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ユ:ネモの仕様


 新しくネモを仲間にして、ひとまず俺達は拠点に帰ってきた。


「ただいまー」

「おかえりなさい」

「新しいオバケが仲間になったよ」

「あら、やったわね」


 ベロニカの周りの豆ニワトリ達が妙に綺麗に整列してたのは気のせいか?

 ……まぁいい。

 それよりも今は新入りの能力の事だ。




 ネモは霊蝶に少し似ている。

 集合体みたいな在り方もそうだし、思いつきを単語で垂れ流しているような喋り方もそうだ。


 じゃあ具体的に霊蝶と何が違うのか?


 仕様が気になった俺は確認のためにとりあえずネモを質問攻めにしてみた。

 若干ネモがぐったりした気がしないでもないが、とりあえず理解はできたと思う。



 霊蝶は『死の海に向かう』っていう共通の目的のために集まっていて、その結果個性が見えない状態になっているだけ。


 対してネモは、そもそもが個性に乏しい・個性を持ちたくない霊の集団だ。


 名前、分類、役目、生まれる理由、そういったモノを拒絶して死んだ魂。

 型にはまりたくない、自由でいたい、そういう希望があるから魂の形は不定形で、形が定まらないから似たようなモノ同士がくっついて集合していた。

 霊蝶やいつかのカラスのような目的のある集団じゃない。

 いつのまにかボヤッと水の底に溜まっていた溶け残りみたいな、そんな集まりなんだろう。


 そんな集まりでも意思はあるから、自由過ぎて退屈してしまっていた。

 だからといって、死の海に向かって『何か』になるのは嫌だ。

 そこへちょうどよく死霊使いがやってきたから、名前も何も無いから滅多に満たされない承認欲求を『我はこういう存在なので汝の力を示せ系戦闘』で満たしつつ、連れて行ってもらって暇を潰そうとしたわけだ。


「なのにスルーされタ」

「ドウシテ」

「ヒトの子、こういうのスキなのニ」

「……相手が悪かったとしか」


 キーナも自由人だからな……そんなわかりやすく『欲深い人間』なんて型にはめようとしたら『いらんが?』ってなるぞ。



 そんなネモのゲーム的な仕様は、また随分とプレイヤー次第で自由な仕様だった。


『何にでもなれる』と豪語したあたり、ゲーム的な縛りはあるだろうけど、かなり広い範囲で本当に何にでもなれたんだろう。

 プレイヤーが『ヒーラーが欲しい』と思って回復系が得意そうな名前をつければヒーラーの霊に、『火魔法が欲しい』と思って火系の名前をつければ火属性の霊に。

 そうして埋めたいと思っていた穴を自由に埋められる死霊。そういうタイプの仲間だ。


 でもキーナは、『名無し』っていう在り方をそのまま受け入れる名前をつけた。

 その場合はどうなるか。


「何でも強化スルヨ」

「何デモ」

「全部」


「でもスゴクないヨ」

「成ってないカラ」

「真似ッコ」


 そう、オールマイティと見せかけた器用貧乏になる。


 籠に入れて持ち歩く強化は、魔法どころか全てのスキルをカバーする代わりに強化値が軒並み低め。コダマ爺さんの木属性と比較検証してみれば一目瞭然だった。

 そして召喚して使う場合はもっと顕著で、具体的に何をどうしたいのか使用者が考えて呼び出さないとMPを消費するだけで何もしない。

 そもそも形が無いからか保護される籠から拠点以外で出てもまったく支障がないらしく、従魔的な扱いもできるようだが。その場合もどんな姿を取って何をするかは、その都度主人が決めないとならない。


 エフォ(EFO)はそもそも自由度が高くて想像力が必要なゲームだ。

 これは、苦手なプレイヤーは魔法が発動しないレベルで苦手で。有志がそういった人向けに投稿している『使いやすい魔法イメージ動画』がエフォ(EFO)関係動画再生数の上位に来るくらいには個人差がある。

 そういうタイプの人には、名無し状態のネモは致命的に相性が悪いだろう。



 ただ……



「僕は嬉しいけどね。思いついた時に思いついた事が出来るってことじゃん?」

「うん、相棒はそう言うと思った」


 そう、たぶんキーナとはものすごく相性が良い。


 某四角いクラフト系ゲームなんかをやると、いつでもどこでもなんでもやりたがるから常にインベントリがギチギチになる相棒だ。

 それを思えば、万能ツールが籠ひとつで済むんだから破格の性能なんだろう。



 とりあえず、【死霊魔法】で使う場合の仕様はそんな感じだ。



 あとは、島にあった黒い石の事とか、『他の世界から来た』みたいな事を言っていたから少し訊いてみた。


 あの石は石ではなく、色々拒否した結果埋葬されなかったネモ達が寄り集まって、無記名の墓っぽい形をとっているだけらしい。

 だから素材じゃないし採掘もできない。

 でも石のフリをしているあの状態で他の世界から迷い込んだのは事実で、その時にその島の山を派手にぶち壊したんだとか。


「ちょっと楽しカッタ」

「おい」


 元の世界の事は全然覚えてないって言うからゲーム的には無関係なのかもしれない。

 ただ、そんな風に他の世界のモノが落ちている可能性はあるってことだ。


 無限に広がる世界だから、そういう迷子も気にせず受け入れて、飲み込んでしまうんだろう。

 たださすがに『滅び』を受け入れると滅びてしまうから、そこはちょうどよくやってきた人類に助けを求めたって事かもしれない。


「つまりフレーバー?」

「あるいは何かのフラグ」


 イベントとかな。

 この設定だと、コラボとかはやりやすそうだ。


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― 新着の感想 ―
確かにコラボ先の物が流れ着いたとかでコラボやりやすそうで草
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