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ユ:鎧の体とジャックのお願い


「マスター! 旦那サマー! デューの鎧出来たヨー!」

「おー! じゃあ早速……」


 ──ベアアアー!!


「……まずは防衛からだな」

「ウィッス」

「ハァーイ」



 * * *



 ログイン早々、久しぶりの防衛。


 イベントで思いっ切り資産を減らしたおかげか、待ち構えていたような防衛は、いつものワンパンベアが群で来たのを片付けるだけで済んでいた。


「群を片せるようになったんだから、僕らも強くなったねぇ」

「まぁ確かに」


 そう言われてみれば、少し前に山に行った時は熊3頭でかなり警戒しながら戦ってたな。


 イベントで討伐クエストやレイドボスを相手にして、俺達はそれなりに経験値が入ってレベルが上がっていた。

 今回の防衛を終えた所で、キーナのレベルも20に上がり、ネクロマンスクラフターから上位職のハイネクロマンスクラフターに転職。

 精神と魔力の伸び幅が増えて、MPも大きくHPが少し上がるようになった。あとは全生産系スキルと死霊魔法の取得経験値も上がっているらしい。

 ……つまり、強靭と俊敏は何も上がらない。典型的な紙装甲の魔法で戦うタイプなんだよなぁ。

 まぁそのへんは追々考える。



 襲撃を片付けた俺達は、さっそくジャックに袖を引かれながら鍛冶場に向かう。


「ジャーン!!」


 台の上に並べられていたのは、青紫の光沢を持つ銀灰色の全身鎧と二つの大盾。

 装飾も質素に感じない程度に入っているが、素人目にも質を重視した重厚な作りで出来が良いのがわかる。

 ジャックは相棒から刻印の本も借りていたから、内側に刻印も刻んであるんだろう。


「おおー! すごーい!」

「凄いな、本格的な鎧だ」

「兄上! ありがとうございマス!!」


 一緒に連れてきたデューも感極まったように喜びの声を……待て、今『兄上』って言った? いつの間にか義理の兄弟になってる??


「じゃ、早速着てみよっか」

「ハッ!」


 相棒が籠の中の金属片みたいなデューの本体を、鎧の胴体の中に入れた。何かシステムメッセージが出ているらしく、手元で操作をしている。


 すると、人の体と同じ配置で並べていた全身鎧は、胴の部分を中心にカタカタと震え、両腕、両手、両腿、両足と順に中身があるみたいに動き始める。

 最後に兜がガチリと首元に嵌まれば、生きてる人間と変わらない動きをするようになっていた。


「デュー、どんな感じ?」

「オオ……体が有るというのはこのような心地なのですナ! とても良い具合でございマスゾ。ありがとうございマス」



デュー Lv3

ファントムメイル



 あ、リビングアーマーじゃないんだな。オバケ面の方が強調されてる感じか。

 デューは台からゆっくりと起き上がって床に降りて立ち上がり……


「……思ったよりデカいな?」

「わぁお」


 ジャックも身長ある方だけど、デューはさらにデカい。

 身長2メートル超えてないか?

 ガッシリした体格の鎧だから横幅もデカい。


「オレとか旦那サマも庇ってもらうカラ、それならコレくらい欲しいかなッテ!」

「あー、それは確かに……」


 俺も180超えてるからな……デューくらいあれば後ろに隠れやすくはあるか。


「お任せアレ! 必ずや皆様を守り抜いて見せましょうゾ!!」


 なんとも頼もしい住人が増えたな。


 それから、精神を上げる事で耐久が増える鎧の仕様をデューに説明し、とりあえずジャックの家に部屋を増築してベッドを増やしたり、食べ物を食べられるのかどうかを試したりした。

 ……どう見ても鎧の中は空っぽなんだけどな。ジャックと同じで素材に関わらず体が出来ると食事が必要になるらしい。

 まぁファンタジーだしな。食事が完全に不要で死亡引退もしないNPCはちょっと強キャラすぎるんだろう。


 デューの生活基盤を整えて、俺達が不在の間は畑の世話をジャック、ニワトリと羊の世話をデューに頼む。

 ジャックは俺達不在の間に一緒に出歩ける相手が出来たのがよほど嬉しいのか、デューに肩車してもらいながらはしゃいでいる。……兄貴の方が肩車してもらう側でいいのか? まぁ楽しそうだからいいか。


 一段落した頃には、空は夕暮れになり始めている。


「そろそろ落ちるか」

「そだね」

「アッ! 待って待ッテ!」


 俺達が家に戻ろうとすると、ジャックが慌てて飛んできた。


「どしたの?」

「えっとエット……あのネ?」


 なんとなくモジモジしていたジャックは、あざとい上目使いで俺達を見た。


「この前、坑道で会ったヒトがネ……デューと一緒に闘技場に遊びに来いよって誘ってくれたんダ。ダカラ……行きたいなッテ」

「マジで!?」


 マジかー

 ジャックの予想外のお願いに相棒と思わず顔を見合わせた。

 まさかジャック、坑道に来てるプレイヤーと友達になったのか?  

俺達より他プレイヤーと交流してるな?


「NPCってプレイヤーと一緒なら転移オーブ使えるんだっけ?」

「そうだよ」


 だから俺達が連れて行くならジャックもデューもピリオノートに行くことはできる。


「……ジャック、街の人にビックリされないかな?」

「ア、それもお城の兵士サンに話しておいてくれるッテ」

「えーっ!」


 へぇ……城に出入り出来るのか。クエストの結果なのか勲章持ちなのか……まぁどっちにしても、詐欺的な理由で誘ったわけじゃ無さそうか?


 俺の心配は、しかし次のジャックの返答で吹き飛んだ。


「なんていう人?」

「ガルガンチュア!」


 そっかー……βの戦闘狂かぁー……


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― 新着の感想 ―
ヒロインがジャックではなくて、ジャックはショタ枠な気が(ㆁωㆁ*)
迂闊な発言したガル的な戦闘狂さんわかってやってるのかな? 下手するとお偉いさんに苦情が行きかねない案件よ
この小説のヒロインはジャック 異論は認める
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