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キ︰初転職、そして開拓の続き


 転職しました。

 今日から僕はネクロマンスクラフターです。


 ……なんて言ってはみたものの、まだ戦闘してなくてレベル1のままだから、ステータス数値的には実感が無いんだけど。


 相棒が言うには、エフォ(EFO)だと生産系がレベル1のまま転職するのは珍しくもなんともないんだとか。

 生産系の職業が出る条件は生産スキルであって、キャラクター本体のレベルは関係ない。だからゲーム開始からずっと生産してたら割と簡単に生産系職業に転職はできるんだって。


 そして今回僕の職業についてる『クラフター』。

 これは良く言えばオールマイティ、悪く言えば器用貧乏な職業らしい。


 例えば鍛冶スキルに特化すれば『ブラックスミス』、裁縫系に特化すれば『テーラー』って感じに。専門に特化するのが普通の生産職で、専攻しているスキルの取得経験値が2倍、関連スキルの取得経験値が1.5倍になる。


 でも『クラフター』は、生産全体を広く浅く攻める感じで、生産系全般スキルの取得経験値が1.2倍になる。特化職と比べるとかなり低い。

 その代わりなのか、転職した時点でほとんどの生産系スキルを取得できる。

 そういう職業だった。


 だから僕のスキルは、今ちょっとすごい事になってる。


「【建築2】【木工3】【裁縫2】【刻印2】【鍛冶】【石工】【陶芸】【彫刻】【製図】【料理】【醸造】【調合】【製本】【武器製作】【防具製作】【アクセサリー製作】【魔導具製作】【楽器製作】……」

「多い多い多い」


 あまりの多さに相棒が遠い目をした。


「そんな使う?」

「わかんないけど、なんでもやりたいから嬉しい」

「そっかー」


 だってさ、リアルでクラフト系の趣味をしようと思うと、色々ハードルが高いじゃん。

 作業場の問題とか、騒音とか、材料と作った物どこに置くのとか。

 気ままに作ってみたいだけで、フリマサイトとかで売る気も無いしそもそも売れる気もしないし……ってなると、手を出しにくいんだよ。


 でもゲームなら、その辺なんにも気にしなくていいじゃん?

 最高かよ。


 そんな感じの事を身振り手振り含めて伝えると、相棒は納得したような生暖かい笑みを浮かべた。


「うん、相棒はそうだよな。知ってた」

「ご理解いただけたようでなにより」



 * * *



 とりあえず、ワールドクエストショックからのパレード突撃大作戦は、これでひと段落したと思う。


 なのでとりあえず、開拓に戻ろう。


「じゃあ、とりあえず拠点の外壁作ろうか。なんか人によってはそろそろ襲撃が始まるらしいから」

「え、マジで?」


 相棒が言う襲撃っていうのはエフォ(EFO)におけるタワーディフェンス要素の一つ。

 頻繁に起こる小規模な拠点襲撃イベントの事。


 開拓プレイヤーが作っている拠点には、ちょいちょいモンスターが群れを成して襲撃してくるんだって。

 プレイヤーはそれを見越して、防壁なり罠なり戦力なりを整えないといけない。苦手だったら街で傭兵を雇う事もできる。

 襲撃が来る時間帯や、拠点の持ち主が留守の間に襲撃が来るかどうかは、プレイヤー側で設定ができる。でも、襲撃を無しにはできない。


 戦闘プレイヤー向けには、最初の街『ピリオノート』にそこそこの規模のレイド戦襲撃が定期的に発生する。

 これは大体スケジュールが決まってて、ゲーム内時間で一時間くらい前に砦から通達されて準備が出来るらしい。

 他にも、開拓主が許可すれば誰かの拠点の防衛に参加したりもできるんだって。傭兵名乗ってる戦闘プレイヤーもいるらしいよ。


「結局、僕らのこの森って敵の強さどう? ヤバそう?」

「わからん。まだウサギしか見てない」


 わからんものはしょうがない。


 とりあえず僕は取り急ぎ仮拠点と畑予定の空き地だけ、簡単に木の壁で囲む事にした。

 本当は拠点範囲全部やりたいけど、いつ何がくるかわからないから安全優先で。


「俺も建築取りたいから建材と工具使っていい?」

「もちろん。好きなだけ使って」


 僕が【建築】でせっせと壁を増設する間、相棒は【土魔法】で地面に穴を掘り柱を二本立てて壁を作っていた。


「……よし、【建築】取得した。相棒はそのまま壁作ってて。俺は弓で撃つ用の足場作るから」

「オッケー」


 僕がレベル1のままな上に生産系職業になったから、もしも今すぐに襲撃が来たら迎撃はほとんど相棒任せになる。

 そうなった場合に備えて、弓が有利に戦える場を整えないとね。


「【伐採】!」


 壁を建てるのに邪魔な木を【伐採】スキルで撤去。

 残った切り株にもう一度【伐採】して、根っこも撤去。

 太い木が斧のスイング一発でズドーンと倒れるのはすごく気持ちいい。


「楽しそーね」

「めっちゃ楽しい。相棒も取りなよ」

「壁終わったら取るわ」


 僕も壁が終わったら、ここの木を製材してみなきゃ。

 あー、でもその前に畑かなぁ?

