ユ:異境同盟
※集合写真がややこしかったので集合スクショに修正
俺の占いが終わり、他の面々も一通り占いをしてもらって……ようやくラウラさんの個人クラン名が決まったらしい。
「ほ、『ホワイトコメット』にします……が、頑張ったら、白い翼になれるらしいので、目指す意味も込めて!」
ああ、天使なのに羽がグレーなのはそういうことか。
「というか、そこリア友っぽいのに一緒のクランにしないんだ?」
「そ、そこまでしてしまうと依存してしまいそうでっ……」
「一人で頑張ってみたいって言うんだから、見守って程よくお手伝いするのがお友達でしょう?」
まぁ、ちょうどいい距離感は人それぞれだよな。
無事に全員名前が決まったから、各自クランを立ち上げる準備をする。
パーティとは違って、ピリオの城にいるクラン管理NPCに書類を提出しないといけないらしい。
偉い人としては、徒党を組むなら管理しないといけないんだろう。
書類が必要なのは同盟も同じ。
クランも同盟も、必要な書式はアルネブさんが用意してくれていたから、全部一式揃えてまとめて一回で出してしまおうってわけだ。
「ゲームでも書類がいるのか……」
「雰囲気はあるし簡単だからいいけどねー」
エフォは頭の上に名前が浮かんでたりはしないから、当然クラン名も本人が名乗るまでわからない。
だから大手のクランは戦場でわかりやすいように、自前で紋章を作って装備の一部にお揃いで入れていたりする。
クラン結成の書類にも、紋章を記入する欄がある。これは必須じゃなくて、後から追加提出してもいいらしい。
俺達は特に必要ないから、空欄のままだ。
全員がクランの書類を書き終えたら、同盟結成の書類にそれぞれのクラン名を並べて書いていく。
「ん、同盟の名前もいるの?」
「ああ、それはきちんと考えておいたわ」
同盟の名前に気を取られて、クラン名を考えるのを忘れたらしい。
「『異境同盟』でいかがかしら?」
「ど、どうでしょう?」
普通のフィールドとは少し違う土地にいる面子の同盟。
シンプルでわかりやすい。
「うむ! 良い名だ!」
「いいんじゃない?」
「異議なーし」
「オッケー」
「いいですよ」
全会一致で可決。
書類に書き込まれた。
「じゃあ、書類出しに行きましょうか」
「全員で?」
「すごい目立つけど」
「大丈夫よー、目立たないようにできるから」
* * *
せっかくだから全員で記念スクショを撮って、念のためショッ○ー衣装に着替えてから何故かもう一枚撮って、書類を提出するため全員でピリオノートに転移した。
……視線は、まったく飛んでこない。
「これはすごいな!」
「おお、ド根性さんの声にも誰も振り返らない」
アルネブさんが使ったのは【星魔法】
聞いたことの無い魔法だが、どうもアルネブさんがいるフィールドでのみ覚えられる魔法らしい。
「ユーレイさんが考察してた『特殊マップはイベントマップ説』は私も同感だわ」
「つまり俺達は、何かイベントでマップにプレイヤーが来た時の案内NPC役を期待されてるって事?」
「ええ。このゲームは隠遁勢にも優しいって話だから、拒否権はあると思うけれど」
「だが特殊な地の恩恵を独占しているのならば! それくらいの代価は支払って然るべきだろう!」
雑談の中で軽く話した考察に賛成意見が。
あくまで仮説だから。
話半分くらいにしておいてほしい。
「【星魔法】はね……簡単に言えば『運命操作』と『メテオ』よ」
「うわーわかりやすいー」
「クソ強じゃん」
「消費MPのわりに効果はかなり強いわ。ただその代わり、【星魔法】を習得すると属性魔法が一切使えなくなるのよ」
「属性魔法って事は……火・水・氷・土・石・風・雷・草・木・光・闇が全部使えないって事?」
「そういう事よ。だからラウラだけじゃなく私も同盟を組みたかったのよね。【星魔法】の効かない相手が来たら詰んじゃうから」
「なるほど」
そんな極端な【星魔法】で、周囲の人との運命が噛み合わないようにしている、らしい。
「ランプ屋さんの時とかラウラさんがお手紙渡しに来た時とか、周りに全然注目されてなかったのはそう言う事だったんだね」
「特定条件の相手にだけ運命が噛み合うようにすれば、ああいう事ができるわ」
相棒の【トリック・オア・トリート】もそうだけど、エフォの魔法は想像力次第でかなり細かい設定ができるからな。
「あれ? でも待ち合わせの時にはそれやってなかったよね?」
「合流していない誰かに魔法をかける事はさすがにできないわ。いくらショッ◯ー服を着て来ていても、いきなり魔法をかけるのもどうかと思うし」
「まぁそーね」
そんな話をしながら歩いていると、ピリオの城に着いた。
城のNPCはこっちを認識して振り返って……怪しいショッ○ー集団に露骨に警戒してくる。
「何か御用ですか?」
「クランと同盟の結成手続きに来ました」
「……手続きは入ってすぐの窓口になります」
「ありがとう」
ただの手続きに問題が起こるわけもなく、無事に各自のクランと同盟の結成は受理された。
「問題は起こすなよーってやたら強調されたー」
「怪しい見た目は怪しまれると言う事だ!」
「出来る事とやって良い事は別ってやつだよ」
何はともあれ、『異境同盟』はこれで成立だ。
「じゃあ、今後ともよろしくね」
「よ、よろしくお願いしみゃふ……」
「よろしくー」
「よろしくどうぞ」
「よろしく頼む!」
「うん、よろしくね」
「……よろしくお願いします」
表に出たくない特殊マップ入植者達の、深入りしすぎない協力体制がこうして始まった。
……なお、俺達の待ち合わせを目撃したスレがお祭り騒ぎで、ショッ○ー衣装を作った戦隊クランさんに飛び火していたらしく。
夾竹桃さんがショッ○ー装備の集合スクショを投下して沈静化を図ると立候補して任せる事になったのだった。