感じだったよな。
なお、俺達はかなりのんびり遊んでいるから20どころか10を超えているのはひとつふたつしかない。
混合魔法はまだまだ先の話だ。
「じゃあ今日は図書館かな……相棒も一緒に行こう?」
「俺も?」
「どうせならのんびり他の本も見たいなって。そしたら時間かかるからさ、一緒にいたい。退屈がイヤならいいけど」
「……まぁ、図書館はダンジョンと同じ個別フィールド扱いだし、いいか」
図書館の本はwikiに検索機能付きの一覧があるから、俺が興味を引く物は無いってわかってるんだよな。
あそこはほとんどがゲーム的チュートリアルな内容の本。
それこそ初めてVRMMOを始めた人は開拓勢でも入植前に図書館に送り込まれて、そこで体の動かし方の指南本を読みながら練習をした後に入植地に行くらしい。そのために個別フィールド扱いなんだろうって話だ。
まあ、とはいえ図書館の雰囲気はいいからな。
静かだし、ゲームなだけに飲食可能な席もあるし、カフェにでも行くつもりで行くことにするか。
「暑くないといいけど」
「……流石に本がいっぱいの所は暑さ対策するんじゃない?」
だといいけどな。