 開拓ゲーの出だしは楽しいねぇ!



 必要な部分だけ伐採して、ある程度の部分を囲み終えた。

 小動物のモンスターが登ってきたら困るから、壁の上部には鼠返しみたいなものをつけてある。

 広さはちょっとした庭付き一戸建てが建てられるくらいの敷地。もう本当に最低限って感じ。


 扉は一ヵ所だけね。どうしてもそこから脆くなるから。

 その代わり、狭い囲いを増やして扉を二重にした。

 出入りする時、隙間から何かがシュッと入り込むのをこれで防ぐ。


 四隅には内側に足場が組んであって、階段で上がれば壁の外が見えるようになっている。

 敵が来たら、僕らはあそこから攻撃を撃つ感じ。


「次は畑を作りたいと思います」

「いいんじゃない? 俺も【料理】スキル使うのに野菜欲しいし。それなら相棒、種買ってきなよ。俺【土魔法】で耕しとくから」

「いいけど……種の種類は僕のお任せでいいの? 相棒も一緒に行かなくて大丈夫?」

「俺はしばらく街には行かない。顔が割れてたら嫌だから」

「あー」


 そっか、相棒は変装してない状態で葉っぱの塊の僕を抱えたから、その時に関係者だってバレたかもしれないんだ。


「了解。んじゃ買い物行ってくるね。なんか適当に食料も買おうか?」

「そーね。調理できそうなやつ買ってきて」

「はーい、行ってきまーす」

「気を付けてね」


 普通の森なら、肉を落としそうな動物を狩るのも有りなんだけど。この森はウサギの毛皮の説明からしても、肉が出た所で普通に食べられるかどうかわからないんだよね。

 畑なんてそうすぐには育たないし。初期配布食料じゃちょっと心許ないから、買い足しておこう。



 街に転移して、NPCの農業用品の店へ向かう。

 露店広場で種の類はあんまり見かけなかった気がするんだ。

 だからとりあえず無難な大手で種類を揃えて、その後軽く露店を流し見しよう。


 ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、キャベツ、トマト、カボチャの種を購入。

 ……まだまだたくさん種類はあったけどね。最初から全種類育てるのはちょっと無理。とりあえずこのラインナップなら色々作れると思う。

 最初からこんなに多種類開放されてるの珍しいなと思ったけど、そういえばエフォ(EFO)はここが唯一の公式の街なんだった。野生種を作物化するのなんて時間かかる事、オーソドックスな野菜でやってられないよね。

 そういう意味では、ランダム生成で生まれた見た事も無い植物が、いつか作物化されて露店に並ぶのかもしれない。うん、楽しみだね。


 次は食料品店で、野菜とお肉を少しと小麦粉とパン、それから調味料を買った。

【アイテムボックス】のインベントリのおかげで重くないのは嬉しいね。塩とか小麦粉とか重いから。


 あー、そうだ水。

 水どうしようかな……相棒は【水魔法】持ってないんだっけ。

 ……とりあえず水樽一つ買おう。それで中身が無くなったら、僕が足そう。

 相棒も自分で【水魔法】取りそうな気もするし。


 一通り買ったら、露店広場へ。

 植物関係を売ってる露店に絞って見てまわる。


「あ、リンゴだ」


 リンゴの木の苗を売ってる!

 いいなぁ、リンゴ好きだから自分の家の庭に木があると嬉しいなぁ。

 これは買っちゃお。


 それから薬草の種も見つけて少し購入。

 自分で増やして薬の素材になるといいな。


 最後に見かけた露店は、ガラクタが並んでる中にひとつだけ豆の袋があって目を引いた。


「ひよこ豆だ」

「うっす、ひよこ豆っす」


 わー、形が可愛いよねひよこ豆。

 相棒がスープにするの好きだった気がする。買っちゃおうか。豆だから、植えたら増えるだろうし。


「これください」

「まいど!」


 ふへへ、いっぱい買ったぜ。買い物欲が満たされるぜ。

 僕が葉っぱ怪人だって気付かれた感じも無いし、万事オッケーだね!


 じゃあ、相棒の所へ帰りますかー。



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